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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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98/201

気になるお店には入らずに済ましてしまうものなのか否か

 つけ麺屋の中は、少し狭くて暗い。

 店内で窮屈な感じは否めないけど、お店自体は洒落ているのと同時に清潔でとても居心地がいい。

 食券をカウンターにおいて注文をする。

 チャーシュー丼は食べきる自信はないから頼まなかった。

 うなぎの寝床のような店内なので、混んでいる時はゆっくりは食べることはできないだろうから、ランチの時間をずらしてやってきたのは正解だろう。


 あたしは奥の席に座った。

 身体の小さいあたしにはこのぐらいの狭さは居心地がいい。

 頼んだつけ麺がやってくるまでの間、読みかけの本に目を落とす。


 今回読んでいる話は、ファンタジー。

 腕はそこそこ立つけど、冒険者という名の『何でも屋』だけでは食べていけないと日々感じている女主人公(ヒロイン)は、宿の厨房で料理人になる修行をしようと本気で思っているのだが、仕事があるうちは冒険者と料理人の二足の草鞋(わらじ)を履いている。

 女主人公(ヒロイン)が何故か関西弁なのと、妹が賢くて美人という設定が少し面白い。

 実は前に読んでいた赤いドラゴンのお話と同じ作者の小説なのだけど、こちらのファンタジーは思い切り遊びで書いているようでちょっとおもしろい。ドタバタ劇は非日常なので、読んでいるこちらは何も考えることなく読むことができるのだ。


 あたしが本を開き、女主人公(ヒロイン)がバジリスクという怪物と対峙するところまで読んだところで不意に声がかかる。


『つけ麺、おまちどうさま』


 カウンターごしにつけ麺がやってくる。

 あたしは読みかけの本にそっとしおりを挟んで端に寄せてから、カウンターに置かれたつけ麺を目の前に移動させた。

 実に美味しそうだ。


 うどんのように太い麺と付け合わせの野菜は小松菜。そして大きなメンマがのっている。

 つけ汁の方には大きくて分厚く切られたチャーシューが入っている。


 食べてみると、うどんのように太い麺にはやはりボリュームがあった。

 ミニチャーシュー丼は我慢しておいて本当に良かった。

 ただつけ汁に入っていたチャーシューがものすごく美味しかったので、チャーシュー丼はさぞ美味しかったのだろうな……とも思う。

 残念ながら、つけ麺だけであたしのお腹はふくれてしまい、他の物が胃に入る余地は全くなくなった。

 チャーシュー丼はミニつけ麺がメニューにあるようになったら食べることにしよう。

 それはいつになることやら……。


 まあ……無理して食べて太るよりはましだけど。

 それにしても……ちょっとお腹が苦しい。


 これは少し歩こうか。

 もともと食べたら少し大船の街を歩く予定だったからちょうどいい。


 つけ麺のお店から1本内側の細い道に入ると商店街がある。

 どこにも商店街の名前は書いていないのだけど、ここは『仲通り商店街』という名前らしい。

 ここには鮮魚や野菜がたくさん売っている。

 そして肉屋さんもあるから、バーベキューするときはここに来るに限る。


 少し歩くとお洒落なブティックがあったり、本屋があったり……。

 ブティックを覗いて、本屋の前は素通り。

 たまにはそんな日があってもいい。


 ふと気が付くと、目の前には汁なしタンタンメンの大きな看板があるお店があった。


 あ……

 そういえば……


 このお店。

 前回に大船を散歩した時に見つけたお店だった。

 全体的にこじんまりとした小さなお店で、座席数もそんなになくカウンターのみ。

 店内を外からのぞくとやっぱり照明は間接照明で少し暗めだけど、黒を基調としたカウンター席と厨房はとてもお洒落な空間を演出している。

 外には汁なしタンタンメンの看板がある。


 とてもじゃないけど汁なしタンタンメンを出すお店のようには見えない。


 行きたいと思いつつ今回も行かなかったなあ……

 う――ん……


 ほとんど無意識に軽く自分の頭をコンコンと叩いてみる……

 壁がないと頭を小突くのか……

 まあ、これなら誰にも迷惑かけないからいいのだけど。


 それにしても気になるお店に行く次の機会はなぜに奪われてしまうのだろうか。

 入ろう入ろうと思いつつ、何故かいつもと同じ店に行ってしまう。


 今度こそ、こっちの店にも行ってみたい。


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