m21.前夜祭
大地が割れる程に踏み込み、風を裂きながらペルとウチは森へ急ぐ。
他のみんなは着いてこれてないみたいや。まあ後で追いつくやろ。
それより今は急いで向かわんと。直接侵攻なんか仕掛けられたらもうみんなの事を抑えきれん。
ペルが休憩もせずに全力で走ってくれたおかげで森までなんとか日が沈みきる前に着いた。木々をすり抜けるようにウルドの元へと急ぐ。
おかしい……動物が見当たらん。なんかあったんか?
まさか人間がもうそこまで……!!
「アヤ!妙な匂いと木が大量に燃えている匂いがする!警戒しておけ!!」
「じゃあやっぱり人間が!!間に合わんかったんか!?」
「いや匂いはウルド達のいる方とはまだ距離がある!
今日はもう日が暮れる、恐らく接触は明日なのだろう!だが早すぎる!!
人間には何か隠し玉があるはずだ!魔物もいる森をこんなに早く突破できるとは……」
おかしい。みんなから銃や爆弾みたいな近代兵器は無いって聞いとったのに。
「とりあえずギリギリ間に合ったんやな!はよウルド達と相談せんと!!」
ハーピィから聞いた話やと人間の街付近のオークとゴブリンの集落をくっ付けた集落にウルド達はおるみたいや。
そっちに向かってペルが猛スピードで駆ける。
そこからしばらくもしないうちに辿り着いた。
思ったよりおっきい集落になっとる。頑張ってくれとったんやな。
「アヤ様!よくぞ!お疲れの所申し訳ございませんが色々と相談が!ゴルとこちらで仲間にした族長も集めてあります!こちらへ!」
「分かった!」
ウルドに案内されたのは集落から少し外れた場所の広場やった。木を切り倒して各魔物達が広々入れるスペースに少し小高い岩の台地があり、そこに上がるとその開けたスペース全てを見渡せる。その上には少し豪華な椅子がおいてあった。
「こちらへお掛けください。」
嘘やろ……ウチめっちゃ偉そうやん……
言われるがままその台地へと登り、見下ろすと正面にはゴル達、そして新しく傘下に入ったであろうゴブリンとオーク達が跪いていた。
うわー、王様みたいや。なんか気恥しいな。
「ではこれよりアヤ様にご報告の後、人間への対策について会議を行う!」
ウルドがそう告げるとウチに報告してくる。
内容は人間達が新兵器を使ってこの森を焼きながらこちらに向かってるらしい。今は森に陣を敷いて休んでるけどなんとかせんかったら明日にはここまで来るんやとか。
「いかが致しましょう?こちらから出向いて戦っても恐らく今の戦力では惨敗。かと言って待っているだけではあの妙な兵器でこの集落は焼かれてしまいます。」
そんなにヤバいんか、その新兵器ってやつは。
「ウチとペルで話つけに行く。明日には他のみんなも追いついてくるはずや。和平は無理でもそれまで時間は稼ぐ。ペルやったら簡単にやられへんしな。」
「そうするしかないな。ウルド、人間達の動きは掴めるか?」
ウチの隣に立っとったペルが同調する。
「は!常に斥候を放っています。動きがあれば直ぐに報告が入る手筈です!」
「そうか。ならば明日、人間が進軍しだしてからが良いだろう。ただの兵士と話をする意味は無い。斥候に指揮官らしき人物の居場所を聞き、木々を回り込んで一気にそこまで駆ける。……そこからはアヤ次第だな。」
「分かった!ウチはそれでいいと思う!みんなで行ったらどうしても被害は出るやろうしな!」
「分かりました……お力になれず申し訳ございません。」
ウルドが跪いて悔しそうに言う。
「いやいや!こんなに集落おっきくしてくれたやん!こっちのゴブリンとオークも仲間にしてくれたしみんなほんまに心強いで!ウチ一人じゃなんにもできひんかった!ありがとう!!」
「かたじけない……これからも全力を尽くさせていただきます!」
ほんまにみんなには世話になっとるし頼りにしとる。
特にペル……いつでもウチを守ってくれる。明日、人間のとこに行くんも一緒やったらちっとも怖ない。ペルやみんなのおかげでここまで来れたんや。
今までの分、絶対無駄にはさせへん。
ウチは自分の決意を確かめるように叫んだ。
「みんなのおかげで魔物達を説得してここまで来れた!
でもまだこれからや!こんなところで台無しにされる訳にはいかん!絶対ウチが人間止めたる!!
だから、その後もみんなに力を貸してほしい!
平和は……みんなで作るんや!!」
言い終わると同時に歓声が上がる。こんなに、こんなに仲間がおるんやって思ったらなんかちょっと胸に込み上げるもんがあった。
明日や、明日失敗したら一気に平和なんか遠なってまう。
そんな訳にはいかん。絶対止めたる。そのあとは和平や!
決意と覚悟を胸にその場は解散となり眠る。
いよいよ明日。人間と魔物の平和に向けて、一回目の接触となる。




