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『ゾンビだらけの世界でただ1人の魔法使い』  作者: mixtape
第1章:インセプション
2/94

第2話:女神と親友

2026/1/25 加筆修正

魔王討伐後のとある日。


けいは女神と話しをする為、勇者達には内緒で女神の神域に来ていた。

内緒で来てるとは言っても、詳細は少し違う。

けいが寝ている間に、女神がけいの精神を自分の神域と呼ばれる精神世界に迎えいれているという状態だ。


他の仲間達には知られずに、女神と相談が出来る状況が作れる事にけいは感謝する。

けいにとって、何度も見慣れた場所である、女神の神域。


そこは緑豊かな庭園のような場所が広がっており、簡易的な円卓と2人分の椅子が用意されているだけで、それ以外の建物は無く何処か無機質で寂しい場所だった。

用意された椅子にお互い向き合うような形で座っていて、地球に帰るための話をしている中で女神から衝撃的な話しを受けけいは動揺していた。

 

「死人って……ゾンビってこと、だよね……それに、え……? なんで地球でそんな事が起きてるの…………」


女神からの情報に思考が止まったが、死人とはつまりゾンビのことではないかと、けいは恐る恐る女神に問いかけた。


「ああ。そうだ」


「こちらの世界で数年前に大規模な地震があっただろう?」


女神は眉間に皺を寄せ、目を伏せながら地球の現状を説明し始める。


「同じような事が地球でもあったらしい。──そこから生物災害なのか分からないが、人が屍人化するようになった。と知り合い経由で情報が私の耳まで届いたわけだ」


「ね、ねえ……地球に居る人たちの現状は?」


どうか、事態が収束している事をけいは祈るように聞いたが女神からの回答でそんな希望は打ち砕かれる。


女神は残念そうに横に首を振る。


「今でも解決策が出て無いらしく、地球の人口は減りつつあるらしい」


「…………そんな」


女神から語られた地球の現状にけいは何とも言えない表情になる。


そして女神は机に両肘を立てて寄りかかり、両手に整った顎をゆったりと乗せて再度繋けいに確認をした。


「そんな中でもお前は帰るのか?」

 

女神からの真剣な眼差しに、けいは少し沈黙する。


「親の墓を建てるだけなら、此方の世界でも良かろう。やっと旅が終わるだろうというこの状態で、わざわざまた危険を冒す必要はないはずだ」


女神の言葉にけいは考える。

 

(確かに……フリッグの言う通りだ)


わざわざ命を危険に晒してまで、地球に戻る理由なんて、本来はどこにもないはずだった。


けれど――それでも、そうせずにはいられなかった。


事故で自分だけが生き残り、異世界で過ごした年月が、気づけば地球での日々と同じくらいになりつつあった。

そのあたりからだろうか。両親の顔を思い出そうとすると、まるで濃い霧がかかったように、その輪郭が曖昧になっていった。声も、表情も、遠くの雑踏のざわめきのように霞んでいく。


焦りにも似た感情が、胸の奥でわずかに燻っていた。


それは決して、ただの寂しさや哀しみではない。「自分だけが生き残ってしまったのだから、せめて二人の顔だけは、決して忘れてはいけない」。そんな、自分を縛る罰のような気持ちだった。


本当は、心のどこかで気づいている――両親は自分を大切になどしてくれなかった。愛されていなかった。その現実に、今も向き合いきれず、時には記憶すら書き換えてしまうほどだった。


それでも、ヒョードルと家族となり、スヴィグルとは兄弟のような、魂の半身のような絆を得た。


たくさんの愛情も受け取りはじめている。

それなのに、過去の傷はふとした瞬間にチクリと疼く。


(今なんか、もっと酷くなっている)


あの日、「弟のように思っていた魔王」を自らの手で討ち取ってしまってから、その痛みはより深くなった。ヒョードルたちのくれた愛情という名のカサブタは、剥がれかかり、また血が流れ出している。


だからこそ、両親を弔い、墓を建てる。 それは“供養”のためじゃない。 そもそも墓を建てたところで、両親の記憶が蘇るわけでも、“わだかまり”が消えるわけでもない。


――むしろ逆だ、と誰かが告げてくる。


けいが本当に欲しているのは、「自分を許す証」ではなく、

「もっと重く自分を苦しめてくれる新しい重石おもし」なのだ。

彼は無意識のうちに、自分を罰し続ける理由を求めている。


両親が先に死に、自分だけ生き残ってしまった事。

守るべき存在だった魔王(あの子)を殺して、自分だけ生き残ってしまったこと。


どれほど新しい絆を得ても。

どれほど愛情を注がれても。


“愛されない自分”を捨てきれずにいる限り、

けいは――


自分を罰し続ける。


本人は、それに気付かないまま、女神に明言する。


「ごめんなさい…………。心配してくれてありがとう」


けいは間を少しおいて、それでもやっぱりとけいは決意を口にする。


「それでも、僕は地球に帰るよ」


女神は少し沈黙をしたあと、分かっていたとばかりに深い深いため息をついた。


女神の名前はフリッグ。


彼女の容姿は一言で言えば美人。それも、ただの美人ではなく、絶世の美女と言うに相応しい見た目だった。

地球で言えば海外モデルのように高身長で顔は整っており、鋭い目つきに金色の瞳を持っていた。そして、髪の色は銀色に輝いており、銀色の長い髪を二つ編みにして肩にかけていた。

 

フリッグはけいに目を向けた後、組んでいた手を解き今度は腕を組む。

片足を踏み初め再度深いため息をする。

その姿にけいはいたたまれなくなり、彼女を納得させる為の言葉を探す。


「ほ、ほら! でもさ昔教えてくれたじゃないか、此方の世界で覚えた魔法は地球でも同じように使えるって……」


「使えるが、地球の環境にお前の身体の魔力が馴染むまで、一旦魔力量は激減するがな」

 

「うっ……! で、でも馴染んでいったら今のレベルの魔力量まで戻るでしょ?」

 

だから大丈夫だと思うとけいはフリッグに答える。


ゾンビに出くわしたって、逃げ隠れしながら毎日コツコツ魔法を使って魔力量を今のレベルにまで元に戻せば良い。時間はかかるかもしれないが、それでも0(ゼロ)からでは無いのだからとけいは思う。


(それに、今までの経験がある)


魔物や魔獣が存在する異世界で生き抜くために沢山の経験もした。


(我慢する事だって慣れている)


自分の身体を魔法を使えるようにする為に、それこそ血反吐を吐くような事だってしてきた。攻撃魔法は適正が無い為大した魔法は使えないけど、攻撃魔法に代わる代替魔法や生活魔法、補助魔法は得意だ。


9年間過酷な旅だって何とか乗り越えてきたという自信がけいにはある。


それに。地球にはこちらの世界のような魔物や魔獣と呼ばれる危険な存在はいない。

怪物だらけの異世界で戦ってきたのだ。ゾンビだけなら余裕で生きていけるだろうとけい自身の信頼があった。


「大丈夫だよ。何とかなる」


けいは様々な理由を付けて、とフリッグに呑気に言った。その瞬間だった。

無音の庭園に、乾いた衝撃音と怒声が重なって響いた。

 

「この馬鹿者!!!」

 

「うぇッ! なんで怒るのさ!」

 

けいは驚いて返事をすると、フリッグは片手で頭を抱えた。


「過酷な旅の中で一般人にしては大分強くなったと思っているし、様々な経験から油断などはしないと思っているが」


(今はまだ仲間達が居るからまだしも)


「…………お前は、自分の事を蔑ろにする癖がある」


フリッグはけいの「力」は、信用している。スヴィグル達との旅で、数多くの場数を踏んできたのを知っているからだ。


だが、そこは問題ではないのだ。


一番の懸念はけいの「心」の方だった。

けいの過去を知っているからこそ、フリッグはけいを一人にさせる事を心配していた。


「お前は、衝動的に自分の身を投げ出すことが多い」


「……そんな」


けいはそんなこと位は勇者パーティの全員がやっていた事だと思った。

フリッグはけいの考えていることを見抜き更に言葉を詰める。


「お前のは、誰かを助けるために勝手に身体が動くのとは違う。そういった献身的行為でもない。ケイ……お前はその違いが分かっているか?」


そんな事、分かっているよ。と言おうとしてけいは言い淀んだ。

それは、フリッグの言いたい事が何となくだが頭では理解はしているからだ。


(はあ…………その様子じゃ、きっとまだ本当の意味で分かってないのだろう)


フリッグは俯き、考えているけいを見てため息をつきたくなる衝動に駆られた。


(こいつの、危うさを確信した時はいつだったかな)


フリッグは過去を思い出す。


(そうだ、確か初対面だったのにも関わらず初めて会ったばかりのスヴィグルを魔獣から庇った事があった)


そこからだ、けいは精神性の危うさに気づいたのは。


(普通の人間は、初対面の人間を「何も考えず」に庇う事なんてしない)


(英雄としての精神を持っている訳でもなく、自己犠牲を問わない神の道を歩んでる訳でもなく、普通の人間が自身を犠牲にしてまで”初対面”の人間を助けるには───歪だ)


フリッグは改めてけいを見る。


(こいつは、きっと、初対面のスヴィグルを助けて大怪我をした事すら覚えてないだろうな)


フリッグはけいに声をかける。そして確認するかのうように問う。


「ケイ。お前が魔物の討伐訓練生と間違われてスヴィグルと共に討伐訓練に行ったときの事を覚えているか?」


じとーっと効果音が付きそうな目でフリッグはけい


を見る。

それに、「ぐっ」とけいは息を飲んだ。

けいはフリッグから何か試されていると思い、必死に自分の頭の中から過去を引っ張り出す。

 

(…………確か)


魔王の出現と共に魔物の動きが活発になった頃だった筈とけいは彼との出会いを朧げに思い出す。


(出会った頃の記憶は思い出したけど……それがどうしたんだろう)


けいが当時の記憶を振り返る。


ヒョードルが中央王国軍の剣術・魔法指南役という事もあって中央王国のお城まで一緒に連れていってもらった事があった。

けい自身は魔王の討伐や魔物討伐に関わる事など微塵も考えていなかったし、ヒョードルも異世界から来た一般人であるけいを関わらせる予定など一切無かった、


だが、それこそ運命だったのか、たまたま訓練場に居たけいと魔物の討伐訓練に遅れ一人取り残されていた農民との出会いが2人の運命を大きく動かした。


その農民の名前こそ、スヴィグル・ハーキュリー。


長い旅路の後魔王を討伐した勇者となり。


けいの長年の相棒であり。


かけがえのない半身となる男だった。




もし良かったら、ブックマークかスタンプでも押して貰えると更にやる気が出ます・・・!

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