第95話 擬装の代償
魔素ぎれで暴走したミーシャ。
ミーシャを元に戻すには、餌の子羊が必要だ。
「変わってねーな、ここは。」
俺とミーシャとモモは、廃墟群の外れに転移する。
モモとつないでた手を離す。
俺は大気中の魔素の流れから、餌の子羊の出現場所を探る。
「お、手ごろなドラゴンもいやがる。ラッキー。」
「争奪戦になるだけだぞ?」
「ミーシャの身代わりがいるんだろ。」
「そういう事か。」
俺はミーシャをかついだまま、餌の出現地点の上空に舞登る。
俺の後にモモが続く。
出現地点の近くには、三匹のドラゴンがいる。
そこに近づけるドラゴンも、十匹程度はいる模様。
つまり近くのドラゴンをミーシャの身代わりにすれば、跡形もなく食ってもらえる寸法だ。
「あ、やべ。子羊一匹じゃ足りねーな。」
ここにいるのは、俺とミーシャとモモの三人。
三人で子羊一匹は、ちょっと少ない。
「いや、俺は人間の姿の時しか、メシは食わんから。」
ここでモモが、衝撃的な事実をカミングアウト。
「俺は大気中の魔素を、直接取り込める。」
「そうか、じゃあひとり分浮くわけだな。」
俺にも同じ設定があるけど、俺の場合は食事で摂取した方が効率がいい。
「じゃあ一匹捕まえてくるから、ちょっと待っててくれ。」
俺はかついでたミーシャをモモに渡し、急降下。
適当なドラゴンの前に降りたつと、手刀で袈裟斬り。
ミーシャと同じ様な傷をつけて、蹴り飛ばさす。
そのドラゴンに、無数のドラゴンどもがガブリつく。
同時に大気中の魔素の澱みから、子羊発生。
俺は子羊をかかえると、上空のモモの元へ瞬間移動。
「さあ行くか。」
「お、おう。」
俺たちは、廃墟群の外れから少し離れた場所に降りる。
「よっと。」
モモがかついだミーシャを、無造作に下ろす。
「ぐ、ぐぐう。」
そのショックで目を覚ましたミーシャは、即座に子羊にガブリつく。
「な、何見てんのよ。」
魔素の供給も済んで、ミーシャが正気に戻る。
「いや、なんでもない。」
ミーシャが正気に戻ったところで、話しを進めよう。
「で、俺たちは歓迎セレモニーとやらで戦ってたんだけど、このまま戻ってもいいんだよな?」
俺は人間に変化しながら、モモに問う。
「それなんだけど、おまえが転移魔法使えてよかったぜ。それで戻ってくれ。」
「ん?ここに来た道具を使えば、戻れるだろ。」
「あれはこっちに来るだけの一方通行。戻る事は出来ない。」
「おいおい、そんな道具だったのかよ。」
「俺はおまえと話せれば良かったし、その後の事は考えてない。」
「はあ、そうかよ。」
なんだかんだ言っても、モモもドラゴンなんだな。
自己の目的が最優先。他の事は、割とどうでもいい。
「じゃあ俺は、こいつを裏ギルドに持ってくわ。」
モモの持つ、ミーシャの血を吸った剣。
これがミシェリア死亡の証拠になる。
「おう、頼む。」
自分の事なのに何も言わないミーシャ。
なぜか俺が礼を言う事に。
「ふ、じゃあな。」
モモはバサりとこの場から飛び去った。
「はあ、」
ミーシャは不満そうにため息をつきながら、人間に変化する。
「おい、どうしたんだよ、ミーシャ。モモが色々計らってくれたのにさ。」
ミーシャの態度に、俺も少し腹が立つ。
「計らってくれた?何言ってんのよ。あいつが秘密を独占しただけじゃない。」
「はあ?何言ってんだよ。」
ミーシャの発言を、即座に理解できなかった。
「あんた、やっぱりバカなの。私の生死は不明だったのよ。今までは。でも今は確実に知ってるヤツがひとり居る。」
「も、モモに知れたくらい、なんだよ。頼もしい仲間が出来たようなもんだろ。」
「仲間?裏ギルドに顔がきくヤツが、ヤバいヤツだって気づかないの?」
「はあ?やばいヤツってなんだよ。いいヤツだろ、モモは。」
俺とミーシャとで、モモに対する印象は違うらしい。
俺にとっては正統派主人公って感じの頼もしい仲間、って、まだそこまで親密な仲ではないが、いずれその様な仲になりたいと思わせる、ナイスガイだ。
ミーシャは呆れたように首をふる。
「そう言えばあんたは、ずっとここで生きてきたんだっけ。視野も狭いか。」
「な、なんだよ、それ。」
視野が狭いと言われ、俺もカチンとくる。
「まあいいわ。あんたと私とでは、考え方が違うって事。個性が違うのよ。」
「むう、」
考え方が違うと言われれば、俺も無理に自論を押しつけられなくなる。
「分かったよ。モモがなんかしてきたら、俺が守ればいいんだろ。」
「それは当然でしょ。あんたは私の下僕なんだから。」
俺の譲歩にも、トゲのある返しをするミーシャ。
こいつが普通の美少女だったら、蹂躙して終わりなのだが、ミーシャは超絶美少女。
つい、わがままも聞いてしまう。
モモが亡国の美女を引きあいに出してたが、それも的を射ていそうで笑えない。
「はあ、下僕ね。ミーシャも敵を作りすぎるなよ。」
亡国の美女の末路は、悲惨なものだ。
ミーシャにはそんな末路を、たどってほしくはない。
「あら、あんたは私を守ってくれるんでしょ。」
ミーシャはニコりと微笑む。
最近、鋼鉄の微笑やら天使の微笑みやらを見てきたが、それらよりはるかにかわいい笑顔だ。
「ま、まあ、守れる範囲でなら、守ってやるけどさ。」
やべ、ミーシャに見とれて、自分で何言ってんのか分からん。
「ふふ、あんたは私の呪いを解いてくれたし、信頼してるわ。さ、もう戻りましょ。」
ミーシャは右手を差し出してくる。
「お、おう。」
俺はミーシャの右手をつかむと、転移魔法を使った。
ども(・ω・)ノ
ここ最近のモモの言動で、お気づきの方も居ると思いますが、モモも転生者です。
この世界の女神にとって、主人公は押しつけられて転生させました。
モモは気まぐれで転生させてます。多分。
このふたりとは別に、物語の主人公になるような転生者も、存在します。




