↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んでも生活は続く  作者: 紫 和春


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/9

第5話 実践と経験

 帰路に付いている途中、ちらほらと精神世界の人間を見かける。精神世界でも外出する人間はいるようだ。

 そして彼らは、物珍しいと言うより、奇怪な目で快のことを見ている。中には怪訝そうな顔をする人もいた。


「なんだろう……」


 快は落ち込んでいる気持ちを無理やり切り替えようとして、そういった周りの景色を見る。そんな時に、こういう刺さる視線を感じていた。


「……ふぅ」


 そんな快の隣で、ミリシアルは何か対応していたような反応を見せる。


「ミリシアルさん……?」

「あぁ、ごめんね。精神世界では勝手に他人の記憶を見ることができるし、テレパシーみたいな感じで会話できるの。カイのことを変な目で見てた人たちが、私に質問を飛ばしてきたから、それに対応してたのよ」

「そうなんですか……。すみません、俺のせいで……」

「そんなことないよ。私が好きでやっていることだから。確かにカイからすれば、田舎の監視社会みたいで嫌かもしれないね。でも慣れれば肉体世界の時よりすごく楽だよ?」

「そうなんですかね……」

「あっ、別に強制するつもりはないからね? カイの好きなようにやっていいから、ね?」


 そのように説明するミリシアル。彼女としては本心から強要するつもりはないようだ。


「でも精神世界の法則が使えるようになると、自分で好きな食べ物を好きな時に好きなだけ生成できるし、見た目も変化させることもできるよ」

「それは……、そこそこ魅力的ですね」

「帰ったら少し練習してみよっか」

「はい」


 そうして二人は帰路を進む。

 家に帰ってきて、二人はリビングのソファに座る。ソファと言うが、実際には固めの綿のような物体に座っているような感覚だ。


「この世界の法則は、簡単に言えば願うと叶うって感じね。頭の中でイメージして、それが目の前にあるように願う」


 ミリシアルは、両手で球体を持つような形を作る。するとその中で霧が発生し、スッと水の入ったガラスコップが出現する。ほんのコンマ数秒の出来事だ。


「慣れてる人はスムーズにできるけど、カイは練習が必要だと思う。まずは実物を見て、イメージを固めてみるといいかも」

「なるほど……」


 テーブルに生成された水入りガラスコップが置かれる。快はそれと正対し、ジッと見つめてイメージを固める。


(ガラスコップがあって、その中に水が入っている……)


 手を前に出して、水晶玉を持つように両手の中に空間を作る。その中にガラスコップがあり、水が入っているイメージだ。すると、少しずつ両手の中に霧のようなものが出現し、ゆっくりと渦を巻いている。


「ぐ……、ぐぅ……」


 しかし実物があるとはいえ、想像した物を目の前に出現させることなんて今までの人生の中でやったことがない。とにかく、集中してイメージした物を手の中に生成することを強くイメージする。

 すると、手の中にあった渦巻く霧がだんだんと形になってきた。

 そして霧が凝固していき、現実の物として顕現する。不格好なガラスコップと、その中に入った水と溢れた水が出現した。

 溢れた水はそのまま重力に引かれて机の上にこぼれる。


「あぁ……」


 生成した不格好なガラスコップを机に置いて、快は席を立つ。何か拭く物を探そうとした。


「大丈夫だよ、カイ。この精神世界では、生成も消滅も自由だから」


 そういってミリシアルは、手でこぼれた水を拭くように動かす。すると、まるで掃除機を使ったように水が消失し、机の上の水はなくなった。


「こんなこともできるんだ……」

「そうなの。でもカイだって初めてなのにここまで出来たんだから、素質はあるわ」


 そのように快のことを元気づける。


「それに、この生成消滅の法則が使えるようになると、カイにも良い事があるわ」

「良い事?」

「今の見た目や体調さえ変えることができるわ。いつまでも体の輪郭が定まってないのは嫌でしょう?」


 そういってミリシアルは鏡を生成して快に見せる。そこには、まるで水風船のようにブヨブヨと振動している快の体があった。

 鏡を通して一瞬自分の体を見た快は、思わず視線をそらす。肉体世界にいたときからあまり自分の顔や体を見るのは好きではなかった。顔にはニキビ跡や小さな凹みが多数あり、頬は脂肪でふっくら、それは首回りにもあって場合によっては二重顎のようにも見える。そんな自分の顔が好きではないのだ。


「でも、今の実力じゃ、自分の体をいじるのは無理そうだな……」


 快はポツリとそのように零す。


「大丈夫。私もできる限りサポートするわ」


 ミリシアルはそのように答える。

 その言葉をそのまま受け止めることが出来ない快であったが、それでも少し安心している感情がどこかにあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。