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ドラゴン転生〜畜生道に堕ちても最強種なら問題ない  作者: 堕天の翼のあさぼらけ


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第65話 ドラゴン族以上の種族の存在

 討伐した幻想旅団の面々を解体していくナナさん。

 俺と会話しながらも、その精密度と速度は衰えない。

 ターズンドラゴンであるナナさんの実力の片鱗が、垣間見える。




 素材を詰めたタッパーは既に百個をこえ、壁ぎわに山積みにされていく。

「結構取れるもんですね、素材って。」

 壁一面が、タッパーの山で埋まる。

「全くよ。討伐対象物って、もっとぐっちゃぐちゃになってるものよ。なのにサム君がキレイに殺してくれるから、ほんと、やりがいあるわ。」

 疲れた口ぶりながら、ナナさんの解体精度は衰える事なく、ライオンを解体していく。


「あは、すいません。回復魔法でもかけましょうか?」

 俺はナナさんに向かって右手を伸ばす。

 それと同時に、ナナさんの手が止まる。

「あれ、ナナさん?」

 俺の手もピタリと止まる。


「あのね、サム君。他人に回復魔法は使わないほうがいいわよ。」

 ナナさんの表情は、怒っている。

 今までは普通の笑顔で接していた。

 前世で女性と話す事なく死んだ俺は、ミーシャという免疫がなければ、そのままストーカー化してたかもしれないほど、親しげだったのに。


「な、なんで?」

 俺はナナさんの怒りの表情に気圧され、それだけ言うのが精一杯だった。

 確かこの世界では、他人に回復魔法を使う事はないらしい。

 多分その事を言ってると思うのだが、なぜ怒るのかが分からない。


「サム君の魔素は無色でしょ。」

 この世界の魔法は基本、赤青緑の三色に分類される。

 この三色の混ざり合いで、色々な魔法が生まれるのだが、基本は三色の単体使用。

 この三色の他に、例外的に金と無色がある。

 俺の色は無色だった。


「無色の回復魔法はね、自分の魔素を相手の魔素に循環させて、自然治癒力を高めるものなのよ。」

「そ、そうですか。」

 ナナさんが説明してくれるが、俺はよく分からないで使ってる。

 そしてこの説明が、なぜナナさんの怒りにつながるのかも、分からない。


「つまり相手がその気なら、サム君の状態が丸分かりよ。」

「う、」

 ナナさんが俺に向ける瞳の奥に、押し隠してる殺意のような物を感じる。

「サム君の状態が詳しく分かっちゃったら、私はあなたを解体したい衝動を、抑えられないわ。」

 と言ってニヤけるナナさんに、俺はゾッとする。


 そう、この世界はあくまで畜生道。

 人間に変化(へんげ)してる事で理性を保てるが、それには限界がある。

 俺も両腕の部分竜化なんかやってたら、ドラゴンの本能を抑えきれず、ストーカー化する以前にナナさんを襲ってるだろう。

 その場合、普通に返り討ちにあうだけなのだが。


 俺はビビって右手を引っこめる。

「ふふ、それが正解よ。他人に回復魔法を使うなら、青系の回復魔法にしなさい。」

 ナナさんはライオンの解体を終わらせる。

 タッパ分け、テーブルの洗浄が終わり、いよいよラストの白い虎を出す。


 白い虎を前に、ナナさんの手が止まる。

「うーん、」

 ナナさんは両腕の部分竜化を解き、腕組みしてうなる。

 ナナさんさんの豊満なバストが強調される。

 少し前にナナさんの秘めた殺意を感じ取らなければ、襲いかかってただろう。


「あ、あのナナさん?どうかしたんですか?」

 俺はナナさんの胸をガン見しながら、たずねる。

「うーん、ちょっとね。」

 ナナさんは俺の視線に気づいているのに、わざと胸を強調してくる。

 俺の考えてる事などお見通しな上で、俺を挑発してくる。

 そう、ナナさんは俺より強い。俺はナナさんには勝てない。


 ナナさんの挑発に、俺は目を逸らし、それを誤魔化すためにうつむいて額をかく。

 そんな俺を無視して、何事もなかったかの様にナナさんは話しだす。


「ふふ、流石に神獣白虎をサバくのは初めてなのよね。」

「神獣?こいつが?」

 俺は思わず白い虎を見る。

「あら、なんだと思ってたの?」

「いや、普通に白い虎かと。アルビノの。」

「あはは、アルビノごときが、ドラゴンとまともに戦えるわけないじゃない。ドラゴン族とタメはれるのは、神獣族か聖獣族くらいよ。」

「そ、そうなんですか。って、白虎ってあの白虎ですか?」

「あの白虎って、どの白虎よ。」

「えと、西方の守護神、ですよね。」

「あら、よく知ってるじゃない。白虎の他に、朱雀、玄武、青龍。この四つの種族が神界の守護神獣と呼ばれる種族。私たちドラゴン族以上の力を持っているわ。」

「ま、マジですか。」

「ええ、神獣族はその名の通り神に連なる種族。だから下界の者たちとは基本的に、関わりを持たない。奴らがその気になれば、私たちドラゴン族の殲滅も可能よ。」

「そんな凄いヤツだったんですね、こいつ。」

 俺は改めて白い虎を見る。

 こいつが他の団員と違い魔法を使えたのは、神獣白虎だったからなのか。


「ふふ、まさか。」

 俺がリスペクトの気持ちを抱くこの白虎を、ナナさんは鼻で笑う。

 俺は目をつぶり、首をふる。ナナさんの言わんとする事も、分かるからだ。

「こいつは神界から下天して、幻想旅団なんて言う盗賊に身を落としたのよ。神獣白虎としては、たいした事ない個体よ。」

「でも、こいつには何となく同情しますよ。俺も千尋峡谷に落とされましたからね。」

「あら、サム君ははい上がってきたじゃない。それに千尋峡谷の餌を独占する事もなかった。その気になれば、それも可能なのに。盗賊に身を落としたこいつとは違うでしょ。」

「それもそうですけれど、」

 と言って俺は口ごもる。


 俺が千尋峡谷を生き抜けたのは、前世の記憶を持ち、どんな病気にも打ち勝つ強靭な肉体で生まれたからだ。それに大気中の魔素の流れをよむ事が出来た。

 これらがなければ、俺はすでにこの世にはいない。



「とりあえずこいつは、白虎の中でもたいした個体ではないのは確か。私も気負わず解体するわ。」

 ナナさんは気持ちの整理をして、白い虎、白虎の解体を始める。

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