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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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54/201

大人には昼寝が必要なのか否か

 ランチが終わった後の昼からの業務は眠くて仕方ない。


 相談室で一人で仕事をしていると、パソコンの前でうとうとしてしまうことも少なくない。

 もう以前のように嫌な夢を見ることはなくなったけど……それにしてもランチを食べた後の眠さは筆舌(ひつぜつ)しがたい。血糖値が上がるから眠くなるんだという話を総務の二階堂さんから聞いたのだけど、どうあれ眠いのはなんとかしてほしい。


『お昼寝の時間とか作ってほしいんですよね……』


 こんなくだらない話をしに、わざわざ業務中に相談室の扉を叩くのは、うちの会社でも二階堂さんぐらいなものである。いくらうちの会社がいろんな意味で進んだ考え方を持っているとは言え、昼寝はダメだろう。

 相談室は社員のどんな相談でも基本的には受け付けているから、あたしは眠い頭に喝を入れながら話を聞く。欠伸(あくび)をしてしまわないようにしなければならないので、あたしはすぐさま熱いコーヒーを二人分入れる。

 もうびっくりするぐらい濃くして飲むのだ。

 濃いコーヒーは苦いが、慣れると美味しい。

 味も旨みも段違いに違うが、エスプレッソだと思って飲めばそれなりに飲めなくもないし、あまりに苦いので眠気も吹き飛ぶ。


『お昼寝の時間?』

『そうです。保育園とか幼稚園とかでは当たり前のようにあるじゃないですか』

『いや……あるにはあるけど……相手は子供だからね……』

『違うんです! 子供にはいらないと思いません? お昼寝の時間……』


 すごい熱量で話す二階堂さんにあたしは少し引き気味で話を聞く。

 彼女は若干思い込みの強いところがある。なんだろ……夢中になると周りが見えないというか……。


 それにしても……本当に子供にお昼寝の時間はいらないのかしら?


 子供のことを考えると胸がチクリと痛むのが分かる。

 あの時の子供が無事に生まれていたらもう6歳だ。

 こんなことを考えてしまうのは少しトラウマになっているのだろう。これは……一生つきまとうあたしのトラウマなのかもしれない。


『子供にはお昼寝がいらないの? なんで??』

『だってあんなに元気なんですよ。元気の塊じゃないですか。お昼寝なんかしちゃうと夜寝ないですよ』

『そ……そうなの?』


 てゆうか……なんでそんなに詳しいの?

 二階堂さん、独身だよね?


『そうですよ。うちのアパートのお隣さんに4歳の女の子がいるんですけどね……』


 なるほど。身近に子供がいるのね。


『保育園で昼寝しちゃうとなかなか寝ないってママが言ってたんですよ』


 保育園や幼稚園でのお昼寝は子供の体力を勘案したものであると聞いたことがある。大人と違って子供は自分の体力の限界を図れない。だから疲れていることに自覚がなく、限界まで遊んでしまうので、無理やりお昼寝させるのだろう。

 お昼寝して夜寝ないというのはその子に体力がある証拠だろう。


 元気もりもり!

 元気な証拠だ。気にするな。


『元気なのね』

『そう。元気なんです。子供は。でもあたしたちは元気じゃないんです。お昼食べたら眠いんです』

『確かに眠いね』

『だから大人こそ昼寝の時間が必要なんですよ』


 説得力のある話である。

 いろいろ考えたのだろうね……。

 お疲れ様。


 ただ残念なことにそんなことをあたしに熱く語られても、お昼寝の時間を新たに作れるほどの権限はあたしにはない。

 よくもまあ……そんなにくだらないことを真剣に考えられるものである。


 てゆうか……実はあたしは二階堂さんがくだらない話をしに相談室にやってくる理由を知っている。

 彼女は眠くて仕方ない時……相談という口実を作りさぼりたいのである。


 眠いのはコーヒーを飲んで我慢しよう。

 大人なんだし。

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