11/11
第零幕 逃避
暗闇が辺りをおおう。そこに…一粒の青白い光。弱々しく揺れながら闇の中に浮いている。
「あなたは…誰…?」
若い女性の声。その姿はどこにも見えない。傷つき疲れ切った声は反響することなく、その場に留まる。
「……」
「そう…ですか…。」
「……」
声は片方からしか聞こえない。しかしお互いの意識はもはや言葉を介して確認しあうまでもなく、溶け合い一つになろうとしていた。
「私の…願いをかなえてくれますか…?」
「……」
「それなら…」
女性の深く息を吸う音。何も見えず何も感じないこの空間で、一人と一つの発する音だけがその場を支配する。
青白い小さな光の球の、その輝きがうっすらと揺らぐ。意思の流れは、決められた工程を経て出力を返すシステムのように、変わらずに一人と一つの間を行き来する。
自分という存在に絶望し、全てをあきらめたその者の言葉は、驚くほどに済々としていた。
もうなにも…怖くない。
「それなら…約束です。7星年後に、私を殺してください。」




