m11.彩
月明かりに照らされる獅子と少女の影。
そのすぐ側には少し大きい狼の影も潜んでいた。
狼は一人と一匹の話を聞いて考え込む。
ウチらはあれからちょっと休んで戻るつもりやったけど結局、そこでそのまま寝た。
朝日がさして目が覚める。
ペルはもう起きとった。
「起きたか、戻るとしよう。皆心配しているだろう。」
「おはよー……もう体大丈夫なん?」
「ああ、休めば大丈夫だと言っただろう。
もういつも通りだ。どれ。」
ペルはそう言うとウチのセーラー服を咥えて空中に放り投げ、背中で受ける。
ちょ、この乗せ方久しぶりやな!!
「もう!その乗せ方やめてって言うてるやんか!!」
「そうだったか?行くぞ、今日は落ちるなよ。」
そうやって笑い合いながらウチらは集落まで帰ってきた。
「おお!アヤ殿!ペル殿!心配しましたぞ!!」
族長達が慌てて出迎えてくれる。
「ごめんごめん、色々あってな!!
帰ってくんの遅なってもうた!!」
「一体何があったのですか?ペル様もお怪我を……!
すぐに薬草をもってこい!!」
ウチらが帰ってきて集落は急に慌ただしくなった。
「狼にやられてな……ウチがドジ踏んでもうた……
やっぱりウチが甘かったわ。そのせいでペルが……」
「いや、あの程度の奇襲に気付けなかったのは私の落ち度だ。
それにその甘さが今いる皆を集めたのだぞ。」
ペルは優しくフォローしてくれる。
「ありがとう。
せやけどもう狼達は諦める。仲間が傷付くぐらいやったらそんなこと言ってられへんしな!」
ウチは覚悟を決めとった。
「じゃあどうする、皆で森に狼狩りにでも行くか!?」
ゴルが威勢よく話に入って来る。
「そうやな……でもとりあえずはペルの手当が先や。
その後にちょっと痛い目見てもらおうか……」
「いや、その必要は無いかも知れません。」
ウルドがそう言いながら集落の入口の方を睨みつける。
集落の入口の方からは白狼を先頭に狼の群れがやって来ていた。
「正面から戦争しようと言う訳ではあるまい、何の用だ!」
狼達と一定の距離を保ち、睨み合いになる中ウルドが叫んだ。
「貴様等に……いや、そこの人間に興味がわいた。
……少し話をしたい。」
ペルをこんな傷だらけにしといて今更話なんか聞く気なるか!
「なんや!今更話聞けってか!!都合良すぎるやろ!」
「都合がいいのは重々承知している。
拒否するのならこのまま帰ろう。」
「アヤ様、聞くだけ聞いてやってもよろしいかと。」
踵を返そうとする狼を見て慌ててウルドが耳打ちしてくる。
確かにウルドの言う通りや。感情的になるより聞くだけ聞いた方が得か。
「………分かった。聞くだけ聞いたる!」
内心むしゃくしゃしとるけどウチはもうリーダーや。好き勝手はできん。苛立ちを押し殺してウチは言った。
「昨日貴様等が話しているのを聞いた。
貴様は魔物を統一しようとしているのか?」
「そうや!ほんで争いを無くす!!」
「もし……もしもそれが成ったとして、その後人間とはどうする。」
「人間とも仲良くする!争いを無くすんや!
聞いとったんやったら知ってるやろ!」
昨日の件と話を盗み聞きされていた事に、つい攻撃的な口調になる。
「貴様こそ話を聞いていたのか?人間は愚かだ。
我等が平和を持ちかけても自ら崩す。再び繰り返すとでも?」
「そんなことはさせへん!!ウチがおる!ウチは人間や!
ウチが架け橋になる!人間も!魔物も!皆で仲良う暮らすんや!そんな世界が出来るまで、誰にも邪魔なんかさせへん!」
ウチは思いの丈をぶちまけた。すると白狼は少し考え込む。
「…………あいわかった。
その道、見届けさせてもらう。昨日の非礼をここに詫び、お前達の集落に手を出さない事を誓おう。」
白狼はそう言ってほんの少し頭を下げた。
「それって……」
「勘違いするな。貴様等の仲間になる訳では無い。
これで我等は失礼させてもらう。
だが忘れるな、貴様等がそれを成せなかった時、またはその志を忘れた時、我等はまた貴様等に牙をたてる。」
そう言って狼達は去っていった。
やがて狼の姿が見えなくなり、シーン……としていた集落全体から歓声があがる。
やった!やったんか!仲間には出来んかったけど説得出来た!!
「やりましたな、アヤ様。
これでこの山周辺は事実上アヤ様の領地と言う事になります。」
「うおおおお!!
やったのか!流石アヤ様!我等が見込んだだけの事はある!!」
「私達に便乗しただけの癖に何を言うのか……。
ともあれ、おめでとうございますアヤ殿、これでまた一歩近付きましたな。」
族長達が口々に称賛をくれる。ウチも達成感で胸がいっぱいになった。
「ありがとう!みんなのおかげや!!ウチ一人じゃ出来んかった!
ペル!!やったで!とりあえず第一歩や!!」
ペルに駆け寄って飛びつく。
「ああ、よくやった。
だがまだ先は長いぞ。浮かれ終わったら気を引き締めろ。」
「かったい事言うなや!とりあえず今は喜ぶんが先や!」
ペルはやれやれと言った感じだったがその顔は確かに笑っていた。
今までこんな達成感味わった事ない!
絶対やったる!皆が笑えるように!
誰も争わへん世界を、皆で作るんや!!




