表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/272

第72話 ナナちゃんスペシャルの秘密

 この世の物とは思えない、最高の料理。

 それがナナちゃんスペシャル。

 だがこの最高の料理を、クソまずいと雑魚い冒険者がほざきやがった!




「さあ早く!出て行きなさい!」

 ルル姉は両手をパンパン叩く。

 すごすごと追い出される冒険者たち。

 ギルド内には、俺とルル姉、そしてナナさんだけになる。


「いいの?ルル姉。お仕事に支障をきたすよ?」

 ナナさんが静かにたずねる。

「いいのよ。どうせアイツら、仕事しに来てる訳でもないでしょ。」

「でも、ほら、飲食だってしてくれるじゃん。」

 ナナさんはちらりと俺に視線を向ける。

 うーん、俺はなんで残ったんだろ。

 ルル姉の言う所の、出て行く冒険者どもに、俺は含まれていなかった。

 食後の至福のひと時を堪能してたら、出ていくタイミングを逸してしまった。

 ルル姉とナナさんとの、どこかトゲのあるこの場の雰囲気も、俺の居心地を悪くしている。


「はあ、飲食ねぇ。」

 ルル姉も俺に視線を向ける。

 今の状況で、俺を巻き込むのはやめてほしい所だ。

「そもそもナナさん、パープルトリゲランを使うのはやめなさいって、前から言ってるよね。」

「だって私、これしか作れないもん。」


 ん?

 俺の食べた料理に、何か問題でもある様な話しをしてないか?

「サム君も、その料理だけはやめなさい。」

 ルル姉の矛先が、俺にも飛び火する。

「ちょ、ルル姉、ひどいよ!」

 俺より先に、ナナさんが反論する。

「サム君をドラゴンだって、バラしたいの?」

 ルル姉もキリっと反論する。

「そ、それは、」

 ナナさんは口ごもるが、ちょっと待て。

「俺がドラゴンだってバレるって、どう言う事です?」


「トリゲランはね、魔素を活性化させる食材なのよ。」

「ああ、だから俺の魔素も回復したんすね。」

 だけど、それがなぜドラゴンばれにつながるのだろう?


「ふふ、普通の人間には耐えられないほどの、活性化作用があるのよ。これに耐えられるのは、動物変化(アニマルチェンジャー)だけ。それも、ナナさんの作る料理なら、上位の動物変化(アニマルチェンジャー)しか耐えられない。」

 ルル姉はニヤりとほくそ笑む。

「え?」

 俺は思わず視線をナナさんに向ける。

 ナナさんはしらばっくれる様に、視線をそらす。


「トリゲランなんてレア食材。世間一般には知られてはいない。だけど、分かる人が見れば、すぐに分かる。サム君がドラゴンだってね。」

「えー、じゃあ誰も見てない所でしか、食べちゃダメなの?」

 ルル姉の言う事をそのまま解釈すれば、そうなる。


「なんでそうなるのかな。」

 単純に、もう食べるなと言いたいルル姉は、どこか怒りを覚えたらしく、ぷるぷる震えてる。


「そうか、ナナさんとふたりっきりの時しか、食べれないのか。」

 ナナさんの周りには、いつも冒険者どもがムラがっている。

 つまり、ナナさんの料理を食べる事は、って、あれ?

 あの料理、ルル姉も作れるんじゃない?

 素材の名前を知ってる事が、イコール作れるって事になるにかは微妙だが、作れる可能性は高いと思う。

 ルル姉ならいつも暇そうだし、今度頼んでみるか。


「そ、そんな。私とふたりきりだなんて。」

 ナナさんはなぜか頬を赤らめ、両手で頬を隠して、軽くうつむく。

「さ、サム君!あなたなんて事言うの!」

 ルル姉も顔を真っ赤にして、なぜか怒ってる。

「えと、ナナちゃんスペシャルをまた食べたいなって。」

 その事に対する、このふたりの反応は、なんなのだ?


「ごまかさないで!私の妹に手をだしたら、許さないから。」

 ルル姉は冷たい瞳で、俺をにらむ。

 気が弱いヤツなら、これだけで昇天しそうだ。

「え、え、手ぇ出すってなんですか、出すなら口ですよね。」

 ルル姉の凄みに、俺もビビる。ビビって何を言ってるのか分からなくなる。

 要は、料理を食べるのは手づかみではなく、お口で食べるって事を言いたかった。

 って、何言ってんだ俺。


「きゃ。」

 ナナさんは両手で顔をかくす。

「あ、ん、た、ね、え!」

 ルル姉は全身を竜化させていく。

 身体の大きさは変えず、服も破らない。

 この状況を限定しての竜化から、ルル姉は相当な実力者だと分かる。


「ちょ、ルルさん、落ち着いて!」

 ルル姉が何に怒ってるのか分からないが、ここでの戦闘は回避したい。

 ルル姉ひとりでも厄介だが、さらにナナさんも敵に回したら、俺に勝ち目はない。

 それこそふたりきりになって、ひとりずつ相手にするしか、この姉妹の攻略法は見当たらない。


 がらん。


 俺の意に反して一触即発なこの瞬間。ギルドの扉が開かれる。

 ルル姉も瞬時に竜化を解き、人間体に戻る。


「あれー、みんな追い出しちゃって、どーしたんですかー。」

 入ってきたのは、このギルドのウエイトレスさんだった。

 俺も数話前にチラッと見ただけなので、名前が出てこない。


「何でもないわ、テルアさん。」

 ルル姉はいつもの落ち着いた雰囲気を取り戻す。

「何でもないって、ははーん、そう言う事ですか。」

 テルアさんとやらは、テーブルに残されたナナちゃんスペシャルのお皿と、俺たち三人を見て、事情を察したようだ。

 そして、ニヤけた顔を俺に向ける。



「ちょうどあなたの動物変化(アニマルチェンジャー)疑惑が出ちゃったのよね。私と一緒に警備隊本部まで来てくれるかしら。」

ども(・ω・)ノ

今回のテルアさん。

ずたぼろ状態での登場予定でしたが、書き忘れました。

そのずたぼろになるには訳あって、今後その訳を展開するのですが、

その展開も挟めなくなって、この書き忘れが正解になっちゃいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=44752552&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ