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第十九話《こんな展開誰も求めてない! 俺はただ女王達とイチャイチャしてたいだけなんだ!》

 鏡越しじゃない、実際に見るキメラ美少女の、その圧倒的な存在感。事態の把握が出来ていない状況にも関わらず、俺は“彼女”に見とれていた。

「……悪いな。だが我は言ったぞ、貴様を利用する、とな」

 その言葉で我に帰る俺。俺を見つめているキメラ美少女は、俺ではなく『百獣の女王』のようだ。

「うにゃっ」

 キメラ女王に今の状況を説明してもらおうと声を出すが、可愛らしい鳴き声が聞こえるだけだった。

 あれ? 鳴き声? というか何だか身体がおかしいぞ? 身体の感覚が無いぞ!? かろうじて動く視界の端に、緑色のスライムが見えた。……そうか分かった、俺はスライムの塊に飲み込まれたんだ。女王が鏡を作るのに使った、あのスライムの塊に。そのせいで俺は今、人型じゃないスライムになっているんだ。でも、なんで……?

「うにゃ、うにゃにゃ!」

「……貴様にはこの身体から出ていってもらった。我には『目的』がある。その為には強いチカラを持った身体が必要なんだ」

 言葉になっていない俺の問い掛けに、女王が答える。女王の『目的』、それは世界から弾き出された魔物達のための復讐。

 なるほど、それじゃやっぱり、女王がわざとやったんだ。女王は自分の目的の邪魔になると考え、俺の意識をスライムの塊に移したんだ。

「本性を現したわね、『百獣の女王』。……だから言ったじゃない、地球人くんは利用されてるだけだって」

「うにゃにゃ! うにゃ!」

 俺だって言った! 俺も女王を利用してるだけだから、お互い様だって! でも、でもこんな……!

「さぁハオン星人よ、我は『方庭』から出るぞ。どうする?」

「どうするもこうするも、アタシの仕事は『女王』を『方庭』から出さない事なのよ!」

 ハオン星人が脱いだ真っ赤なマントが、2mはあろうかという剣のような武器に変わる。その剣が女王へ向けられた時には、既に女王はハオン星人の頭上へと飛び上がった所だった。

「なっ、早」

 次の瞬間には、女王のケンタウロスの蹄による強烈な蹴りがハオン星人を吹き飛ばしていた。

「まだまだぁ!」

 吹き飛ぶハオン星人の四肢をスキュラの触手で拘束し、自分の元へ引き戻す女王。背中のアラクネの脚で、戻って来るハオン星人を突き刺そうと構えている。

「させ、ないわぁ!」

 触手を振りほどいたハオン星人は女王の触手を切り落とし、勢いを利用して女王に蹴りを食らわせる。

「そんなもの、効かないぞ!」

 体勢を崩したかと思われた女王だったが、上手く蜘蛛の糸の発射口をハオン星人に向ける事に成功する。レーザービームのように発射された糸はハオン星人を壁に叩きつけ、そのまま動けなくしてしまう。

「し、しまった……!」

 身動きがとれないハオン星人に、女王がゆっくりと近付いて行く。パカラ、パカラと、蹄の音だけが『方庭』に響く。再生した触手と、鋭い蜘蛛の脚がハオン星人へ向けられる。

「追って来られても面倒だ。今ここで始末しておこう」

 そんな状況を、黙って見てられる訳ないだろうがッ!


◆   ◆


「こんな展開、誰も求めてない……! 俺はただ、女王達とイチャイチャしてたいだけなんだ……!」

「貴様、やはりモン娘に対する執念だけは本物のようだな……!」

 女王の前に立ちはだかる俺だ! 今の俺は、スライム美少女をそのまま巨大化させたような姿になっている! 身長3mくらいのスライム巨人だね! スライムの塊を動かすのには苦労したけれど、結局は今までと同じスライムなんだから大丈夫だったよ!

「そこをどけ! さもなくば、貴様ごと刺すぞ!」

「やだ!」

 俺は女王に抱き着く! というか押し潰す感じになっちゃった! とにかく女王を止める! と、思ったんだけどなぁ。

「……あ、れ?」

「……我の邪魔をするからだぞ」

 触手と蜘蛛の脚に貫かれた俺は、水風船が割れるように、弾けて消えた。


◆   ◆


「『女王』アンタ、そんな簡単に地球人くんを……!」

「次はお前だ、ハオン星人」

 起き上がり、再びハオン星人に刃を向ける女王。動けないハオン星人は、ただ女王を睨む事しか出来ない。

「これで終わりだぞ……!」

 スキュラの触手がハオン星人の身体に絡み付く。ハオン星人を拘束していた蜘蛛の糸がスライムに変わり、スキュラの粘液と混ざり合ってドロドロになった。

「えっ、きゃっ!?」

 床に滑り落ちたハオン星人に、女王が馬乗りになる。女王はハオン星人の四肢を触手で拘束したまま、ランプの点滅する胸に顔をうずめた。

「え、ちょっと『女王』どこ舐めて、やん!?」

 いつの間にか咲いていた頭のアルラウネの花から、甘い香りと共に蜜が滴りハオン星人の頬を濡らす。

「待って、おかしい、こんな雰囲気じゃなかったわよね!? さっきまでの殺伐とした感じはどこへ行ったの!?」

「はっ!? 我は何を!? ぬっ、身体が動かないぞ!? ……ふぅ、仕方ないですねぇ」

 俺は一旦ハオン星人を襲うのを止め、立ち上がる。ハオン星人は超スピードで後ずさり壁にぶつかる。

「まさか、地球人くん!? あれ、今死んで」

「……貴様、気づいていたのか……!」

 俺の口が勝手に喋る。これは女王の台詞だ。そう、俺と女王は再び一つの身体に同居を始めたのだ。

「女王が言ったんですよ? 分離した訳じゃない、意識を眠らせてスライム娘の身体を操っているだけだ、ってね!」


◆   ◆


 簡単な事だ。分身であるスライムの身体が消えたから、本体の意識が目を覚ましたのだ。本体の主導権が俺にあるかどうか不安だったけれど、どうやら大丈夫だったみたいだ。

「女王」

「……我は」

 白い部屋にて、棒立ちのまま独り言のように俺と女王が話す。ハオン星人は、黙ってそれを見ている。

「女王は言いました。女王のチカラを手に入れた俺が、いったい何をするのか見届けるって」

「……そうだ、今の貴様は『方庭』の外の世界に匹敵する存在だ。世界そのものと言っても良い。きっと何でも出来るぞ」

「俺は言いました。女王のために頑張るって」

「……そんなの、言うだけなら」

 俺は息を吸い込み、一気に言いきる!

「俺はモンスター娘が大好きだ! ラミアもハーピーもケンタウロスもスライムも人魚もアラクネもアルラウネもスキュラも! 女王も! だから大丈夫です!」

 しばしの沈黙。そして。

「ふふっ、大丈夫って、何を根拠に言ってるんだか……。しかしモン娘に関してなら、貴様を信じて良い、のかな……」

 女王のその言葉を聞いた俺は目をつむり、いつぞやの精神世界へ入った。


◆   ◆


 何も無い空間に、キメラ幼女王が立っている。急な対面だったのでキョトンとしている女王。かわいい。

「だっ、だから貴様! 精神世界では心の声がだだ漏れなんだからな! あんまり変な事考えるな!」

 そう、それだから良いんですよ。それに向かい合って話せるし。

「……まだ何かあるのか?」

 俺は、落ち着かない様子のキメラ幼女王の目を見つめ、考えを話す。

 俺ね、女王と出会ってモンスター娘になって、それで改めて思ったんです。モンスター娘になれて超嬉しいけど、やっぱりモン娘ハーレムも良いな、って。

「……は?」

 俺、自分がモン娘なのも良いけど、でもモン娘に囲まれて生活するのも良いなって、そう思うんです。

「いや待て貴様、なに良い話風に自分の願望を語ってるんだ!?」

 翼をバサバサする女王かわいい! いや違う、話はまだ終わってない。

「……続けてくれ」

 女王の表情が真面目なものへ変わる。促され、俺は話を続ける。

 女王と同じチカラを手に入れて、俺は何をするのか。世界そのものとなった俺は、いったい何をしたいのか……。俺はね、モンスター娘ハーレムを作りたいんです!

「いやだから貴様は」

 人間とモンスター娘が共存する、モン娘漫画みたいな理想の世界を作りたいんです! 世界から弾き出された事への復讐なんて必要ない! モン娘を受け入れた世界を作りましょう! 女王と俺で!

「……!」

 暗い影を落としていた女王の顔に、パァと光が差した気がした。幼女らしい無邪気な笑顔を見届け、俺は精神世界をあとにした。


◆   ◆


「話は終わったかしら? 地球人くんと『百獣の女王』様?」

 剣を構えたハオン星人が、俺達を待ち構えていた。「あなた達の答えを聞かせてくれる?」

「俺達は、この『方庭』から出ます!」

 ハオン星人の剣の切っ先が、俺の前髪を散らす。剣近い! 怖ぇぇええ! でも、俺は決めたんだ!

「俺はモン娘ハーレムを作るんだぁぁああ!!!!!!」

 激しい光を放ち、俺は再び卵型のスライムに包まれる! 平和的に解決する為の! 変身ッ! モードキメラ! タイプ2!


第十九話:おわり

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