第81話 因果応報
ミーシャに股間を潰されそうになった俺は、その痛みと引き換えに、色々な情報をもらった。
ミーシャが千尋峡谷に逃げこんだ理由。そして俺が入学金をボラれそうになってる事。
「そうそう、ここの門や塀って、防犯設備が整ってるから、よじ登ったりしない方がいいわよ。ま、転移魔法が使えるあんたには、関係ないかもだけど。」
「ふーん、」
ミーシャに言われて、俺は校門に視線を向ける。
なんの変てつもない門に見えるが、そんな防犯設備が備わっているのか。
そんな俺を尻目にミーシャはどこかに去る。
「あ、ちょっと、」
そんなミーシャを呼び止める。
「今晩泊まる所、探してたんだよ。」
今まで地面にうつぶしたままの俺は、のっそり立ち上がる。
「あらそーなの、それは大変ね。」
ミーシャは作り笑顔で答える。
「じゃあ行こっか。」
その作り笑顔の意味が分からんが、俺はミーシャをせかす。
「行くってどこへ?」
ミーシャは作り笑顔のまま、しらばっくれる。
「どこって、泊めてくれるんだろ?俺はおまえのナイト君なんだろ?」
当然ミーシャのナイト君なら、ミーシャにつきっきりでないと、その役目を果たせない。
俺もこれからの自由が束縛されるのは嫌だが、ミーシャには逆らえなくなってしまったから、仕方ない。
どご!
ミーシャは無言のまま、俺の股間を蹴り上げる。
それも、今まで蹴られた中でも、一番痛いぞ。
俺は股間を押さえたまま、うずくまる。
「み、ミーシャ、てめぇ、」
俺は回復魔法を使いながら、ミーシャをにらむ。
「あんたは私の下僕でしょ、なんで私の部屋に泊まろうとするのよ。」
ミーシャはゴミを見る様な目で、俺を見る。
「げ、ぼく、だと。ナイト君じゃなかったのかよ。」
ミーシャをにらむ目に、殺意がこもる。
「あんたの股間の潰し方なら、今のでコツをつかんだわ。今度は確実に潰して、あんたを殺せるわよ。」
「なんだと、クソったれ。」
ミーシャの言葉が、俺の心をへし折る。
回復魔法で肉体的な痛みは引いたはずなのに、精神的な痛みがまだ残ってる感じだ。
「あんた、因果応報って言葉知ってる?私を辱めた事、忘れちゃったの?」
ミーシャは冷たい目で俺を見つめてる。
「な、何言ってんだ。おまえの呪いを解いてやったのは、この俺だろ。因果応報って言うなら、おまえも報いを受けるぞ。」
「はあ、だからあんたの入学手続きに、つきあってあげるんじゃない。自分のしでかした事、ほんとに忘れてるのね。」
「な、なんの事だ。」
「呆れた。ほんとに覚えてないのね。」
ミーシャはうずくまる俺に近づき、俺の首に手をかける。
ガチん。
俺の首に、封じの首輪がはめられる。
ドラゴンに戻ったら、首がしまって死んでしまうという、あの首輪だ。
突然の出来事に、俺の理解が追いつかない。
呆然とミーシャを見つめる。
「あんたが受けてる因果応報ってのはね、最初に私と転移魔法を使った時の事よ。」
「あ、」
そう言えば股間を押しつけて、転移したんだっけ。
「あの時の屈辱は、忘れないわよ。別に密着しなくても転移出来たんだしね。」
ミーシャは冷たい目で俺をにらむ。
「で、こいつはなんでつけたんだ?」
ミーシャのいい分は分かった。けれど、この首輪の意味が分からない。
「あんたが逆上しないように。流石にドラゴンの股間は、私にも潰せないしね。」
「なるほど。まあ、俺にこいつは、意味ないんだけどな。」
こいつの外し方なら知ってる。数話前にもやった事だ。
俺は首輪の鍵穴に、魔素をこめる。
ビシ。
それなりの音をたてるが、首輪は外れない。
「残念。魔素の過剰供給で壊そうとしたみたいだけど、赤の魔素以外には耐性があるから、あんたの魔素くらいじゃ、壊せないわよ。」
ミーシャは勝ち誇る。
「それじゃあ、また明日ね。あんたの入学手続きには、ちゃんとつきあってあげるわ。」
ミーシャはこの場を去ろうとする。
「おいおい、こいつを外してくれないのかよ。」
「それはあんたにプレゼントするわ。案外似合ってるわよ。」
ミーシャはそのまま宿舎の方へ、消えて行った。
「そういや、ミーシャには見せてなかったっけ。」
ミーシャが居なくなった後で、俺はボソリとつぶやき、首輪に手をかける。
転移魔法の応用で、俺が手にした物体を手の届く範囲内に移動させる事が出来る。
「ふふふ、」
首輪を指先で回しながら、笑いがこみ上げてくる。
俺に対して、必死にマウントを取ろうとするミーシャ。
ミーシャの股間蹴りは脅威だが、それ以外なら、何も怖くない。
強がってるミーシャが、可愛らしく思えてくる。
そう言えば、ミーシャを守ってやるって、言ったような気がするな。
股間を潰されそうになって、ミーシャに対する愛情は薄れている。
因果応報とミーシャが言ってたけれど、自分の行いがどの様な結果になるのか、考えなかったのか。
とはいえ、ミーシャには千尋峡谷での恩がある。
千尋峡谷がどのような場所か、教えてくれたのはミーシャだ。
しばらくはミーシャのナイト君とやらを、やってやってもいいか。
俺はミーシャがくれた首輪を、降魔の腕輪にしまい、立ち上がる。
目の前の校門にはセキュリティがあって、俺が外に出るには、転移魔法を使うしかない。
俺はギルドの近くの路地裏に転移した。
ルル姉に宿を紹介してもらおう。
ども(・ω・)ノ
何気にストックが付きかけてます。
つか、週2更新に戻してから、ストックが増えてません。かっこ笑い
近じか、また週1更新になりそうです。
(´・ω・)




