第9話 努力の結果
その日から、快の生活は大きく変わっていった。
まずは自らの考えや思想を改め、たゆまぬ努力を行うようになったのだ。
「努力、努力、努力の賜物……。努力を実らせる義務……。努力は裏切らない絶対的な事項……」
それを合言葉に、快は努力を続けた。
時には家の外にも出向き、精神世界の人々とも交流を始める。人々は、最初のうちは煙たがっていた。それはもちろん、異質な快を受け入れることが出来なかったからだ。
だが、努力は時に好転する。人々は、ひたむきに精神世界に馴染もうとする快の姿を見て、徐々に快の事を受け入れるようになる。
そんな快の事を見て、ミリシアルも協力を惜しまなかった。精神世界での力の使い方を伝授する。それを学び、快は力を不自由なく使えるようになった。
それを使って、快はいよいよ自分の改造を行う。自分の見た目を変え、五感を変え、そして思考の一部まで手を加える。それにより、シュッとした快のイメージするイケメンへと変化した。これでさらに自己肯定感もだいぶ上昇する。
しかし、この状態ではテセウスの船のようなものだ。今、快の見た目や思考は、本当に快のものなのだろうか。
しかし、快は今更そんなことを気にするような人間ではなかった。今では精神世界に順応した、一人の精神世界の人間である。
そんな快適な生活を送っていたある日のこと。快はミリシアルに呼ばれていた。
「ミリシアル? どうかした?」
そういって部屋に入ると、ミリシアルが部屋の中央に立っていた。
「カイ。ちょっと話があってね」
「話?」
「そう。カイはこの世界にずいぶん馴染んできたよね」
「うん、そうだね。色んな人にずいぶんとよくしてくれたし」
ミリシアルが快の目を見る。
「実際、そうなるように導いてあげたから」
「導いた……? どういうこと?」
「簡単に言っちゃうと、私はこの世界の神なの。私はカイを救うために、この肉体世界と
精神世界を創った」
「そう、だったんだ」
「あれ? 気を取り乱したりすると思ったんだけどなー」
「そりゃあ、自分の思考の一部まで改造してるからね。それにここは精神世界。そういうことは普通に起こりえる世界じゃん?」
「それもそっか」
ミリシアルはその場でクルッとターンする。すると背中から白く輝く翼が出現した。頭の後ろには光輪が現れる。
「それじゃあ、もっと真実を教えるね。この二つの世界で、本当の意味での人間はあなた一人だけ。あなただけが人間と呼べる存在なの」
「へぇ。それはとても光栄だ」
「かつてのあなたは自信がなく、虚ろな状態だった。それでも、あなたは自分を改造し、自信をつけることで、自分で自分を救ったわ。もうこれ以上、あなたがすることも、私がすることもないわ」
「そっか。ありがとう、ミリシアル。いつも俺のことを見守ってくれて」
「どういたしまして。さぁ、次のステップに進む時間よ」
そういってミリシアルは、自分の横に扉を生成する。
扉が開くと、その先には階段が続いていた。
「この先に進めば、神に近い存在になれる。大丈夫そう?」
「あぁ。俺はもう大丈夫」
快は扉をくぐる。神に近い存在になるために。
「行ってらっしゃい、快」




