石見海乃・後
名鑑・二十八
五指登録・上の肆・光球
秋野イズのメインウェポンの一つ。
上の肆に登録されているのは自動で照準を合わせ、銃弾を発射する光球を生み出す幻術。
光球は使用者の頭上に発生する。
直径は約一メートルで、白みがかった黄色の光を放っている。
発射する銃弾も光球と同じく電気で形成されており、同じような色をしている。
銃弾な触れると電流が流れ、身体の一時的な麻痺、場合によっては意識の喪失をもたらす。
光球を中心に半径三十メートル以内にある生体反応に対し自動で光弾を発射する。
生体反応の有無は膨大な量のデータから判定されるため正確性が高い。
このデータは幻想科学の研究機関によって集められた物の一部である。
五指登録に登録されているのは光球が無ければ生み出し、あれば消す幻術、という現象であり、幻術そのものを生み出し、操作する事は出来ない。
開発者、使用者は秋野イズ。
「おおっ!読めるのですな!なんと貴重な!」
「えーこれ読めないのー?」
大学で行う研究、その下見。
簡単なテストと言われ見せられたのが不思議な式の羅列だった。
確かに奇妙な文字列だが、何故か文字の意味が自然に理解出来る。
「どのような文字に見えましたか!?」
教授は読めないようだ。
「えっとねー」
ガタガタガタガタガタガタ。
「みたいな感じかな」
「えと?ちょっとよく分からなかったですな、、、」
「海乃、分かる言葉で言ってくれないか」
睦規すらこの反応。
海乃は訝しむ。
「え?ちゃんと言ったでしょ?」
「いやぁ、ちょっと聞き」
ジャジャジャジャジャジャ。
「けど良いや」
「そうだね」
「どんな幻術を作る?まず転移の式?強化の式?それとも、ワ、タ、シ?」
伊寄は自分の頬を人差し指でつつき、ウィンクをする。
「転移の式だな」
「わーおワタシの命を削って繰り出したボケをスルーされるとはねぇ」
「転移の式は周りから見て変化が分かりやすい。基本の式の中でも汎用性が高いしな」
「なるほどねじゃあ転移の式にしようか」
コンピュータを使い、幻術を作っていく。
幻術の式は常人の約一、五倍の知能が無ければ作れない。
才能が足りない者は何故か式に用いる文字や構文を読めないからだ。
ただ、才能がある者しか研究に携われないのかと言うとそうでも無い。
式以外の部分で作らなければならない物もある。
式その物を使用する事よりも、式陣として固定し、製品に組み込む事の方が多いからだ。
つまり、才能が足りなかった伊寄と睦規でも、海乃と共に歩む事が出来る。
「あーまたフリーズしちゃったよー今日三回目だー」
「冷却装置見てくるよ」
伊寄が立ち上がり奥に消えていった。
「俺は飲み物を持ってくる。希望はあるか?」
「じゃー豆乳」
睦規も部屋から退出する。
部屋には海乃一人だ。
「ふぅ、やっぱり幻術って疲れるね。今の内に休憩しないと、、、」
聞いた事の無い音楽が脳内で再生される。
ロックでもクラシックでも雅楽でも、何でもない。
新しいメロディー。
疲れているのに脳が勝手に作曲し始めたのか。
自身で疲れを癒そうとしているのか。
「ウミノ、ウミノ」
呼ぶ声が聞こえる。
まだ曲の途中なのに。
「海乃、起きろ」
もう少し、もう少しだけ。
もうす。
、、、急に音楽が止まった。
「フリーズしちゃったのかな、、、」
半分眠っていて半分起きた状態で呟く。
「どうした、海乃。流石に疲れが溜まっていたか?」
「うーん、疲れてたのはその通りなんだけど聞いた事が無い音楽が聞こえてね不思議な感じだったんだー」
海乃は髪を撫でながら言う。
「それでね、一気にアイデアが降りてきたんだよね。やってみても良い?」
研究か音楽か。
どちらかだと思っていたが、そうでないとしたら?
音楽と関わる事はもう無いと思っていたが、海乃の潜在的な意識には音楽が根付いているようだ。
音楽を活かしたくなった。
「もちろん、海乃の考えなら」
「とことん手伝ってあげようじゃーあないの」




