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2-4




 落雷しながら雲が現れ始め、ターナーは全身から嫌な汗が出るのを感じた。


「杞憂で終わらなかったな…」

「おいまずいんじゃないかこれ」

 ギルバートも本能的に危機を察知する。


 空間移動魔法でデリックがいなくなると、ターナーとギルバートもその後を追った。


「っゔ…」

「なんだ、これ…」


 まるでデリックの周りを竜巻が渦巻いているようだった。吸い込まれそうな強風が様々な角度から吹き荒れ、身動きがとれない。


 パリンッ!!


 頭上で何かが割れるような激しい音がすると、暗雲は学園の外にまで伸びていった。



「学園長が張ったバリアが、こうも簡単に解かれるなんて…!」

「嘘だろ!どこに逃げたらいいんだよ!」


 学園長の防御魔法が…、解かれた…!?


 学園を包むようにあったはずのバリアは、割れてなくなっていた。


 この天気…。

 まさか、神の咆哮?



 いや、しかしあれは自然災害だったはず。この嵐はデリックが呼び寄せたように見えたが…。


 焦燥に駆られながらターナーは一つの結論に至った。

 …まさか、自然災害じゃなかったのか…?



 ピッシャーン!!ととてつもない音と共に、光が走った。


 焼け焦げたような匂いが漂い、袖で鼻を覆った。

 デリックのそばで馬車は竜巻でバラバラに散らばり、雷が当たった騎士らしき者たちが黒焦げになって竜巻に巻き込まれていく。


「きゃあーー!!!!」

「逃げるぞ!!」

「殺される!!」



 歯止めの効かないデリックから逃れようと、生徒たちは弾かれたように駆け出した。


 ギルバートは茫然と立ち尽くした。ターナーもまた、この災いを止める方法など分からず手の汗ごとぐっと握りしめる。


「ギルバート、同時攻撃だ」

「効くのか?」

「やってみるしかないだろ」


 同時に水と風で攻撃してみるが、弾き返される。

 そしてあろうことが炎と雷が凄まじい勢いで迫ってきて、防御魔法でバリアを張ったが吹き飛ばされてしまった。


「っく…」

「とんでもねえな……」



 もしかしたらこれは、誰にも止められないのかもしれないとターナーが直感的にそう思った。その時だった。

 目の前が輝いたと思うと、学園長と見知らぬ女性が現れた。


「っえ…!?きゃっ…」


 突風が吹き荒れ、女性は立っているのさえやっとなようだった。


 魔力を全く感じない。

 学園長は何でこんな子をこんなところに…。


「学園長!」

「えっ、そのレディは!?」


 ターナーやギルバートの言葉にも答えなかった学園長は、唯一、その女性にこう言った。



「あの子を、救ってくれ」


 魔力のないただの女性に何もできるはずがない。

 そう思ったのは女性も同じだったようで、慌てふためいていた。

 


「いきなりどういうことですか!無理ですよ。私は魔力もないし…」

「君ならできる。いや、君にしかできぬのだ」


 俺たちの魔力でも太刀打ちできなかったのに、魔力なしでどうするというのか。



 そんな疑問もすぐに解けた。


 学園長が彼女の手をデリックの肩に乗せると、一瞬、嵐のようなそれが和らいだ。


 …魔力もなしに、どうやって…。

 何故かと考えを巡らせながら彼女の髪色が目に止まった。

 ブロンドにさらに黄色に加えたような、柔らかなハニーブロンドだった。



 まさか。


 その人は死んだはずでは……?



 デリックは無事なのか。

 あんな暴走を起こしておいて、帰ってこれるのか。


 ハラハラとしながら見守っていると、次第に雨風が弱まっていく。

 

「空が……」


 二人から光の柱が昇ると、そこから光が広がり、渦巻いていた雲がかき消されていく。



 完全に晴れ空になると、二人はぷつりと糸が切れたように倒れ落ちた。


「っデリック…!」


 カーライルは二人を腕で支える。


 駆け寄った二人はすやすやと眠る青年に「まじか…」とこぼした。



「デリックを部屋へ運びなさい」

「っ学園長!そのお嬢さんは……一体……」


 ターナーの言葉にカーライルは首を振った。



「今見たものは全て、他言無用だ」



 他言無用だと?


 彼女がデリックの探し人かもしれないのに?




 デリックの頬には雨に打たれたせいか涙の流れたような痕が残っていた。

 寮のベッドに寝かせたギルバートは、「なあ…」とターナーに切り出す。



「もしかして、あのレディ……」

「ああ。デリックがいつもブロンドばかり見ていた理由かもしれない」

「禁忌に手を出してるくらいだから、てっきり死んでるとばかり思ってたが…」

「それだけじゃない。

あれは…神の咆哮じゃないか?」

「…そういえば、デリックが魔塔の後継者として連れて来られたのも、エストランテで神の咆哮があった直後だよな」



 二人の不安を他所に、デリックはすやすやと寝息を立てていた。

 二人がデリックの寝顔を見るのは初めての事だった。


 本人曰く僅かな風音や足音で目が覚めてしまうという。二人の前では目を閉じていることもあったが、それでも眠っているわけではなかった。


「珍しいな、こんなに安らかに眠ってるなんて」

「そうだな」


 

 その顔は、気の抜けたように穏やかなものだった。



今回は友人のターナー目線でした!

野蛮なデリックにも二人の友人はできたようです。

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