第82話 受付嬢の私服姿
全寮制なリバルド学園の校門は、夜間は閉められるらしい。
ここの寮に住んでるヤツらは、夜間は外出出来ない事になる。
つまり人は居るのに、入学手続きはしてくれない。
なんてひどい学園だ。
ギルド近くの路地裏に転移した俺は、そのままギルドに向かう。
転移するところを誰にも見られたくないので、路地裏に転移した。
「ふにゃー!」
そんな俺の転移を、路地裏にいた猫に見られてしまった。
まあ野良猫に見られたところで、何の問題もない。
転移先に脅威となる気配は、感じなかったしな。
野良猫をなでてやろうと手を伸ばすと、野良猫は逃げ去った。
俺は少し悲しい気持ちになったが、気を取り直してギルドに向かう。
この時間でも、ギルドはやってるんだな。
どこぞの学園とは違うらしい。
そのギルドに入ったのだが、受け付けにルル姉は居なかった。
ナナさんも居なくて、代わりにふたりの女性が立っていた。
どうしたものかと思ってたら、ひとりの女性と目が合った。
ニコっと微笑む女性。
ナナさん達ほどではないが、この女性たちも普通にかわいい。
俺は意を決して、この女性に宿の事を聞く事にした。
「あらサム君じゃない。どうしたの、こんな時間に。」
受け付けに向かう俺に、誰かが声をかける。
声のした方に振り向くと、ひとりの女性がイートインスペースで食事中だった。
どこかで見た覚えのあるこの女性。
「私よ、私。」
女性が分からない俺に対して、女性がうったえる。
この声には、聞き覚えがあった。
「ナナさん、ですか?」
「もう、気づかなかったの?」
ギルドの制服ではなく、私服姿のナナさん。
制服の時のかわいらしさを残しつつ、大人びた美しさを感じさせる。
ナナさんの新たな一面を垣間見る。
「ふふ、サム君は私に会いに来たのよねー。」
ナナさんの向かいの席の女性が、会話に混じる。
ジャージ姿でずぼらさを全面に押し出し、美への執着は微塵もありませんと主張するも、素の美しさは隠しきれないこの女性。
「る、ルルさん?」
名前を言い当てられ、ニヤりとするルル姉。
天使の微笑とはほど遠い、素の笑顔。
つか、あの天使の微笑が作り笑顔だったとは、衝撃的すぎる。
意外すぎるというか、残念すぎるぞ、ルル姉!
ここは大人の女性としての魅力を爆発させる所だろ!
「ああもう、サム君は私が先に目をつけたのに、なんでルル姉が手ぇ出してんのよ!」
俺がルル姉に会いに来たと聞いて、ナナさんが怒りだす。
ルル姉はだらしない笑顔で答える。
「えと、俺は今晩の宿を紹介してもらおうと、思いまして、」
それは別に、ルル姉から聞かなくてもいいわけで、俺はナナさんをなだめる。
今のルル姉は、イタズラにナナさんの神経を逆撫でるだけだ。
職務中のルル姉とは、別人すぎるぞ。
「え、宿?」
ナナさんはキョトンとその単語を口にする。
しばらくして、ハッとルル姉に視線を向ける。
またまただらしない笑顔で答えるルル姉。
「こんな時間に、やってる訳ないもんねー。」
「ま、まさか、ルル姉、」
ナナさんには、思い当たる事があった。
いつもなら、就業時間後はまっすぐ帰るふたり。
それなのに今日に限って、ここで食事を済ませましょうと言ったルル姉。
ドラゴンであるふたりにとっても、夜道は危険。
ここで食事を済ませるって事は、今晩はこのギルドに宿泊する事になる。
ギルド職員の割引料金が適用されるけど、決して安くはない出費。
それでもここに留まるのは、こうやってサム君が訪ねてくるのが分かってたからだ。
「もう、ルル姉ったら。」
ナナさんは何かを納得するが、俺には分からないぞ。
ルル姉は相変わらず、締まりのない笑顔で答えるだけだし。
「宿なら、ここに泊まるといいわ。ちょっと割高だけど、サム君なら払えるわよ。」
「えと、割高ってどのくらい?」
「ひと晩一万クレカよ。」
ぴしっと人差し指を立てるナナさん。
この一万クレカが高いのか安いのか、相場を知らない俺には、判断がつかない。
俺の手持ちがおよそ二百七十万クレカ。
入学金を払った後でも、二百五十日は泊まれる計算か。
討伐依頼をこなして、解体も頼めば、それなりの金額はゲット出来る。
「まあ、ナナさんのお勧めなら、泊まろうかな。」
他の宿を探すのも面倒だし、ここに泊まる事にした。
もっともこの時間に、客を受け入れる宿は存在しないので、ここしか選択肢はないのだが。
「きゃはー、やったー。じゃあサム君も食べなさいよ。テルアちゃーん。」
ナナさんは隣りの席に俺を座らせると、ウエイトレスのテルアさんを呼びつける。
俺たち三人のやりとりを、嫌そうな目で見ていたテルアさん。
呼ばれたので仕方なく、俺を汚物を見る目で近づいてくる。
「テルアちゃん、サム君にも私と同じ物をお願いするわ。」
「げ、こいつにもですか?」
俺の代わりに注文してくれるナナさん。
テルアさんは露骨に嫌がる。
これは変な物を混ぜられるかもしれんぞ。
「ええ、私と同じ物をお願いするわ。」
ナナさんは鋼鉄の笑顔で、注文を繰り返す。
「ふふ、テルアさんもプロですもんね。同じ物くらい、訳ないでしょ。」
ルル姉もニタリと圧をかける。
「な、なんで私がこいつなんかのために。こんな下賤なあに‥」
「テルアさん!」
嫌がるテルアさんに、ルル姉がセリフを挟む。
「あなたもギルド職員なら、滅多な事を口走らないで。」
今までずぼらさを全面に押し出してたルル姉が、職務中に見せる毅然とした態度をとる。
「わ、分かりました。」
ルル姉の圧に、テルアさんはしぶしぶ納得する。
「なんで私が、こんなヤツのために、」
テルアさんはぶつくさ言いながら、バックヤードへ姿を消した。
ども(・ω・)ノ
やばいよ、週二更新に増やしてから、一話分のストックも増えてないぉ。
(´・ω・)
また週一更新に戻るかも。
つか、すでに80話超えたけど、終わりが見えない。
漠然と思い描いてる事を書ききったら、今までの作品の倍、400話はいきそう。
その今までの作品って、毎日更新の時期があったんだけど、この作品にはそれがない。
うーん、どうしよ。
(´・ω・)




