第二十話《モンスター娘の爪や牙は誰かを傷付ける為にあるんじゃない!》
スライム卵の中のエメラルドグリーン空間にて、俺は一旦変身を解除する。ゴポゴポと大きな気泡が発生して、俺は人間の姿(美少女)に戻った。
「女王」
「大丈夫、貴様に任せるぞ」
「それじゃ、始めます!」
まずは下半身をスキュラに変えていく。ビリビリする感覚を伴い、下腹部の辺りから触手を生やす。
「んっ、はぅ」
まるでドレスのような、鮮やかな藍色のスカートが完成する。触手と触手の間に張った膜が凄いセクシー! ちなみにスカートの中の、元々の脚はケンタウロスになってるよ!
次は、腰から人魚のヒレを生やそう!
「ふぁ、うぁ、くすぐったい!」
脇腹がむずむずする! ともあれ、ピチピチとヒレが出来上がる!
アラクネの糸も必要なので、そうだ、ラミアの尻尾を作ってから、その先に蜘蛛の腹を付けてみよう! そして背中からは蜘蛛の脚を生やす!
「くぅ、こっちも、くすぐったいよぉ」
背中に指を這わせたようなむずかゆさと共に、ラミアとアラクネが出来た!
更に、蜘蛛の脚の先をハーピーの羽に変える!
「ぴよっ」
お次は上半身だ。丁度胸が隠れるくらいの長さで、肩から青々とした葉っぱを生やしローブを作る。肩と鎖骨は見えるようにね! そして最後は、頭のてっぺんに可愛いピンク色の花を咲かせる! 白銀の髪を伸ばして、ツタで縛ってツインテールにすれば!
バシュンとスライム卵が弾けて、中から俺が姿を現す!
「変身、完了しましたっ! さぁハオン星人さん! 覚悟してくださいねー!」
魔法少女みたいな最高可愛いキメポーズで、俺は宣言したのであった!
◆ ◆
「何が覚悟よ……! この『方庭』から出ると言うのなら、地球人くんもアタシの敵よ! 『百獣の女王』共々、この『方庭』に閉じ込めてやるんだから!」
ハオン星人が、再び剣を向ける。でも大丈夫!
「え、ちょ、何で!?」
向けた瞬間、剣はハオン星人の手を離れ天井に突き刺さる。
「ふぇっ!? 何コレ、手がヌルヌルしてるんだけど!?」
「スライムと人魚とスキュラの、特製ミックス粘液です! 剣は蜘蛛の糸で引っ張りました!」
尻尾を振りながら腰に手を当て、胸を張る俺! お、おっぱいが凄い!
「でかしたぞ! さぁハオン星人よ、どうしてくれようか……!」
「くっ、武器が無くたって、アタシは戦えるわよ!」
「……はぁ」
挑発する女王と体術の構えを取るハオン星人に、俺は溜め息をつく。
「女王、それにハオン星人さん。良く聞いて下さいね」
カツンカツンと蹄の音を響かせ、俺はハオン星人に近づく。そして、大声で言い切る!
「モンスター娘の爪や牙は! 誰かを傷付ける為にあるんじゃない! 俺みたいな奴の! 心を鷲掴みにする為にあるんです!」
漫画なら見開きでドンと描かれるような名シーンだね! ……あれ? 二人とも無反応?
「だから貴様、良い台詞っぽく言えばいいってモンじゃないぞ……」
「いや、まぁ、地球人くんらしいけど……」
「え? いや今のは良い台詞だよ!? だよね!?」
「……」
「……」
と、とにかく! 俺の思いは伝わったよね! 殺伐とした雰囲気も和らいだ! いよいよハオン星人と決着つけるぜ!
◆ ◆
「それで地球人くん、傷付け合わないなら、どうする気なの? 話し合っても無駄よ?」
「そうだぞ、ハオン星人は何があっても、我が外へ出る事を許さん」
二人の疑問への答えなら、もう用意してある。一呼吸置き、俺は言う。
「二人とも、俺が今までモン娘のチカラを何に使ってきたか、覚えてるでしょう? こうします!」
「へっ? ひゃうん!?」
俺はアラクネの糸を使いハオン星人の両腕を縛り上げる! 天井から垂れた糸で、両手首を頭上で拘束されるハオン星人! うわっ、腋がセクシー!
「おい貴様! 傷付けないんじゃなかったのか!?」
「傷モノにはしないですよー。うふふ、さっきの続きー、さっきの続きー」
「ここに来て暴走か!」
「違いますよー。というか女王も体験したでしょ? キメラボディの、内側から沸き上がるエネルギー! 衝動! ムラムラ!」
「……いや、うん、分かるけど!」
女王だってハオン星人を押し倒した時、ちょっと暴走してたもんね!
「やっ、やめなさい! アタシなんて、地球人とは全然違うじゃない! そ、そんなアタシを、襲っても」
「それが良い!」
戦隊ヒーローの全身タイツのような、銀色の素肌。パーツのバランスこそ地球人とは違うが、それがモン娘と同じく魅力的! 仕種や言動もかわいい!
「……! でもダメ、アンタ達をここから出す訳にはいかないわ! 地球人くんなんかには絶対負けない!」
カツンと蹄を鳴らし、触手を構える俺!
「ならば、いざ勝負!」
俺&百獣の女王vsハオン星人、いよいよ最終決戦! あくまで平和的にね! 続くッ!
第二十話:おわり




