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最初の邪心   作者: 相澤 沁
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第八話 「 作戦 」

鬼丸討伐作戦はこうだ。

大名行列を出し、その先頭には呉之進を置く。

同時に別ルートで別働隊「甲隊」を出す。

更に、弓矢隊「乙隊」を別ルートで出す。

行列の人員は、やや多めにし、鬼丸の狩りに時間をかけさせる。

その間に、甲隊が鬼丸村から一人だけ子供を拉致して、子供に爆薬を仕掛け、行列に届け、鬼丸村の近くに戻り、潜む。

爆薬を仕掛けた子供を、鬼丸に助けさせる。

乙隊が子供に仕込んだ爆薬に火矢を射て引火させ、鬼丸を行列や子供もろとも爆死させる。

爆発を合図に、甲隊が鬼丸村を襲い、全滅させる。

甲隊と乙隊で合流し、鬼丸村を焼き払う。


作戦決行当日、呉之進は有頂天だった。

町では、呉之進の幼馴染や元ガキ大将までが平伏して行列を見送っている。


「呉作の野郎が侍になったってぇのは本当だったんかぃ・・・」

「全くなぁ、世も末だぃ。」


町人は口々に小声で呉之進の悪評を吐いた。

そんな悪口も呉之進の耳には入らなかった。

そして、行列は町を出て、山へと向かって行った。


山では、鬼丸が襲撃の為に潜んで行列を待ち構えている。


「来た。 人数は多めだが・・・大丈夫か。」


いつも通り、後方から物音をさせずに襲い掛かる。

後方に注意を向けさせて前方を襲う。

行列が混乱してきたら、一気に片付ける。

全てがいつも通りに進む筈だった。

だが、今回は違った。

行列の向こうから見覚えのある子供が出てきた。


「佐助!?」


甲隊が鬼丸村から拉致してきた子供だ。

体中に爆薬が縄でくくり付けられていて、離れた所から弓矢隊の火矢が狙っている。

佐助は泣きながら鬼丸に駆け寄る。

火矢が佐助に向かって放たれた。

鬼丸は佐助をかばって火矢を払い落とした。

だが、落とし損ねた火矢が佐助に当たり、その火は爆薬に引火してしまった。


轟音を立てて大きな爆発が起こり、佐助も、鬼丸も、行列も、全員が巻き込まれてしまった。

有頂天だった呉之進は襲撃の最初で既に首を落とされていたが。

この爆発音を合図に、鬼丸村には甲隊が襲い掛かった。

ほどなくして、乙隊も到着し、火矢を放ち、鬼丸村を焼き払った。


この日を境に、大名行列が消える事は無くなった。

そして、この作戦の成功の知らせは、たちまち民衆に広まり、人々は口々に噂した。


「山の死神ってのは人間だったんだってな!」

「たった一人なのに大名行列のお侍も山伏も歯が立たなかったんだってよ!」

「そんなお人がいたらよぉ、鬼や天狗より怖ぇじゃねぇか!。」

「でもよぉ、大名行列が消えたりしてる内はいくさも無くて平和だったじゃねぇか!」

「全くだ! これでまたいくさの世に逆戻りかねぇ・・・」


民衆の不安は的中し、相次ぐいくさと、敗残兵による野盗に民衆は悩まされた。

民衆は、第二の死神を願ったが、二度とそれが現れる事は無かった。



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