第89話 歓迎セレモニー
リバルド学園への入学手続きに、ミーシャが手伝ってくれるので、昼過ぎに行ったらミーシャに怒られた。
何を言ってるのか分からないと思うが、俺も何がおきたのか分からない。
勘違いとか言葉のすれ違いといった類いでは、断じてない。
そんな俺らの目の前に、副会長っていうヤツが立ちはだかる。
「ミーシャ君、復学したと思ったら、授業も受けずに堂々とサボってるとは、どういう了見ですかね。」
神経質そうな副会長が、眼鏡をクイっとあげる。
「お言葉ですが、私は復学の手続きをしただけで、出席まではまだ、猶予があるはずです。」
ミーシャも不機嫌そうに答える。
「そうですか。」
副会長は眼鏡を押さえて、語気が弱まる。
ミーシャが言ってる事が正論で、副会長には反論の余地がない。
「で、そいつは誰です?ミーシャ君は部外者を連れ込もうとしているようですが。」
副会長は矛先を、俺に変える。
「彼は転入者よ。これから編入手続きに行くところよ。」
俺がムッとして反論する前に、ミーシャが代弁してくれる。
「転入者?そんな話しは、生徒会には来ていませんけど。」
副会長は、冷たい目を俺に向ける。
こいつもドラゴンなのだろうか。
普通の人間なら、委縮しそうだ。
「生徒会に、何か関係あるのかしら?」
俺の疑問に、ミーシャが俺より早く言葉にする。
「ふ、このリバルド学園に転入する時は、生徒会への口添えが常なんですがね。」
副会長は邪悪な笑みを浮かべる。
「な、何よそれ。そんなの無かったでしょ。いつからそうなったのよ。」
ミーシャは少しうろたえる。
「ふ、公国関係者のミーシャ君には縁のない話しですが、どこの馬の骨とも分からない者を、この伝統あるリバルド学園に入れる訳にはいかないんですよ。」
副会長は冷たい眼差しで、俺とミーシャに圧をかけてくる。
ミーシャはいつからと聞いたのに、副会長はその問いに答えない。
おそらく元からそんな因習があって、どこぞの王国連邦の第三王女であるミーシャには、関係なかったのだろう。
つかこの副会長は、ミーシャの素性を知ってるのだろうか。
「それにミーシャ君。あなたも勝手に休学して、また復学するとは、この伝統あるリバルド学園の生徒としては、あるまじき行為ですよ。」
ミーシャにとばっちりが飛ぶ。
「そ、そんな事、あんたにどうこう言われる筋合いはないでしょ。私の復学は、ちゃんと学園に認められたのよ。」
「ふふ、」
ムキになって反論するミーシャに、副会長は小馬鹿にしたように目を閉じて首をふる。
「そ、それに彼は強いのよ。強ければ、問題ないはずよ!」
俺を巻き込んでの、更なる反論。
「ええ、彼が転入試験で好成績を納めた事は、聞いてます。だけど、我々生徒会としても、この目で見ないと判断つかないんですよ。」
副会長は圧をゆるめて、ニヤける。
「はあ、つまり俺の編入は認めないと、そう言う事ですか。」
ミーシャと副会長とのやりとりは、段々辟易してきた。
俺はこの世界で得られる知識に興味があり、この世界の教育にも興味を持った。
だけど知識だけなら、あの千尋峡谷のホームの書庫でも、事足りる。
とは言え、前世では体験出来なかった学園生活にも、興味はある。
「まあ、君の強さが証明されるのなら、別に構わないんですがね。」
「ま、まさか、それって。」
入学への意欲が薄れる俺を無視して、副会長とミーシャが会話を続ける。
「は、強さを証明って、めんどくせー事させんなよ。」
俺はこの場でドラゴンに戻って、こいつを殺したくなってきた。
「ちょっとサム。何考えてんのよ。あんたは私のボディガードでしょ。」
俺の考えを察したのか、ミーシャが慌てだす。
「何?おまえサムって言うのか。それにミーシャ君のボディガードとはな。」
副会長も含み笑いを隠しきれない。
俺の名前と、ミーシャのボディガード。
このふたつに、何か意味があるようだ。
「いや、俺はボディガードじゃない。下僕らしい。」
言っててバカらしくもあるが、一応訂正しておこう。
「ふふふ、なるほどなるほど。そう言う事ですか。」
副会長は何かに納得した様子で、不気味にニヤける。
「な、なによ、あんた。」
ミーシャも不気味がる。
「ミーシャ君の急な復学。それは彼の存在が有ればこそですね。ならば彼には、歓迎セレモニーを受けてもらう必要がありますね。」
「な、あの歓迎セレモニー?」
副会長とミーシャが、何やらもりあがる。
そんなふたりには悪いが、俺の入学したい気持ちも萎えてきた。




