第33話 少年、私に挑め
光を潜った俺たち。その先は、さっきの場所と打って変わった場所だった。
「ーーッ。ここは?」
「わからないわ。少なくとも洞窟ではないわね」
野球ドームぐらいあったさっきの場所に比べて、ここは随分と狭い。それに色もない。地面もコンクリートみたいに白いし、円状に広がる壁も白い。それに、これどっから光が来てるの?日光があるわけでもないのに明るい。
『よくぞ来てくれた』
「「「ーーッ!?」」」
急に声がしたッ。声がした前方に向き直ったら、部屋の中心に白銀の甲冑がいた!さっきは居なかったのにっ、いつの間に!?てか、よくよく見たら、あれ《天空塔》の試練に挑む前に力を示せって現れた奴じゃね?
『ここまで上ってきたこと、素直に称賛しよう。少年、少女、青年、よくぞ頑張ってくれた』
いや、違う。盾を持っていた左手には騎士が持ってそうな長槍を握ってるし、腰に帯剣している剣だって違う。というか、アイツから放たれるプレッシャーが違うッ。今まで戦ってきた奴らなんて目じゃない!桁外れのプレッシャーだ!!
『私はこの《騎士の間》の主、騎士ランスロットだ』
「ランスロット……?」
それが名前?いや、名前なんてどうでもいい。
「お前がこの部屋の主っていうことは、お前を倒せばいいんだな?」
『如何にも。私を倒せば、晴れて《天空塔》の試練をクリア。君たちはここから出られる』
「ーーッ!?今、ここからって言ったなッ。それは《天空塔》のことか!?それともっーー」
『……君の思っている通り、この世界からだ』
ーーッ!?この世界っ……。ついにっ、ついに見つけた!自分を思い出す手掛かりを!!そうだ、アイツさえ倒せばっすべてがわかる!!
『だが、私が最後の試練であることを忘れるなよ。私を倒すのは、そう簡単ではないぞ』
腰に帯剣している剣を抜いた。ーーッ、なんだあの剣はっ?剣とは思えない圧力を感じるッ。嫌でも、ただの剣じゃないって認識させられる!
『さあ、最後の試練だ。掛かって来い、挑戦者よ』
わかるッ……アイツは強い!
「ユキ、ここで援護頼む。おっさんは俺と一緒に前衛だ。俺がアイツを引きつけるから、その隙に攻撃してくれ」
「わかったわ」
「おうよ」
よしっ……行くぞッ!
「《縮地》ッ」
ブーツに魔力を流して特殊能力を発動ッ。一瞬で景色が変わってアイツの懐へ!
「ハァッ!」
そこから剣を振り下ろすッ。《スネークド》!
『ほう。鋭い剣だ』
でも、アイツは剣で受け止めた。あの速さで迫ったのに反応できるのかよッ。いや、それ以前になんで斬れないんだ!?くっーー剣を弾かれる。弾いた瞬間、アイツは半身になって長槍を放ってくる!短剣を横からぶつけて軌道を逸らすッ!!
「ハッ!!」
長槍が横腹すれすれを通り抜けた瞬間、1歩踏み込んで《牛紅剣》の突きを放つ!アイツの剣で弾かれるッ。その弾かれた勢いを利用して身を捻る。更に間合いを詰めてっ、そこから《短剣技》を繰り出す!《クロッガー》ッ!!
横一閃に高速で振るった短剣だったけど、アイツは背後に跳んで躱しやがった。
「逃がさねぇぜ!!」
そこにおっさんが追撃をかけるッ。俺の傍を通り抜け、未だ着地していないアイツに《鎚技》を放つ!下段から振り上げた《鬼王の牙鎚》をアイツは両手の武器をクロスさせて受け止めた。一瞬だけ体勢が乱れたけど、すぐに直して着地する。
「〝不可視の弾丸よ穿て〟ッ!!」
そこでユキが魔術を放つ!見えない弾丸がアイツに迫るッ。またクロスガードさせて凌いだ。あのクロスガードの防御力は何なんだよッ……。いや、そんなことより今は攻める!
地面を蹴って駆け出し、魔術を防いだばかりのアイツに剣を振り下ろすッ!
「《蒼炎》ッ」
更に、《牛紅剣》に青い炎を纏わせて威力を底上げ!そんな剣をまたアイツはクロスガードで防ぐ。
『ッ、なに!?』
長槍を真っ二つに斬り裂いた!アイツの剣は斬れなかったけど、受け止め切れなかった拍子に左肩部分を浅く斬ることはできたっ。でも、やっぱり剣だけは斬れない。長槍と甲冑は斬れたし、あの剣が特殊な物なのか?
「ハァッ!!」
『くっ』
振り下ろした剣を跳ね上がらせて薙ぎ払う!それにアイツは素早く反応してバックステップを踏んだ。さっきのような追撃を警戒してか、大きくは跳ばず小さく何回も跳んで間合いを空ける。これじゃ追撃は難しいな。チッ、仕切り直しか。
『その剣、ただの剣ではないな。最高位クラス……いや、神具クラスに匹敵している。一体誰が作ったのだ?』
神具クラス?神の武器、ってことか?
「よくわかんねぇが、その剣なら俺の自信作だぜ」
『ーーなるほど。青年は《鍛治》の才能を見出された探索者なのだな』
「探索者?」
『いや、何でもない。まあ、私を倒せば教えることになるがな』
やっぱり、アイツは知ってる。俺たちの知らないことを。なら、意地でも聞かせてもらわないとな。
『それにしても、少年の剣は厄介だな。いや、左手に持つ短剣、それも随分と特殊な物のようだ。青年、なかなか腕の良い鍛治士らしいな』
「はんっ、そいつはどうも」
『本気で褒めているのだがな……まあいい。こっちも、うかうかとしていられないようだ』
半分になった長槍を投げ捨てた。それからアイツは左手を背に伸ばして……盾っ?背中に盾を装備してたのか?なかなか派手な装飾だな。
『仕切り直しだ。今度はこっちから行かせてもらうぞっ』
その宣言通り、アイツは駆け出した。方向は俺から少しズレた……おっさんか!させないっ。アイツの前に立ちはだかって構える。
『フンッ』
剣が横から振るわれてくるッ。短剣で受け流して、剣で斬り付けーー
「ーーッ」
危なっ……!剣を振ろうとしたら、もうアイツの剣が返ってきてた!体を仰け反らせて躱すッ。今度は振り下ろしだ。《タイラ》ッ!!アイツの剣を弾き上げたッ……!!ここだっ。
「うわっ」
なっーー剣を弾き上げたはずなのにっ、もう剣が薙ぎ払われている!?咄嗟に剣で受け止められたけど、今のは本気でヤバかったッ……。
『むっ。さては少年、剣士との打ち合いは初めてか?』
「そんなわけっ、ないだろ!!」
アイツの剣を押し退ける!強く踏み込んで《牛紅剣》を振り下ろすッ。《サーライン》ッ……!!でも、盾で受け止められた。ッ、斬れないっ……。この盾も特殊な物なのかッ。
『しかし、この《剣技》は高位の武技のはず……。なるほど。どうやら少年、相当苦労したようだな』
「お前に、何がわかるッ」
『わかるとも。私も随分と伸び悩まされたものだ。剣を鍛えるには、それ相応の経験が必要となるからな』
ぐっーー剣が弾かれるッ。アイツの剣が振るわれてくるのを、後ろに跳んで回避する!なっ、一歩で間合いを詰めてきやがった!?返しの剣が振るわれてくるッ。《黒楯》!!
『ーーッ。ほう』
《翔踏》ッ。六角形の盾で防いでいる間に、空中を足場にして背後に回る!そこから短剣を逆手に持ち替えて迫るッ!
レベル3上段突き《短剣技》ーー《ナトレイン》ッ!!
振り上げた《氷鬼》を突き立てる!!
『甘いっ』
けど、アイツはすぐに反応して盾で防ぐッ。いや、俺の狙い通りだ!
「《凍気》ッッ」
《氷鬼》に魔力を流し込むッ。これでコイツの盾は使えなくーー
「ッ!?なっ」
凍結しない!?なんでっ。
『ハッ!!』
「ぐぅッ」
下から振り上げてくる剣を防ごうとしたけど、完全には防ぐことができずに左肩を浅く斬られたッ。背後に跳んで間合いを空ける。
「〝轟く雷鳴に切り裂かれよ〟ッ!!」
そこにユキの魔術がアイツに襲いかかた。雷が落ちたみたいな轟音と共に、刃の形を成した稲妻が放たれる!高速で迫る稲妻の刃にアイツは……ッ、盾を構えるだけだと!?
ーーズドォンッッ
ユキの魔術が着弾する。すぐにアイツの姿が見えてーーッ!?アレが無傷で済むのかよッ。
「ぉらッッ!!」
っ、アイツの背後から接近したおっさんが《鎚技》を振るう!アイツはすぐに後ろに下がって鎚を躱した。だけど、おっさんの《鎚技》はまだ終わっていないッ。
「オラァッッ!!」
空振った勢いで体を捻って回転しっ、また1歩踏み込んで鎚を叩きつける!《鎚技》の回転二連撃技か!!
『くぅっ』
だけど、アイツは驚きの反応速度を見せて盾で防いだッ。苦悶の声が大きく聞こえてきたことを察するに、結構キツかったのだろう。それでも、アイツは受け止め切った!そんなアイツは盾で受けた状態から剣を振り上げるッ。ーーッ、させるか!!
レベル1迅速単投《投擲技》ーー《バリエード》ッッ!
左手に持つ《氷鬼》を投擲ッ!ただ当たればいいから、当たる場所はどうでもよかった。投げた短剣はアイツの右肩に命中するッ。それと同時に背後からアイツに迫る!!
『ぐッ、なんだ!?』
《スペレス》!『道具』の中から細剣を呼び出すッ。それを左手で握りながら、《牛紅剣》を振り下ろす!!
ーーカンッ
アイツの剣で受け止められて、甲高い音を響かせる。
「おっさんッ」
「おうよっ!!」
俺の呼び掛けにおっさんが応えてくれる!左手に持った円形の盾を振りかぶり、その縁でアイツの胸元を殴りつけた!!その盾は緑色に光っているから、アレは武技だ。俺も習得している《盾技》で、相手に盾を打ち付ける武技《ガルバーン》という。ま、鍛錬でしか使ったことないけど。
『ぐおッ』
両手を塞がれた状態で殴られたアイツは、甲冑を凹ませながら後ずさる。ここだ!
「ハァァアアアアッ!!」
レベル4上下二連撃《剣技》ーー《カタスレス》ッ!!
《牛紅剣》を振り下ろすッ。それを後ずさりながらもアイツは盾で防ぐ。だけど、予想通りだ!振り下ろした剣を跳ね上がらせるように振り上げる2撃目ッ。それによってッ、アイツの盾は大きく上へと弾かれた!!意識を左手に切り替えるッ。
レベル1単発突き《細剣技》ーー《スペヤー》ッッ!!
黄色に光る細剣を突き放つ!狙うは甲冑と兜の隙間っ、つまりは首!一気に決めるッッ!!
『ーーッ!?』
今更気づいたみたいだな。盾を弾き上げようとも、右手の剣がまだある。だけど、それは使えない。なぜなら、アイツの右肩には刀身に触れたものを凍らせる短剣が突き刺さってるからだ。これで、行けるっ!!
『なるほど。だが、まだ甘い』
「ーーッ!?」
ーーギンッ
なっーー剣を投げた!?腕が動かないのにどうやってーーまさか、手首のスナップだけで細剣に当てたっていうのか!?《投擲技》でも無理だぞっ、そんなの!!
クソッ、細剣の軌道が逸れてアイツの首横を通り抜けた!
『シュっ』
「があっ」
後ずさってた体を前に出して、アイツは盾で俺のガラ空きになった脇腹を殴りつけたッ。とんでもない威力で薙ぎ払われて、俺の体は吹き飛ばされる!何度も地面をバウンドしたところでようやく体勢を立て直せたっ!痛ッーー《治癒力上昇》。
アイツは今……おっさんに攻撃してる。剣を手放したまま、左手に持つ盾で殴りつけている。おっさんも負けじと盾で防いで鎚を振るってるけど……ダメだ、完全に攻められてる。鎚を十分に振るえてない。
「おじさん下がって!!」
「ッーー」
ユキが叫んだ。そうすればおっさんが素早く後ろに跳んでアイツから離れる!そして、アイツはユキの声に反応して振り返った。それと同時に、ユキの魔術が放たれる!!
「〝列なる氷結は怨敵を切り裂かん〟ッッ」
ユキが綴った術式の前から、氷の刃が出来上がっていく!それは途轍もない勢いでアイツに迫り、命中する。だが、それでもアイツは無傷だった。盾を構えて、さっきの変わらない姿でそこに立っているッ。
あの異常な防御力……左手の盾が怪しい。魔術や特殊能力に強力な耐性でもあるのか?だったら、接近戦あるのみっ。《スペレス》ッ。《月光剣》!!細剣に代わって剣を握り締める。
「《縮地》ッ」
《ソーレイブーツ・翔》に魔力を流し込むッ。アイツに超高速で迫って右手の剣を振るう!盾で防がれた。それがどうしたっ。すぐに《牛紅剣》を引いて《月光剣》を振るう!!
『ッ、ほう。面白い奇策ではないかっ!』
盾で防いで弾き上げられる。盾の面で迫ってきたッ。両の剣をクロスさせて受け止める!
「ッーーはああああッ」
それを押し返すッ!後ろに下がったところに踏み込んで剣を振るう!右、左、左、右、左、右、右、右、左、右、右、左、左、左ーー両腕が止まることなんてないッ。アイツの防御が崩れるまで振り続ける!
『ぐっ』
アイツの体勢が崩れたッ。ここだ!
「ハアアアアアアッッ!!」
両の剣を交差させて振りかぶりっ、それを一気に振り下ろす!
『ぐわっ……ッ!?なにーー』
「えーー」
今、剣が光ってた、よな?しかも、2本とも……。どういうことだ……?
『まさか……こんなに早く覚醒するとは……』
「なに止まったんだぁ!!」
『ーーッ』
あ、しまったッ。戦闘中なのも忘れて固まってしまった!おっさんがアイツの背後で《鎚技》を炸裂させた。背中をもろに殴られたアイツは、弾かれたように吹き飛ぶ!数回バウンドして、ようやく勢いよく立ち上がるッ。
「《閃光波弾》ッッ!!」
そこに、《月光剣》の剣先を向けて追撃する!剣先から放たれる光弾がアイツに着弾した。けど、ギリギリのところで盾に防がれたらしいッ。盾を構えたアイツが無傷で現れる。チッ、ダメか。
「〝清めの水よ流るる渦をもって呑み込め〟ッ!!」
更にユキが魔術で追い討ちを掛ける!水の渦がアイツを呑み込んだ。でも、どうせアイツは無傷だろう。今のうちに間合いを詰めるッ。
「行くぞ、おっさん!!」
「おおっ」
俺とおっさんは駆け出すっ。そして、魔術が晴れた先に居るアイツにクロスして振り上げた両の剣を振り下ろすッ!!
「ハァァッ!!」
盾で受け止められる。だけど、いい。俺がやりたかったのは確認だ。そして、今確認できた。間違いなく、俺は武技を使ってる。なんで……?俺はこんな武技知らないぞッ。
『やはりかっ』
「っ?」
今、アイツ何か言ったか?って、ヤバっ。また固まるところだった。俺の脇を抜けてっ、おっさんがアイツの懐に入り込む!
「ぉおおおッッ!!」
気合いの掛け声と同時にっ、鎚を振り抜いた!オレンジに光った鎚は、アイツの右脇腹に炸裂して吹き飛ばすっ。宙に舞う銀色の輝きは、アイツの甲冑の破片だった。アイツはさっきの場所に戻るように転がっていく!!
「《凍獄》ッッ!!」
アイツが止まった直後、ユキが《冥肆樹杖》の特殊能力を発動させた!未だに立ち上がっていないアイツを氷の地獄が包み込むッ。まるで局所的なダイヤモンドダストでも降っているかのような光景。
その地獄が晴れた先では、兜から下が氷塊に埋まっているアイツの姿があった。よしっ、アイツの動きを封じた!
「一気に決めるぞッ!」
「おお!」
俺とおっさんが駆け出す!トドメの一撃だ。絶対に決めるッ。《威力強化》!!走りながら《牛紅剣》を上段に構える。
「……?」
アイツに近づいたことで気づいた。氷塊に埋まった場所に、盾以外の物が混じっていることに。その右手に握られた物は、途轍もなく見覚えがあってーーーー途轍もなく嫌な気配を感じた。
その感が的中したかのように、それは強烈な光を放ち始めるッ。
「ーーッ!?おっさん、離れろ!!」
慌てておっさんに叫ぶっ。俺もすぐに技をキャンセルして全力で後ろに跳んだ!だけど、間に合いそうにないッ。《耐久力上昇》ッ、《属性耐性上昇》!あとっ《黒楯》ッ!!俺が技能と特殊能力を発動させた直後ーーアイツは呟いた。
『ーーアーム・リベレーション』
直後、部屋中を満たす強力な光と全身を打つような衝撃に襲われた。
「ーーッ、がはっ」
な、何が起こったんだ……?
「ぐっ……」
両手を突いて起き上がるーーッ、ダメだ。体が痛すぎる。目だけ動かして周りを見る。そしたら、近くに《牛紅剣》と《月光剣》が転がっていた。《牛紅剣》の方は無事だけど……《月光剣》の方は刀身が砕けてしまっている。またルミちゃんに申し訳ないことしたな……。って、そんなことよりっ……ユキは……おっさんは……大丈夫なのか?
「……ッ。おっさんっ……」
少し離れたところで、おっさんが倒れてる。呼び掛けたけど、反応がないっ。クソッ……ユキは、いた!さっき居た場所から壁に叩きつけられたみたいだ……。壁にもたれかかってるけど、どうにか息はあるようだ。
『まさか《武装解放》を使うことになるとはな』
「ーーッ!?」
ぐっ……アイツっ……!
『ここまで追い込まれることになるとは思わなかった。君たちは素晴らしい。私の予想を上回る成長と連携を見せてくれた。これほど惜しいと思うことは、私の生涯でもそうは無い』
氷塊が完全に失くなってるっ……。それに、アイツが居た場所に《氷鬼》が転がっているから、右腕が動かせないなんて期待はできそうにないな……。盾はもちろん、剣だってちゃんと持ってるし。
『さらばだ、若き剣士よ。本当に残念だった』
まだ動けない俺に、アイツは剣を振り上げる。これで、最後なのか……?クソっ、ふざけるなッ……!動けっ、動けよ!俺の体だろッ!動けって!!動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け、動いてくれ!頼むからッ……!!
『せめて、苦しまずに』
アイツが剣を振り下ろすッ。クソっ、こんなところで終われないのに……俺は死んーー
「ぇーー」
『なーー』
俺に向かって振り下ろされた瞬間、俺とアイツの間に陰が差した。逆光でその陰が何なのか見えなかったけど、なぜかすぐにわかった。いつも高笑いして、頼りになって、変に大人を主張してくる、大きな男の背中ーー
「おっさんっっ!!!!」
ようやく動いた右手を伸ばした時には、
もう剣が振り抜かれた直後だった。
明日の18時に、第33.5話を投稿します。 作者より




