y9.後悔
いよいよ待ちに待った出発予定日。
昨日は少し寝るのが遅かったが、今日も早朝から行動を開始する。
原始人に休みなどない。ブラック企業なのだ。
まずは草を編み込んでツボとその蓋を幾つか作る。
ほとんどは水を入れるのに使うんだが1つはまず木の実。
もう一つは………虫だ。
何故大っ嫌いな虫と共に、大海原へ航海に挑むのかと言うと食料の為である。
私の船は木製だ。当然船の上で焚き火なんて自殺行為は出来ない。
となると生で食べれる食材がいる、だが木の実だけでは心許無いだろう。
そこで、生でもなんとか食べられそうな魚を航海中に釣ろうと言う訳だ。
そこでその餌となる虫がいるのである。
だがご存知私は虫が嫌いだ。アリとか小さいのはまだ平気だけどワーム系がいかん。
見るだけで発狂モノだ。
しかし私の中の魚の餌のイメージはワーム。オンリーワームだ。
だから魚には出来るだけ手を出したくなかったが仕方ない……。
苦手意識を無くさなければこのミッションは成功しない…。
さあ!行くぞ!
気合を入れ、私はジャングルの川沿いにある大きめの石を一気にひっくり返し……た……。
ぎょああああああ!!!
石の下には地獄絵図が広がっていた。
見たことも無い虫がウヨウヨと群がり、その光景はさながら地獄、その中にはワーム系もそこそこいた。
うわああ……いた……いちゃったよ………。
いたら獲んなきゃいけないじゃん……。
木の枝を箸の様に使い、恐る恐るワームを持ち上げる。
するとワームは箸から逃れようと体を激しくよじった。
うっえええぇぇ……
気持ち悪っ!!思わず枝を離してしまいそうになる。
分かった、これは見ちゃダメなんだ!
持ち上げたら素早くカゴに入れる!!これだ!!
私はジャパニーズスキル全開でワームを箸で掴み、素早く捕獲していった。
その時悲劇は起きた。
素早さを求めるあまり、正確さが足りなかったのだろう。
1匹のワームをカゴに入れそこねた。
そのワームはしゃがんで作業をしていた私の太ももに
着地した。
「うわわわわわわわあああああ!!!!」
ジャングルに絶叫が木霊する。
私は人生初の膝枕をワームに捧げた。
くっそー……散々な目にあった。
どうして私がこんな目に。
でもまあワームは集まった。
カゴの中はとても覗けないけど……。
あとは海に出た時ように竹を節目で切る。中にワームを入れてツタでくくって海に沈めとけばなんかかかるだろ。
幾つかその仕掛けを作っていかだに積み込む。
忘れ物は無し!!
さあ、出発の時は来た。
私はいかだに乗り込み、流されないように木と繋げていたツタをナイフで切る。
そしてオールで漕ぎ出した。
行くぞ!海賊王に!私はなる!!
いや、全然進まないじゃん。
もっと進むと思ってたのに。
もう船を漕ぎ出して結構経つがジャングルがまだ近い。
これは私、海を舐めてた。
これは一回戻ってもっといいオールを作るべきか?
いや、少しづつでも進んでるんだ。
それに潮の流れさえ掴めればきっと、もっと進むはずだ!
そのまま夕暮れまで船をひたすら漕ぎ続けた。
そろそろ暗くなってきたな。
そうだ!魚用の仕掛けを上げてみるか!!
私はウキウキでツタを引っ張りあげる。
……軽い
………これも軽い
…………これも軽い!!
全然かかってない!!
なんで!あんな思いまでしてワーム獲ったのに。
あれ、もしかしてこれヤバい……?
とりあえず木の実をほんの少し食べ、錨を降ろす。
でももう戻るにも遠いんだよなー……。
まあ最悪魚が獲れ無かったとしても、木の実はかなり多目に積んである。
きっとなんとかなるだろう!
こうして私の人生初の大航海は始まった。