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『ゾンビだらけの世界でただ1人の魔法使い』  作者: mixtape
第1章:インセプション
5/81

第5話:かけがえのない存在達

2025/10/13 加筆修正


「さあっ! ワシ以外からも言いたい事はたんまりあるらしいぞ」


繋の背を軽く叩いた後、ヒョードルは他の仲間達の方に繋の身体をぐるりと向かせた


「じゃあ! 私から行くね! 他の男共はうじうじ考えているみたいだし」


元気よく手を上げ次に切り出したのはスノトラだった。


スノトラはけい前まで歩く。そして彼女は右手を宙に上げ、何もない空間から木で作られた170cm程の長さの杖を取り出す。


それは先端は鍵のような造形になっており、所々に魔法文字が刻まれており、持ち手には青と黒色の魔法布が巻かれていた。


「ほらケイ。手を出してみて」


繋はスノトラに言われ両手をスノトラの前に出す。


「スノトラ・・・・・・これは?」


長杖を両手の上に優しく置かれ、繋はスノトラにこれは?と尋ねる。


「魔王との闘いでケイの魔杖折れちゃったでしょ? 予備の杖は持っているだろうけど予備だと使いにくいだろうし・・・だから私が初めて作ったんだけどケイ用に調整して作った杖をあげる」


繋はスノトラの発言に驚きで目を見張る。


魔杖を作るには、魔法を使うのとは別に専門的な知識が必要となる。


それを知っているからこそ、唖然と、そして凄いと驚きの言葉を発した。


予想通りの反応を見てスノトラは満足げな表情をする。


「接近戦でも戦えるように杖術に適した長さに調整したり、普段使いを考えて短くする事も出来るし、もし万が一壊れても私のと同じように神木から作ってるから、時間が経てば自動で修復してくれるわ」


「ねえ。初めて作った割には自信はあるんだけどちゃんと使えるか試してみてくれる?」とスノトラは繋に早速使ってみてくれとお願いをした。


繋はこくりと頷き、受け取った新しい魔杖に魔力を流す。


じんわりと橙色の淡い光が杖を通して光る。


それは、完全に魔杖と繋の魔力の波長が適合したという証だった。


通常新しい魔杖を使う場合は、所有者の魔力が杖に馴染むまで時間がかかる。

その為、初めは使い勝手が悪く思うように杖の力を引き出したり魔法を発動する事も難しいのだ。

自分専用の魔杖を作る職人でもないのにも関わらず、繋にぴったりな杖を作れるのは長く共に切磋琢磨したスノトラだからこそなのかもしれない。


繋は感嘆の声を漏らす。


思いっきり魔力を込めても杖は壊れる事もなく、魔力が分散する事もなく杖に力が込められて、維持出来ていた。次に、試しに杖を伸ばしたり、縮ませたり、軽い魔法を発動させたりする。


それをスノトラは良かったと安堵しながら見ていた。


(本来使用者の魔力性質を知っておかないと本人専用の杖は作れないんだけど、ケイと長年一緒に研鑽しあった甲斐があったわ)


まるで少年のように嬉しがる繋。そんな彼にスノトラは腕を組みながら、少し呆れながらも何処か優しそうな顔で微笑みながらその姿を見ていた。


繋は、杖の試用が終わるとスノトラの手を掴んでありがとうと感謝の言葉を口にした。


「スノトラ・・・・・・本当にありがとう。こんなに素敵な杖を作ってくれて、無理させてないといいんだけど」


目を輝かせて何度も賞賛の言葉をスノトラにかける。そんな繋に、スノトラは思わず頬を赤く染めた。


「ま、まあ! このぐらいの杖の作成なら普通だし? 私じゃなくても出来るというか・・・・・・」


賞賛の言葉に嬉しくなりつつも、恥ずかしいのか天邪鬼になってしまう。

だが、そんなスノトラの状況などお構いなしに、繋は言葉を連ねる。


「いいや。そんな事ない。これまでの魔法の発明だけじゃやなく、魔杖の作成も出来るなんて、君は本当に凄い人だよ」


真っ直ぐと、真剣で純粋な言葉がスノトラにダイレクトに突き刺さる。


「う・・・・・・」


「うん?」


スノトラはとうとう我慢できず、握られていた手を振り払い、「う~!!」と良く分からない言葉を発した。


そして、内心喜びでにやけてしまう顔を隠しながらその場から逃げ出したのだった。


「あれ・・・・・・?」


繋は突如反対方向に駆け出したスノトラに目を点にしながら、その場1人ポツンと立ち尽くす。


「フハハハ!!  気にするな、気にするな。照れ隠しだろうよ」


ヒョードルが繋の肩をポンポンと叩く。


「にしても、流石スノトラだ。よく出来ている」


スノトラは落ち着いた後、少し離れた神殿の柱の後ろから、自分を褒める二人の姿を見ていた。


「は〜あ、まったく・・・・・・あの純粋さというか、素直すぎるというか、どちらにしても毒ね〜」


スノトラは柱に背を預けると繋との出会いを思い返す。





スノトラと繋との初めての出会いは魔道学校だった。


スノトラが在学していた魔道学校は純粋に魔法を学ぶためにと、有事の際に戦える魔法使いを育てる為の学校だった。


そして、スノトラの家系は有名な魔槍騎士の一族であり、彼女も魔法の勉強や魔物・魔獣と戦えるようになるため、その家系のもとで学校に通っていた。


彼女は当時のことを思い出す。


今では周囲から「魔法の天才」と呼ばれることも増えたが、学校にいた頃は天才とは程遠い、落ちこぼれだった。補助魔法や回復魔法、攻撃魔法を周りの生徒たちが次々と習得していく中で、スノトラだけはなぜか魔法がうまく使えず、初歩的な魔法でさえ爆発してしまうことがあった。


スノトラは魔槍騎士の家系に誇りを持っていたため、自分の魔法の不得意さを深く恥じていた。もちろん、魔法軍の家系だからといって必ずしも魔法に長けているわけではないことも理解していた。


実際、スノトラの父は魔法の腕はそこそこだったが、槍術と魔法を組み合わせた魔槍師として軍のトップに立っていた。


彼女は父や他の家族と同じように、魔法以外に得意なものがないか探し始めた。

槍術の技術だけはめきめきと上達したが、魔法に関しては父以上に苦戦を強いられた。


人一倍勉強し、勉強方法も工夫し、たくさんの訓練を重ねたつもりだったが――魔法をまともに発動できる日は、なかなか訪れなかった。


同じ学年の子達が勇者パーティーに誘われ一緒に旅だって行く姿を遠くで見ているだけの毎日。学校に在学してから2年目。初歩的な魔法がやっと使えるぐらいまでになった頃、スノトラに補欠の勇者パーティであるスヴィグルとケイ達から勇者パーティに入らないかと誘いを受けた。


スノトラは補欠の勇者メンバーとして誘われた時、無いにも等しいプライドで行くのを断った。


他に魔法が上手に使える子が偶々居なかったから。


無いよりもマシという事で自分を誘ったのだろう。とスノトラは思っていた。

でも、行ったところで何も出来ないし、役にも立たない。


魔法使いなのに魔法が下手。


そんな惨めな事はないと、泣きながら断って教室に逃げ込んだ。


そんなスノトラを追ってきたのが繋だった。


何しに来たの!と泣きながら叫んだスノトラに、困惑した顔をして、何も言わず少し間を空けたあと、繋は紅茶を出す魔法を出してくれた。

同じ魔法使いが居ることにびっくりしたスノトラは更に怒り、何それ当てつけ?!とけいに怒鳴った。


尚更自分なんて必要なんて無いじゃない!と繋に強く当たった。


そんなスノトラに、繋は自分は生活魔法と補助魔法しか出来ないんだと言った。


攻撃魔法には適性が無く回復魔法もそれなりだけど。


だから、一緒に旅しながら頑張ってみない?と繋は言ってくれたのだ。


それから、勇者メンバーの仲間に入り一緒に旅に出ることになった。





「あの時ケイに誘われてなかったら・・・・・・」


「ヒョードルを紹介してくれたお陰で、魔法がうまく使えない原因が自分の魔力量が多すぎるせいって事一生分かんなかっただろうなあ」


柱にもたれながらスノトラは呟く。


共に旅をしながら繋とスノトラは共に魔法を研鑽し続け、新たな魔法を次々と生み出しスノトラは天才と呼ばれるまでの魔法使いになった。


さらに、後に繋が攻撃魔法や他に適正が無い魔法を繋専用の魔法としてオルタナティブ・マジックという代替え魔法を作り出し、繋自身も魔法使いとして実力を身につけていく事になったのだ。 

  

「───私を見つけてくれてありがとう」


なんて。

面と向かって言おうと思っても恥ずかしくて言えないし、暫しの別れだからという事で決心して言おうとするも今でもやっぱり言えやしない。


意気地無しと心の中で愚痴り、独り言のようにけいへ感謝の言葉を言う。

 

「お前。いつのまにそんなの作ったんだ?」


「ぎゃあっ!!!」


 ベオウルフはスノトラの背後に立って聞いてきた。


「急に後ろに立たないでよ!!」


「ぎゃあってよお・・・・・・」


「いや、お前が一人でぶつぶつ独り言を言ってた時から呼びかけてたぞ」


「まさか聞こえてた?」


「まあ・・・・・・」


スノトラは「もう!」と恥ずかしくなって両手で顔を覆う。


「まあまあ。んでよ。いつのまにあんな凄いもん作ってたんだよ」


一人で赤面して顔を覆っているスノトラにベオウルフは気にせず問いかけた。


「まったく本当にもう・・・・・・。前々から作ってたの! 本当は・・・・・・ケイの誕生日に本当は渡したかったのよ・・・・・・」


スノトラは赤色の髪を撫でながら残念そうに答える。


それにベオウルフは「そりゃあ本当に残念だよな・・・・・・」と同じような声色で返した。


ベオウルフは旅の途中この魔王討伐の旅が無事終わったのなら、繋と平和になった後の世界で、各種族各地方の名酒を探したり飲んだり繋の作る美味しい異世界の料理でも食べながら冒険出来たら良いよなと以前繋に話しをしていたのを思いだす。


ベオウルフはズボンから銀色のネックレスを取り出すとそのネックレスを繋に投げ渡す。

 

「ケイ! ほらよ!」


「え?」

 

繋は突然の事に驚きながら「おっと」と声を出しながら両手で投げ渡されたネックレスを受け取った。

 

受け取った物を見ると、それはシンプルな銀色のチェーンにライオンのロゴが入ったペンダントが付いていた。


「それ、魔除けとか病除けのアクセサリーなんだ」


「俺の故郷で一人前の戦士になったら、そのアクセサリーをくれるんだけどよお、んまあ俺はよ、この通り特異体質で頑丈なだけじゃなく病気や呪いにも効きづらいからさ・・・・・・」


「だから、それをケイにやるよ」

 

本当はスノトラみたいにもっと気の利いた物を渡せればよかったのだが、ベオウルフが今スグに用意できる物があるとしたら、これしかなかったのだ。


でも、逆にこのペンダントで良かったのかもしれないと思う。


この優しい兄弟のような存在は自分が傷つくより、仲間が、親しい存在が傷つくのを嫌う。


ベオウルフの身体は攻撃を受けても傷すら中々付かない頑丈な身体なのにも関わらず、繋はベオウルフを庇う事を止めないのだ。


その度に逆に傷を負う繋は、その都度スヴィグル達に叱られていたが、それでも繋は止めなかった。


過去に呪いの魔法をかけられた時でさえ、ベオウルフ自身何ともないというのに自分の事の様に気にかけたりするわでベオウルフはその優しさを感じるたびにむず痒い気持ちになるのだった。


(マジで優しいんだよなあ)


対話が出来そうな相手であれば、誰にでも、そしてあろうことか敵でさえも対話をしようとする。


それぐらいこの繋って人間はどこか危うくも、優しいというかお人好しなんだと思う。


そういえばとベオウルフは思い出す。





スヴィグル達が獣戦士族の村に来た時だった。


魔物の呪いによりベオウルフ以外の村人達が衰弱していく中、村の中から怪しまれ村八分を受けていたベオウルフを気遣って関わり続けてきたのは繋だった。


各種族の中でも獣戦士族の村は外の人達と余り関わりを持たなかった事もあり、村人が衰弱していった理由が魔物の呪法が原因だったなんて知ることさえなかったのだ。


そんな中ベオウルフだけ何も影響を受けていないのなら怪しまれて当然だったという状況だった。


なら村の外に出れば良いと思うかもしれないが、狭い世界で育ち生きていた為、外に出るという選択があると当時のベオウルフの中には無かった。


長い間村の中から村八分を受けていたベオウルフは人を信じる事が出来なくなり捻くれてしまっていた。


だから、魔物討伐でやってきたスヴィグル達が問題を解決した後ベオウルフを外に連れて行こうと手を伸ばしたがベオウルフはそう言った理由から誘いを撥ね退けたのだ。


スヴィグルだけじゃない。ヒョードルもスノトラも親切に何回も手を伸ばしてくれたがベオウルフはそれを拒絶した。


だって、今更外に出て何をすれば良いのか、当時のベオウルフには想像もできなかった。

今更、どうやって人と話せばいいのかも――まるで見当がつかなかった。


(スノトラと一緒だ。今のオレは、ケイの手を掴んだからこそ、ここに立っていられる)


そんな中で何も言わずにベオウルフの生活を静かに傍にいてくれたのが繋だった。


初めは軽い挨拶から。

それを飽きもせずに毎日続けてくれて、少し慣れ始めたら軽い日常会話を交わし、でもベオウルフが会話をしたくない日には静かに寄り添うだけでその日を終え、そんな日常を1ヵ月程続けて最終的に折れたのはベオウルフの方だった。





(スノトラと一緒だ。今のオレはケイの手を掴んでそして今の自分がいる)

 

ああクソ!とベオウルフは心の中で舌打ちをした。


それは。他のメンバーと違って繋と居た年数が短いのが悔しいと思ったからだ。


もっと早く出会いたかった。


元の世界に帰ってしまう繋に行かないでくれと言ってしまいたかった。


でも、それは唯の我儘だ。


繋は死に別れた親の為に元の世界へ帰るのだ。

 

それを俺なんかが邪魔なんてしてはいけない。

 

「ベオウルフ」


繋がベオウルフに声をかける。


「遊びに帰ってこれたら、いつか言ってた冒険に行こう」


「アクセサリーありがとう。大切にする」


繋の言葉にいつの間にか俯いていたベオウルフはハッと顔を上げる。

何気なく話をしていた事を覚えてくれていたのだ。


その事にベオウルフは嬉しくなる。


「あと、ベオウルフ。ちゃんと体には気を付けるんだよ」


(ははは・・・・・・最後の最後までオレの心配なんて相変わらずだな)


ベオウルフは少し呆れつつも、その言葉に胸が熱くなるのを感じた。

よし。大丈夫だ。今なら笑って送り出せるとベオウルフは決心し笑って言い返した。


「その言葉そっくり返すぜ」


お互い笑いあいながら言葉を交わす。

 

そして二人は約束のハイタッチをした。


「ほらよ。最後はリーダーだ」


ベオウルフに振られたスヴィグルは後頭部をガシガシと掻いて、ああでもない、こうでもないと1人呟きながら悩んだ表情をしていた。

 

いくら待っても何も言わないスヴィグルに糸を切らしたのがスノトラだった。


「遅い! さっさと言いなさいよ!」


「わーってるよ! けどよお」


「なによ!」


「言いたいことが多すぎて纏まらん!」


スヴィグルは頬を掻きながら、しょんぼりとした顔で言う。


「そんなの他のみんなだって同じよ! さっさとぶちまけなさい!」


そう言ってスノトラはスヴィグルのふくらはぎ目掛けてゲシゲシと軽く蹴る。


「いてっ! こ、こら! やめろって」


「ベオも笑ってないで止めてくれよ!」


「いんやスノトラの言う通りだぜリーダー」


なんだかんだ最後は賑やかだな繋はそんな光景を眺めながらヒョードルと一緒に笑う。


そして繋は心なしか嬉しがっていた。


今朝方スヴィグルに欲しい言葉を貰ったので別れの言葉で十分だと思っていたのだがスヴィグルは未だ言い足りないらしい。


「あ ーー!! 分かったわかった!」


やっと決心が付いたのかスヴィグルは自分の左手の親指に嵌めていた何の装飾もされていないシルバーのサムリングを外す。


繋の目の前まで歩くと繋の左手をとる。


「うん?」


「恥ずかしいから。少し黙っといてくれよ」


そして、スヴィタグルはついさっきまで身に着けていたサムリングを取り繋の掌の上に置いた。


これは?と繋が聞く前にスヴィグルが先ほどまでの恥ずかしくてぶっきら棒になっていた言い方から真剣な声で説明する。

 

「これは所謂願掛けというかお守りみたいなもんだ。スノトラみたいに気の利いた物じゃねえし、ベオウルフと似たようなもんを渡すことになって申し訳ねえが・・・」


「早いもん勝ちだな」


「うっせえ!」


途中ベオウルフが茶々を入れるがスヴィグルは続ける。

 

「これはな、何か成し遂げるためのお守りだったんだ。俺は魔王討伐の旅に出る前に仲間全員が無事で旅が終われるようにって。だから、今度はお前とまた会えるまでのお守りって事でこれをやるよ」

 

繋はそっと大事そうにリングに触れる。

そしてスヴィグルの方に顔を向ける。

そこには二カッと笑う彼が拳を突き合わせるのを待っている彼がいた。

 

「俺のフォル・ハルファ(魂の片割れ)よ! また必ず会おう!」




もし良かったら、ブックマークかリアクションスタンプでも押して貰えると更にやる気が出ます・・・!

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