第13話 決着
なんとか一区切り。思っている事、考えている事を文字にするのは中々に楽しいですね。
狒々と向かいながら鉈を構える。余裕を持っていた狒々も先程の戦いから少し何かを感じたのであろうか、拳を構えて来る。
「…ハードコア…上等だ…!」
狒々の元へ走る。最初はツービートの連打だ。間合いが近くなったところで狒々が拳を振り下ろして来る。
まずは1発目を左回転しながらかわす。2発目への牽制として、回転した反動を利用し拳に鉈を振り下ろす。
ー土遁…砂塵刃!
バチンという音と共に狒々の拳、俺の振り下ろした鉈は弾き合う。次、3発目が来る。弾きあった反動を利用し、これも拳に鉈を振り下ろす。次々に来る、拳を鉈で弾き合う。
てっ手が痛い…痺れて来るのを我慢しつつ次に来る速いツービートに備える。まだか…まだか…弾き合いながら来るのを待っているのだが狒々の表情からも段々と苛立ちを感じるようになっていた。
多分…ここだ…!すぐさま、バックステップし地面に手を付ける。狒々は驚いた表情をしながらも睨みつけて襲って来る。来た…速いツービート…
ー土遁…土壁!土壁!土壁土壁!
土の壁が重なりながら4つ立ちはだかるが1つ2つと簡単に壊されているであろう大きな音と振動が伝わる。
ひぇぇ…と恐怖に感じつつ4つ目の壁が粉々に破壊された直後、右へ転がりながら側面から狒々を捉える。
ー火遁…肉体活性!
脇腹を狙うが右拳により弾かれてしまう。そして、すぐさま左拳が襲って来る。これは受け流す事は出来ない…咄嗟の判断で寸前のところでかわすが、かわした先にもう右拳が振り下ろされていた。鉈で防御するが、吹っ飛ばされてしまう。活性のおかげでダメージは最小限に留められているのだがそれでも痛いものは痛い。
すぐさま体勢を整え、連打に備える。そろそろ来ても良い頃合いだと思うのだが…右から左から飛び交うように出て来る連打を避けては弾き、防御しては飛ばされてを繰り返し…来る…!
鉈を持った右手に力を込める。
この時を待っていた…ハーフテンポに落ち力を溜めるこの瞬間を。速い連打から力を溜めるこの瞬間。狒々が右手を振り上げる。
ー土遁…砂塵刃!
力の限りを込めて鉈を振り下ろす。もろに身体に一撃を入れることが出来た。
狒々は叫ぶ。が、それでも溜め込んだ右手を振り下ろして来る。その拳をしゃがみ避けて、今度は下から上へと鉈を振り上げる。一撃また入る。
左から右へ、上から下へ、左下から右上へと次々と鉈を降り一撃を入れ、飛び上がり。狒々の頭上へと振り下ろす。
ーバチン!
と大きな音を立てて狒々は膝を付き、叫ぶ。着地し、地面を見ると狒々の角が転がっている。
「小僧…!殺す!絶対…!殺す!」
呻き声を上げながら狒々は言う。フラフラと立ち上がり、見ると鉈も折れていた。だが…
「…こっちも…まだ…終わりじゃねーぞ!」
と叫びトドメを刺そうと狒々に飛びかかるが殴られて横に吹っ飛ぶ。必死に起き上がろうとしているところを狒々に掴ま力を込めて来る。骨が折れそうだ…口から内臓も飛び出して来そうだ…
「…殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」
狒々は言いながら力を込めて来る。
ガハッ…いっ息ができねぇ…最後の力を振り絞り、振りほどこうとするがジタバタするだけで振り解けない…
火遁でも出せれば…そうは思うがもう魔力もなかった。さっきの砂塵刃で本当の本当に出し切ってしまったのか…
ここで死んじまうのか…助けはまだなのか…キュイ夫妻だけでも…もっと魔力を練って色んな忍術使ってみたかった等、色んな気持ちが交錯する…
そして、自分の力の無さに苛立ち叫ぶ。大きな叫びが辺り一面に響き渡る。
「無駄。もう…死ぬ。」
狒々はそう言いさらに力を込めて来る。ボキボキと骨が折れる音が聞こえる。口から血が垂れて来る。
それでも、構わず叫ぶ。己の無力さに。一矢報いたかった。助けが来るまで時間を稼げなかった。キュイ夫妻を守ることが出来ない…己の無力さに。
あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
その時、頭上から何かが降って来た。バチバチ!と音を立てながら狒々を直撃する。俺を握りしめる手が緩む。
何が起こったのかなんてどうでも良い。最後の力を振り絞り
ああああああああああああああああ!!
言葉にならない叫びを上げながら、折れた鉈の先端を狒々の右目に突き刺す。
そして、着地したは良いものの立っている力もなくそのまま倒れ込む。もう立ち上がる事もできねぇ…
大きな叫び声を上げながら狒々は俺を睨んで来る。
「小僧おおおおおおおお!殺すうううううううう!」
がっ何かに気づいたのか俺より後方を見て、残っていた猿に何かを告げている。何があったのだろうか…
「小僧…覚えておけ。必ず殺しにくる。必ず殺す!」
そう言うと森の奥へと引き返して行った。
へへっ…何が起きたんだ…引き返して行ったという事はキュイ夫妻を守ることができたのか…もしかして、助けが来てくれたのか…でも、もう…俺は限界だ…と目を瞑る。
ー後頭部に何か柔らかい物を感じる。
んっうぅん…と目を少し開けると大きな山が2つあった。その山から金髪の髪をかき上げ垂れ目な可愛い顔が見えて来る。とても心配で不安そうな顔だ。
段々と音も聞こえ始めて来た。泣きながら、俺の名前を呼んでいるみたいだ。左の方を見ると俺の腹に手を乗せて淡い青色の光を出しているのが分かった。
その手の持ち主は綺麗な和服がドロドロに汚れており、いつも綺麗でまとまっていた黒髪のおさげがグシャグシャと解けていた。
人形みたいに愛らしい顔がグチャグチャになりながら泣きながら俺を見て叫んでいた。
そして、その少女の頬へ手をやり撫で、涙を指で拭うとまた力尽きる瞼を閉じたのだった。




