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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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25/201

美味しいことは栄養よりも大事なのか否か

 3月。

 春が近づいたとはいえ、夕方になれば少し肌寒い。

 ただ、冬の時期に比べると日は長くなり、夕方の時間、保育園に娘の夕凪(ゆうな)を迎えに行ってからバスに乗って途中のスーパーで買い物をして帰ってきてもまだ若干(じゃっかん)空は明るく、夕焼けの名残を見ることができる。


 あたしは夕凪(ゆうな)と手をつなぎながら『夕焼け小焼け』を歌い、住んでいるアパートの2階の階段を上がる。


 お隣の家の玄関の前を通るとなんだか煮込み系の料理の匂いがする。

 ほっとする不思議な匂い。

 ちょっと寒いと感じるときに食べたくなる料理の匂いがする。 



 ――――――――――



 車の免許の更新があって会社を休んだので午前中はゆっくり朝の情報番組などを見てみた。

 免許の更新はゆっくり午後から行けばいいので、朝は優雅なものである。


 朝の連続テレビドラマ小説を15分見て、情報番組を続けて見る。

 普段は会社に行っていて見れないこういう番組を午前中に少し濃いめのコーヒーを飲みながらみるのは、それだけでちょっと得した気分になる。


 大抵、朝の情報番組というのは主婦向けに作られているから、料理とか掃除とかのネタが多い。

 今日はたまたま料理のネタだった。

 あたしは自宅で独り呑みすることが多いので、けっこうこの手の番組は好きである。

 こういう番組をしっかりチェックしておくと、手軽に美味しい料理に出会えるし、晩酌もいつもの倍以上楽しくなったりもする。


 今日はキャベツの料理をやっていた……。

 暖かそうなロールキャベツ。


 免許の更新を終えて、自宅に帰るころには、すでに午前中に感じた小春日和の暖かさは影を潜め、少し冷えてきた。腕時計を見るとまだ夕方の4時前。


 ちょっと寒いし……朝のロールキャベツが食べたい。


 そんなことを思いながら途中でスーパーに寄ってキャベツを購入した。

 ちょうど春キャベツの時期だったので値段もお財布に優しかった。


 お鍋の前に立ってあらためて時計を確認。

 時間は17時。

 1日経つのはあっという間だ。


 お隣はまだ帰ってきていない。

 料理ができる頃には帰ってくるだろうか。

 少したくさん作っておすそ分けしよう。


 キャベツの葉っぱを剥きながら朝の情報番組で出ていた栄養士の言葉を思い出す。

 『外側の葉っぱ。皆さん捨ててしまいがちなんですけどここに栄養がたくさんあるんです』


 確かに外側の葉っぱには栄養がたくさんあるのだろう。

 なんだっけ。

 ビタミンとなんとかが豊富に含まれているから、身体に良いとか悪いとか……。


 いや。悪くはないか……。


 お鍋の中で下ごしらえをしたロールキャベツを弱火で煮込む。

 いい匂いがしてきた。

 これで少しの時間、煮込めば出来上がりだ。


 それにしても……栄養を度外視(どがいし)するならばキャベツは真ん中の柔らかいところが美味しい。

 基本的に外側の葉っぱは固いし、ちょっと青臭いからあたしは好きじゃないし食べない。


 栄養があるって言われてもねえ……。

 美味しくないものは食べたくないのだよ。

 分かるかな……。

 分からんかな……。


 同じことが玉ねぎにも言えている。

 さらし玉ねぎなんかも栄養のことをなんだかんだ言われる。

 あれは冷たい水に薄くスライスした玉ねぎをさらしておくから辛さが適度に消えて美味しいのだ。

 栄養が水に溶けだすから、さらすのは良くないとか言う人がいるけど……


 (から)いじゃん。


 栄養のことだけを考えるのなら、なんかのサプリだけで十分だ。

 美味しく食べて栄養もとるというところに食べる意味があるのではないかとあたしは思う。


 う――ん……。


 考えが煮詰まったところで、ふとお鍋を覗くと、ロールキャベツはいい感じで出来上がっていた。

 タイミングよく『夕焼け小焼け』のかわいい歌声と階段を上がる音がする。


 よし。(うつわ)に移して持って行ってあげよう。

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