第79話 股間攻め再び
ルル姉と別れた俺は、リバルド学園に向かう。
その途中、ルル姉のファンどもに取り囲まれる。
そいつらの頭には、ルル姉がギルドの受付嬢だという事が、入ってなかった。
リバルド学園編前に、なんて無駄な事に付きあわないといかんのか。
「あれ?」
そんな訳でリバルド学園に着いたのだが、なぜか門が閉められている。
学校の門って、飾りじゃないのか?
実際に閉めるなんて、おかしいだろ。
俺は閉められた校門を、ガチャガチャしてみる。
このまま壊してもいいが、弁償させられたりしたら、厄介だ。
ここは素直に、転移魔法を使うべきだろう。
転移魔法で、校門の向こうに移動。
ほんの一歩の距離で転移魔法を使う事になるとは、なんか納得いかない。
校門横の小屋は真っ暗で、誰もいない。
あのおっさん、仕事放棄か?
まあとりあえず、校舎に行って入学金を納めてくるか。
「どこ行ってたのよ。」
歩きだす俺に、誰かが声をかける。
俺は歩みをとめ、声のした方を振り返る。
「あ、ミーシャ。」
小屋の壁に寄りかかり、腕組みしていた。
その目は少し、涙目になっていた。
「私、言ったよね?また後でねって、言ったよね!」
ミーシャはギロりとにらんでくる。
「いや言ったけどさ。」
それは、待ち合わせ的な意味で言ったのか?
俺が入学したら会いましょう的な意味じゃないのか?
「で、どこほっつき歩いてたのよ!私との約束、すっぽかして!」
ミーシャの声に、涙がまじる。
「えと、入学金必要だったからさ、」
「入学金?そんなの私が払ってやるわよ!」
俺が言いきる前に、ミーシャがセリフをかぶせてきた。
「はあ?なんでだよ。そこまでされる筋合いねーだろ!」
俺も思わず叫び返す。
「あるでしょ!あんたは私の護衛でここに入学するんだから!」
「おまえの護衛って、俺はここに興味があったから、来ただけだろ!」
「な、何よ。ここだって安全とは言いがたいんだからね。」
ミーシャの発言が弱気になる。
「あの刺客なら、俺が倒してきたぜ。」
俺はミーシャの不安を払拭してやる。
「え、マジ?」
「ああ、幻想旅団を討伐してくる時に邪魔してきたから、倒した。」
「げ、幻想旅団って、あの幻想旅団?」
「あのって、どの幻想旅団だよ。」
「ど、どのって、あ、あんたが強いのは知ってたけど、まさか幻想旅団を倒してきちゃうとはね。」
驚きの表情を浮かべたミーシャも、すぐに余裕の表情になる。
「で、報酬もらったから、入学金を納めにきたんだよ。」
俺はついでに、ここに来た理由を話す。
「こんな時間に?」
ミーシャはなぜか驚く。
「こんな時間って、どう言う意味だ?俺は三日以内に納めろって言われたから、今来ただけだが?」
「あんた、本気で言ってるの?」
なぜかミーシャに呆れられる。
「なんだと、こらー!」
ドン!
俺はミーシャの右肩越しに、左手でドンと壁を叩く。
俺をナメてるミーシャに対しての威嚇。
俺が考えうる限りでは、これが最高の脅しだ。
「おまえ、俺をナメてるだろ。」
俺は至近距離からミーシャをにらむ。
「ナメてる?私はナメてなんかないわ。馬鹿にしてるだけよ。」
ミーシャもキリっとにらみ返してくる。
「なんだと、」
俺は左手を壁につけたまま、ミーシャをにらみつけて、右手をゆっくり振り上げる。
そのままミーシャの顔面に叩き込めるように、狙いをつける。
ミーシャの顔に僅かだが、焦りの表情が浮かぶ。
それを見て、俺の溜飲も少しはさがる。
「で、俺のどこが馬鹿なんだ?」
気持ちに余裕が出てきた俺は、改めて聞いてみる。
「そ、れは、」
と言ったきり、ミーシャは口ごもる。
俺の機嫌を損ねたら、俺の右拳が顔面に叩き込まれる。
それが分かってるから何も言えないのだが、そんな事、俺に分かる訳がない。
「なんか言えよ。」
俺はミーシャをにらみつける。
怯えの表情が強くなるミーシャだが、至近距離で見るミーシャは、やっぱりかわいすぎる。
俺の唇も、自然とミーシャの唇に引き寄せられる。
「ふん!」
どご!
「!」
ミーシャが俺の股間に膝蹴りを叩き込む!
そのまま俺を、押しのける。
よろめく俺に、アッパーカットを叩き込む!
そのまま仰向けにダウンする俺は、脳を揺らされたため、うまく身体を動かす事が出来ない!
どご!
ダウンした俺の股間に、追撃の蹴りが叩き込まれる!
「私、言ったよね。次は潰すって。」
ミーシャは数発の蹴りを、俺の股間に叩き込む。
以前受けたソレとは違い、明らかに殺意が増している!
俺は回復魔法を使い、脳を揺らされたダメージを回復。
両手で股間をガードする。
そのまま回復魔法を使い続け、股間のダメージも回復させるのだが、ミーシャはお構いなしに股間を蹴り込む!
「や、やめろミーシャ!」
俺の呼びかけに、ミーシャは強烈な股間蹴りで応える。
こうなったら転移魔法で逃げるしかないのだが、転移魔法に集中出来ない。
と思ってたら、ミーシャがおもむろに、俺の左脚をつかむ。
「これで転移魔法は使えない、よね!」
ミーシャは俺の左脚に、右手の爪先をくいこませる!
「て、てめえ、」
俺の左脚を持ってもなお、ミーシャの股間蹴りは止まらない。
バランス的に体重が乗らなくなったけど、俺も回復魔法をかけ続けないと、いずれ潰される。
転移魔法を使うには、全身を魔素でコーティングするのだが、ミーシャがくいこませた爪先と、俺の身体の境界線をはっきりさせないといけない。
普段ならともかく、股間を蹴られてる今、その調整は無理だ。
「ご、ごめんなさい!」
最早俺に出来る事は、ミーシャに許しをこう事だけだ。
「ごめんなさい?」
ミーシャは復唱して、蹴りをとめる。
「何に対して、謝ってるの?」
ミーシャは右足で股間を踏んづける。
そして邪悪な笑みを俺に向ける。
「ごめんなさい。」
俺は震えながら、それしか言えなかった。
「ふーん、だったらこれからは、私の言う事は何でも聞く。いいわね?」
「は、はい。」
心が折れかけてる俺は、その無理難題を受入れるしかなかった。
ミーシャはおもむろに、俺の右脚も持ち上げる。
そして股間を踏みつける右足から、体重を抜く。
「な、」
「手をどけなさい。」
「え、」
この状況で股間のガードを解いたら、どうなるのか。
俺は震えながら首をふる。
「私の言う事は、何でも聞くんでしょ?」
ミーシャは冷たい目で俺を見つめる。
俺はゆっくり両手をどける。
ミーシャは踏んづけていた右足に体重を乗せる。
そのまま右足で軽くジャンプすると、俺の股間に両足で飛び乗った。
「ーーー!」
声にならない俺の悲鳴がこだまする。
ども(・ω・)ノ
今回の内容に捕捉するべきか悩みましたが、しておきます。
この作品世界は畜生道という事で、登場人物は誰もが短気です。
温厚そうに見えても、それは自分の思い通りにいく範疇に限ります。
その範疇を越えれば、キレやすくなります。
今後、その様な展開が続きます。
その時に捕捉するべきかとも思いますが、とりあえず今しときました。
今回は変なルビ振りが無くて、ちと楽だったぜ。
(´・ω・)




