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誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
or truth

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246/307

若草利得・前

名鑑・二十九


五指登録・上の伍・治癒


使用者の傷を癒す幻術が登録されている。

基本の治癒の式に改良が加えられている。

五指登録に登録出来るのは幻術を発動するという現象であり、発動後の幻術を直接操作出来ない。

この幻術では発動時に使用者の外傷を自動検知し、傷の程度に合わせた強度の治癒を施す。

演算装置が耐えられる程度の負荷ならば、同時に複数の部位を治療する事も可能である。

開発者、使用者は秋野イズ。

「バカか?女だからってアタシに勝てると思ってたのか?やっぱバカだなオマエ」


「ずっ、ずみまぜんでじだ。ゆるじで、ぐ、ぐだざい、、、」


「そォだな、、、オマエが考える最上級の謝罪の言葉で謝れば許してやっても良いかもなァ」


男子高校生はボロボロで、地面に這いつくばりながら一人の少女を見上げている。

若草利得、中学一年生だ。


「ほ、本当に、申し訳ございませんでした。私が、私が全て悪かったです。ど、どうか許してく」


「不合格」


「がぁっ!?」


土下座をしていた高校生の左脇腹に蹴りを突き刺す。

痛みのあまり高校生は痙攣さえしている。


「命でお詫び致します、だろ?例え嘘でも出てこねぇのかオマエ。謝る気ねェだろ」


地面に転がっている男子高校生の腹を蹴る。

おまけで蹴っただけだ。


「ま、アタシは女神のよォに寛大だからな、命は取らないでやるよ。死なない程度にいたぶられたくなけりゃさっさと消えな」


「は、はいっ、あ、あ、あり、ありがとう、ございます!」


脚を引きずるように去る男子高校生。

俗に言う不良だが、上下関係を間違えたままでいる程命知らずでは無かった。


「ちッ。つい時間かけちまった」


ここは人気の少ない路地。

とは言え人が全くいない訳では無い。

そして、見られたい物でも無い。


「仲間を呼ぶかもなァ。さっさと帰った方が楽だな」


不良が絡んできたのは金品目当てか、身体目当てか、どちらでも関係無いが余計な時間には違いなかった。

あの不良が単独で絡んできたので楽だったが、おかげで必要以上にいたぶってしまった。


「ママー、きょうってオムライスなんでしょー?」


「そうよー。それだけは覚えてるのねー」


「へへへー」


五歳くらいの男の子とその母親が歩いてきた。

夕方という事を踏まえると、保育所か幼稚園に迎えに行ってきた所なのかもしれない。


「、、、あと少し長く遊んでりゃ見せちまってたかもな」




「キャハハハハッ!雑魚狩りはやっぱ楽しィなァ!どうした?触ってみろよ」


利得が自身の特殊な能力を発見したのは十八歳の時だ。

これまでも、適当に振り抜いた拳がいつの間にかヒットする事があったが、それは無意識に空間打撃を発動していたかららしい。

今は能力を使いこなせる。

使い方は不良グループの殲滅。

ちょうど良いサンドバッグ集団だ。


「お、お前、リーダーが来たら、どうなるか分かってんだろうな!お前なんか、リーダーぐがっ!?」


「リーダーはオマエら下っ端を置いて逃げ出すようなヤツみてェだな?そんなヤツがアタシより強いってのか?」


廃倉庫の玉座に脚を組んで座る。

まとめられ、積み上がった鉄パイプだ。


「おい、よくもやってくれたな」


「り、りー、だー」


「お、それなりに強そうなヤツが出てきたじゃねェか。強そうなだけだけどなァ」


顔に傷のある大きな身体の男。

筋肉量は利得の何倍もあるだろう。


「ぶっ潰す」




「雑魚のリーダーはやっぱ雑魚だったな。見掛け倒しじゃねェかよ」


利得は近辺の不良グループを全滅させ、暇になってしまった。


「手応えがねェ。裏の大会でも出てみるか?、、、いや、距離が近いと不利だし、相手も強すぎる。一方的にぶちのめすどころか一方的にぶちのめされちまう」


利得は一方的に攻撃するのが好きなのであって、強い相手と戦いたい訳では無い。

贅沢を言うと、強い相手が手も足も出ず利得に負けるのが一番の理想ではあるのだが。


「ま、適当な裏の仕事でも見つけてみっか」




「アイツか、研究機関を荒らしまくってるって噂のヤツは」


半暗殺の仕事は楽で稼げる。

殺すと都合が悪いが、痛みを与えたい人物というのは意外と多いらしい。

汚れた権力者はこうやって互いに潰し合っているのだろう。


「あの塀の前を通った瞬間」


予め距離を念入りに測っておいた。

外す事は無い。

木製のハンマーを振りかぶる。


「あら、もしかして貴方も幻視者ですの?奇遇ですわね」


「な」


利得のすぐ左にターゲットが立っていた。

全く気付かなかった。

さっきまであの塀の手前にいたのに。

その塀は空振った空間打撃によって一部が欠けていた。


「オマエ、どうやって!?」


急いでハンマーを振りかぶるが、左側に立たれていたためどうしても攻撃が遅くなってしまう。

軽く身を捻っただけで回避された。


「いきなり乱暴じゃありませんの?わたくしはお話をしたいだけですのに」


「アタシのターゲットになるようなヤツがお話したいだけなんてありえねェ!」


振り回したハンマーが当たる事は無い。

空間打撃もだ。


「貴方、強くなる事に興味はありませんこと?わたくしほどの強さに届くかもしれませんわよ?」


確かにこの女?

は強い。

だが、怪しすぎる。


「アタシは一方的にいじめるのが好きなんだよ。オマエにいじめられるのは嫌いだ」


「わたくしは貴方を一切いじめたりなんていたしませんよ。ただ共に強くなりたいと思っただけですわ」


「そんなの信じられ」


「では行こうか。きっと強くなれる」


突然雰囲気が変わった。

そして拒否する暇も無く抱き抱えられてしまう。


「ちょッ!?おいッ!?離せよッ!」


夕焼けに染まる街を、利得を抱いたまま飛び跳ねる。

建物の上を渡り、スイスイと風を切る。

こうして、利得は流されるようについて行ってしまった。

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