表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
違法魔女の夜間飛行 〜みんな魔法使いなのに、今飛んでるのはわたしだけ〜  作者:
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/13

箒で空を飛ぶ馬鹿 ~ちょっぴり先の話~

 パトロール中に、地上を爆走する一台の流れ星を見つけた。暴走族よろしくぶんぶんぶんぶん嘶いている。お一人様だけど。


「おやぁ、アレは目測……ふむ、百四十ってところだな」


 黄色い街灯に照らされる幹線道路を、ぶっ飛ばす赤いバイク。


「モナコモンテカルロじゃないんだから」


 長い髪を指でかき背中側に追いやる。姿勢を低く、箒の先端を沈ませる。


 蒼のマントがバタつき、柄を握る革手袋がきゅっと音を鳴らす。わたしもわたしで箒で空をぶっ飛ばし、進路上に先回りして高度を下げた。


 車が来ないのを確認して、隣の車線で待ち構える。ぶぅぅんという甲高い音が、徐々に、徐々に近づいてくる。頭の中でレースフラッグをイメージして、3,2,1,GO! と急加速。


「ふへへ、ちょっと驚かせてあげよっと」


 左手を掲げて、光の魔法で赤いランプを作り出す。最初は光量控えめにして……よし出来た。


 そんなことをしていると気づいていないのか、人がいるはずがないと現実逃避しているのか、バイクは真横を通過していく。


 一気に光量を上げる。赤いランプをくるくる回す。「うーうー」とサイレンの声真似をしてみる。これは聞こえてるはずもないけど、わーわーやりながら、バイクのお尻を追いかけた。


「そこのバイク止まりなさーい、逮捕しちゃうぞ☆」


 するとそのライダーさんはバックミラーをちらっと確認して、減速するどころかむしろ加速を始めた。ぎゅるるるとエンジンが猛烈に吹け上がり、無人の幹線道路が爆音に包まれた。


 あやつめ逃げるつもりか。そうはいかのなんとやら。


 身体を低く、前傾姿勢になって、ターボエンジンでもついてるみたいにこちらも猛加速。体感三百キロでゴーストレート。負けじとライダーさんも加速を続ける。


 しかし空を飛ぶこちらに地の利があったようで、やがて追いついて並走する形になった。


 口元に手を当てて


「こんばんはー、お急ぎですかー?」


 風圧に負けじと呼びかけた。


 ライダーさんはちらっと様子をうかがって、すぐに視線を戻して、けれども身体を直立させたかと思うと、またこっちを見た。うわ完璧な二度見。


 ヘルメットの中で、両目がまんまるに見開かれている。


 魔法で止めようか、と思ったら、遠くに見える信号が赤に変わって、ライダーさんは急ブレーキをかけた。きぃーと鳴らして、少し後輪を滑らせながら停止線をややオーバーしてバイクは止まった。


 ライダーさん、その真面目そうなお兄さんは、わたしを見て目をパチパチさせていた。


「こらー、いくら夜中だからってあんなに飛ばしてたら危ないよ」


 お兄さんはなぜかヘルメットを脱いだ。唖然とした表情のまま、口が動く。


 そして


「……夢か」


 とつぶやいた。


「残念、夢じゃなくて現実ですからー。かわいい魔女っ子じゃなくて、本物のおまわりさんだったら免許証無くなってたよ? てかさ、それどころか命だって危ないんだから」


 お説教してあげてるのに、お兄さんはぼーっとしている。信号が青になっても、発進しようとしない。


「え……あ、マジ? 俺に会いに来てくれた感じ?」

「は?」


 なにを言ってるんだろうかと思う。お兄さんは頭を掻きながら、こんなことを言い出す。


「連絡先、交換しない? あー、いいやいいや、それは違うもんな。ねえ、名前は? 魔女ってほんと? 首輪は? どこ住み? 俺さ、いっつもここら辺走ってんだけどさ、ぶっ飛ばしてたら、また来てくれる?」


 にっこりと、笑ってあげた。スマホを取り出して、電話をかける……真似をする。


「──あ、警察ですか、実は暴走バイクが一台。はい、はいそうです、よろしくお願いします」


 スマホをしまう。


 睨みをきかせて、お兄さんに言ってあげる。


「早く逃げなよ、次同じことしてたら、警告無しで通報するからね」

「ま、魔女も、スマホ使うんだね、公権力も」

「そういうこと。じゃ、安全運転でね、ばいばーい」


 手を振る代わりに、赤色灯をくるくる回して空に上った。


 お兄さんは口を開けて見送って


「絶対来てくれよなー! 天使に会えるなら警察なんてどうでもいいぜー!」


 と手を振っていた。


「……懲りない人」


 本当に通報しようかなと思った。



 箒で空に上がり、火照った息を吐いた。


「ま、本当はお巡りさんとは仲良くないんだけどね」


 公権力は敵。わたしを見つけたら、暴走バイクなんて無視して追いかけてくる。


 捕まったら、投獄? 監禁? 死刑?


 わかんないけど、まあいいや。自由に飛べるのは、わたしの特権だもんね。


「ようし、もういっちょ正義しちゃいますか!」


 箒を沈めると、青い粒子が輝いた。


「見たかー、真藤はるかは魔女をやってるぞー!」


 今のわたし、夢見てたわたし。

 はじまりはいつだったっけ。

 確か、あの日だったか。


 椅子に縛られてビデオ見せられた視聴覚室。

 苦くてマズイ、思想教育用の薬の味。


 そう、あれはまだわたしの力が弱かった頃――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ