第96話 会長登場
千尋峡谷でモモと別れた、俺とミーシャ。
モモもやはりドラゴンだと再確認した後、俺の転移魔法でリバルド学園に戻った。
リバルド学園の闘技場に転移した、俺とミーシャ。
そこには細身で神経質っぽい副会長と、屈強な五人の男が待っていた。
「げ、なんでここに戻ったのよ。」
ミーシャが小声で文句を言ってきた。
「あ、そうだったな。」
ミーシャに言われて気がついた。
わざわざここに戻らなくても、よかったな。
普通に校門前に戻れば、こいつらとからまないで済んだのか。
「む、カタナはどうした?」
副会長がけげんそうに聞いてくる。
「かたな?」
モモの本名は、カタナヒャクタロウ。
咄嗟には思い出せなかった。
「あら、あいつが帰ってこれなくて、私たちだけ戻ってきた。答えは出てるんじゃない?」
副会長の言葉に疑問を持ってる俺の横で、ミーシャがニヤける。
「な、あいつはS級特権でネジこんできたんだぞ、あ、ありえんだろ。」
狼狽する副会長を見て、俺もモモの本名を思い出す。
「ああ、モモのヤツ、今度はS級特権使ったのか。」
昨日は悪目立ちするからって、使いたくないって言ってた気がする。
「なん、だと?モモだと?その呼び方は、限られたヤツにしか、出来ないはず。」
なぜかモモ呼びしただけで、副会長は驚いてる。
「ふふーん、驚いた?こいつはね、S級冒険者ともつながりがあるのよ。」
なぜかミーシャが、自慢げに語る。
「つまり、出来レース。八百長か。」
副会長のひと言で、五人の屈強な男どもが俺とミーシャを取り囲む。
俺も思わず身構える。
ドラゴンの時とは違い、人間の姿だと爪も牙もない。
それに空を飛べないのは、俺の格闘技術には大きな制約になってしまう。
つまり人間の姿での俺の戦闘能力は、無いに等しい。
「あらあらミーシャさん、お久しぶりね。」
俺が内心ビビってると、数名の女性たちが入ってきた。
「か、会長、なぜここに?」
副会長がビビる。
会長と呼ばれたのは、金髪でゴージャスなイメージの女生徒。
その後ろにおとなしめの女生徒が三人ほど控えているのだが、そいつらの方が、会長っぽくみえる。
「うるさいわね、私はミーシャさんに会いに来たのよ。」
会長は副会長をギロりとにらむ。
それだけで人が殺せそうだ。
「ミーシャさん、また会えて嬉しいわ。」
今度は笑顔でミーシャに話しかける。
「そりゃどーも。」
ミーシャは嬉しくなさそうだ。
「ふふ、相変わらずミーシャさんは、不運続きのようね。こんな歓迎セレモニーに巻き込まれるなんて。」
「ええ、ほんと不運だわ。こんな所であんたに会うなんてね。」
会長さんの悪意のありそうな笑顔に、ミーシャも苦々しくひきつった笑顔で返す。
「まあ、ツレないお言葉ね。今なら私の権限で、歓迎セレモニーを抜け出せますわよ。こっちにいらっしゃい、ミーシャさん。」
会長はミーシャを手招きする。
「冗談。あんたの言葉には乗らないわよ、会長さん。」
「会長さんだなんて、ツレないわ。昔は名前で呼んでくれたのに。あ、私も昔みたいに呼ぶべきかしら、」
「黙れ!」
会長の言葉をさえぎり、ミーシャの火炎魔法の火球が飛ぶ。
会長の後ろに控えてた女生徒のひとりが、素早く会長の前に立ち、火球をはじく。
「ふーん、昔のよしみで助けてあげようと思ったのに、これがミーシャさんの答えですか。」
「助けてあげる?余計なお世話どころか、大迷惑なのよ、会長さん。」
ミーシャの返しに、会長も怒りの表情を浮かべる。
「なんですって、私の親切心が分からないなんて。いいでしょう。このまま公開処刑されるといいわ。」
「へ、こっちは最初から、そのつもりだぜ。」
会長の言葉に、今までミーシャを視姦してたヤツが行動にうつる。
どご。
ミーシャを襲う屈強な男も、ミーシャの股間蹴りで動きがとまる。
そこへすかさず、跳び回し蹴りを顔面に叩き込まれる。
吹っ飛んだ男は、その場で失神する。
「く、タマ殺しのミーシャは健在って訳か。」
「こうなったら、先に野郎を殺す方が賢明か。」
男たちの標的が、俺にうつる。
く、ここは一緒にミーシャを襲わないかと、誘う所だろ。
まあ、襲うなら独占したいと思う気持ちは、分からなくもない。
「こいつは私より強いわよ。なにせ、あの幻想旅団を討伐したんだからね。」
「なに?」
ミーシャのひと言に、男どもがたじろぐ。
「え、まさか、今朝から話題になってるけど、こいつがやったって言うの?」
会長が代表して反応する。
「ええそうよ。今まで誰にも出来なかった事を、こいつがやってのけたのよ。」
ミーシャが偉そうに返す。
「ちょ、バラすなよ、ミーシャ。俺も反撃されたくねーぞ。」
俺はミーシャを諌める。
討伐したのは、ドラゴンの姿の時。まだ残ってるという幻想旅団に人間の姿の時に襲われたら、俺は普通に殺される。
「ちょ、話しが違う。」
「ミーシャを襲えるから来たってのに、冗談じゃねーぞ。」
屈強な見た目の男どもが、うろたえ始める。
「甘いわね。私がただ戻ってきただけだと、思ってたの?」
ミーシャが凄む。
男どもは、戦意を喪失したように、ガクガク震えだす。
「さあサム。反撃よ。こいつらをぶっ殺しなさい!」
ミーシャが勝手に指揮をとる。
おいおい、幻想旅団を討伐したのは、ドラゴンの姿の時。
人間の姿の今の俺は、戦闘能力皆無だっての。
「はあ、」
ミーシャに文句を言ってやろうと、身体を動かす。
「ひい、やってられっか!」
屈強な見た目の男どもは、全員逃げ去った。
今この闘技場には、俺とミーシャ、副会長と会長と、会長の取り巻きの女生徒三名、失神してる男が取り残された。
ども(・ω・)ノ
副会長が男なら、会長は当然、女性になりますね。
今後書かれる機会があるのか分からないので、言っちゃいます。
この会長は、ミーシャを狙う帝国の王子の妹、のつもりです。
実際本編で描かれる時にどうなるのかは、まだ分かりませんが。
この王子がからんでくるまで、ミーシャと会長も仲が良かった設定です。
そして会長の後ろに控えていた女性のひとりが、女神の加護を受けた天啓の子の予定です。




