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隣の二階堂さん  作者: 阪上克利


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20/201

ラーメン屋でチャーシュー丼を食べるのか否か

 先日……。

 娘の夕凪と保育園から帰る最中に、新しくできたラーメン屋を見かけた。

 ラーメン屋などもう何年も入っていない。

 そもそも、女子が一人で入るには抵抗があるし、誰かと行く……と言っても父親が連れて行ってくれるか、恋人でもいれば彼氏と行くか……。いや彼氏と言ってもデートにラーメン屋はないだろう。

 

 あたしは夕凪の小さな手を握りながらふとラーメンのことを考えた。


 最近では美味しくて店構えもお洒落なラーメン屋さんが多くなった。

 夕凪が小さい内はそんな店に入るわけにも行かないけど、あと何年かしたら、一人でラーメンを食べに行く機会もできるかもしれない。

 

 一人で?


 一人でラーメン屋に入るという行為。

 以前の店構えなら難しかったかもしれないけど、最近のラーメン屋さんなら行けそうな気がする。


 そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に自宅のアパートの部屋の前まで来ていた。


 ふと隣を見てみる。

 隣に住んでいる二階堂さんも独身だけどラーメン屋なんかに入ったりするのだろうか。

 


 ――――――――――



 仕事帰りの夕方……。

 歩きながら何だか身体が重くなったような気がしてちょっと考えた。


 最近、食べすぎなのかもしれない……と。


 普段はそんなに食べていないと思う。

 心当たりがあるとすればやはりお酒を呑んだとき……。


 いや……あたしの場合、お酒を呑むときはあまり食べない。

 居酒屋に行けばお通しだけで呑めるぐらいお酒の席では食事をしない。

 あまりお腹いっぱいになってはお酒を呑む気もなくすからである。

 だから、お酒の合間に少し肴をつまむ程度でほとんど食べないのだ。


 だから大丈夫……

 と信じたい。

 お酒の後のラーメン。


 お腹すいちゃうからつい……。


 で……ラーメンだけじゃなくてミニチャーシュー丼まで……。

 普段は食べないんだけどなあ。


 なんでお酒を呑むとあんなに美味しいのだろう。

 ついつい食べてしまう。

 そしてお腹空いているもんだから完食できてしまうのだ。

 この調子ではせっかくダイエットしたのが意味をなさなくなってしまうのも時間の問題だ。


 てゆうか……そんなことより……


 なんでラーメン屋のチャーシュー丼って美味しいんだろう。

 はっきり言っちゃえばラーメンとどっち食べるか迷うときさえある。

 チャーシュー丼といえばラーメン屋からすればサイドメニューなんだろうけど、これが美味しくて、これ目的でラーメン屋に行きたい時もあるぐらいだ。


 もちろん、それはちょっとマナー違反のような気がする。

 だけど、お酒を呑んだ後でなければそんなにたくさんは食べられないので、両方を頼むことはできない。だから普段はラーメンだけにするのだけど……結局その時、チャーシュー丼は断腸の思いであきらめているのだ。


 結局……だからだろう。

 酔ってると勢いで両方とも食べてしまうのは。

 普段は我慢していることも酔った勢いならできてしまうのだ。


 それで食べた後に……

 満腹のお腹をかかえながら『食べ過ぎた……』といつも反省させられるのだ。こうなったらチャーシュー丼のみ注文できるか、もしくはラーメンのミニがあればいいと思う。

 そうすればあたしも飲んだ時に失敗しなくてすむ。

 いや……そもそも酔った勢いで食べているのだから果たして失敗せずにいられるだろうか……。

 とは言うものの……あきらかに深夜のラーメンとチャーシュー丼は身体に悪いしなあ。

 ただ美味しいのも事実だし。


 いや……

 ちょっと待てよ。

 走ればいいんじゃないか……。

 このためにダイエットして運動もちゃんとする。


 おお。

 いかにも身体に良さそうだ。


 ん?

 身体に悪いことをするために身体に良いことをするの?

 だったら最初からお酒の後のラーメンは控えた方がいいのでは……

 せめてラーメン食べる時はチャーシュー丼は辞めた方がいいのでは……。

 あ……それは酔った勢いでやってるから無理か……。


 いやいや……

 ちょっと待って。

 それ以前に……ラーメンとチャーシュー丼ってそんなに太るかな?


 だってお酒飲んでいる時点では少ししか食べてないんだよ……。

 ラーメンとチャーシュー丼食べても、トータルではそこまで食べてないんじゃないかしら?


 う――ん……。

 考えが煮詰まったところであたしは自宅のアパートの前に立っていた。

 普段は長いと感じる帰り道でも考え事をしているとあっという間だ。


 『お姉ちゃ――ん!!』

 不意にかけられた可愛い声の方を見るとお隣の夕凪ちゃんがアパートの2階から手を振っている。


 どうやら帰りの時間が同じだったようだ。

 あたしはアパートの階段をゆっくり昇った。

 『夕凪ちゃん、おかえり』

 『お姉ちゃんもおかえり』

 『今日はどうだった?』

 『楽しかったよ――。ん――と……あれ?』

 『どうしたの?』

 あたしの顔をまじまじと見ながら夕凪ちゃんは少し不思議そうな顔をして言った。


  『あれ?お姉ちゃん、ちょっと太った??』


 子供は正直だ。

 やっぱり素直に走ることにしよう。

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