第90話 早すぎる再会
リバルド学園に編入手続きに行ったら、副会長って言う人物にからまれた。
「歓迎セレモニーって、そんな仰々しい事やらんくても。」
前回副会長の口から出た単語に、俺はボソりと呟く。
「おおっと、サム君と言いましたか。君もここまで首を突っ込んだ以上、歓迎セレモニーは強制参加ですよ。」
俺の意向を無視して、歓迎してくれるらしい。
首を突っ込んだって、俺が何かしたのか?
「ごめん、サム。あんたを面倒ごとに巻き込んじゃって。」
ミーシャが神妙な面持ちで謝ってくる。
「はあ、何がなんだか。」
俺には、全く意味が分からない。
この学園の生徒同士、ミーシャと副会長には共通認識のようだが。
「心配にはおよびませんよ、サム君。こちらの用意する判断者と戦い、君の実力を見させてもらう。それが歓迎セレモニーですよ。」
と副会長が説明する。
「なんだ、それ。手荒い歓迎だな。」
歓迎と言っても友好的な歓迎ではなく、俺をいたぶる事が目的らしい。
「おおっと、今さら辞退は出来ませんよ。」
副会長は早速釘をさしてくる。
「歓迎セレモニーの結果次第では、サム君には入学後即退学って事で、58万クレカを納めてもらいますからね。」
「それはぼったくりが過ぎるな。」
ここまでくると、逆に笑えてくるな。
「ふ、では早速、会場にご案内しますよ。」
「誰が行くかよ、そんなのこっちから願い下げだ。」
そんな茶番には、付き合ってられん。
パチン。
副会長はほくそ笑みながら、指を鳴らす。
屈強そうなヤツが五人ほど、俺とミーシャを取り囲む。
「ふ、強制参加って言いましたよね。君に拒否権はありませんよ。」
副会長がニヤけると同時に、屈強な五人は俺とミーシャに圧をかけてくる。
こんなの、転移魔法で逃げられるが、使うところは見られたくない。
俺もドラゴンに戻れば問題ない相手だが、ドラゴンバレは討伐対象だっけ。
今この場を視界に入れてるヤツを皆殺しにすればいいが、人数が多すぎて無理がある。
今はこいつに従うしかなさそうだ。
「ごめん、サム。私が一緒だったばかりに。」
ミーシャが小声で謝ってくる。
「ふ、全くですよ。」
ミーシャの小声に、副会長がめざとく反応する。
「ミーシャ君も下僕を引き連れてないと、復学も出来ないなんて、とんだとばっちりですよね。」
副会長は俺に話しを振ってるようだが、悔しそうな表情でうつむくミーシャを見ると、俺も副会長に対する怒りがわいてくる。
「俺は来たいから来ただけだ。ミーシャは関係ない。」
この返しに、副会長みたいなヤツが居る所には来たくないって言おうとしたのだが、この副会長ってヤツ、あまり関わりたくないので、返しもそっけなくなる。
そんな俺たちは、闘技場らしき施設に入らされる。
陸上競技場みたいな感じで、400メートルトラックがゆうに入り、楕円形なすり鉢状の観客席がある。
そして競技場のトラックへの入り口から少し入った所に、ひとりの男が立っている。
学ラン風の装束に身を包み、背中に日本刀らしき刀を背負っている。
額にはちまきをまいて、熱血風主人公をクールにしたような面構え。
「やはり来たか、サム。」
「も、モモさん?なんでモモさんがここに?」
そう、待っていたのはモモこと、カタナヒャクタロウ。
昨日出会った、伝説のS級冒険者だ。
「ふ、おまえと手合わせしたくてな。S級特権を使わせてもらった。」
「な、なんで俺なんかと。」
昨日のルル姉たちとのやりとりが、脳裏をよぎる。
俺が獅子の穴を脱走した事。それに対する追手。
今は全力でしらばっくれよう。
「さあな。単なる気まぐれだ。」
モモも理由を明らかにしない。
大っぴらに獅子の穴の名前は出せないのか。
「ん?知り合いか?」
俺とモモとのやりとりに、副会長の表情がくもる。
「ふ、手心は加えんから、安心しろ。」
副会長の不安に、モモが答える。
「マジかよ。モモさんと戦うのかよ。」
そう、歓迎セレモニーとやらの対戦相手はモモ。
伝説のS級冒険者にして、俺と同じドラゴン。
俺が昨日倒した幻想旅団とは違い、明らかに格上の相手。
それもドラゴンに戻らず、人間のまま相手にしなくてはならない。
しかもモモは、武器持ちだ。
「ああ、こいつは使わん。素手で勝負してやるよ。」
モモも俺の視線に気づく。
「そうですか、それは安心だな。」
とは言え、格上な相手には違いない。
それにしても、こういう時って学園の実力者が相手になるんじゃないのか?
なんで部外者の伝説のS級冒険者が相手なんだよ。




