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執事流異世界物語  作者: 一兄@茄子推し
1章~執事道は意外とハード?~
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愛歌の目覚め

さて、万死の魔眼について、話をしよう。

そもそも、万死の魔眼とは何か?である。

万死の魔眼とは、死を見る目であり、そして……、


「死を相手に感じさせる」


それだけの能力である。

単純にして最凶の能力。死とは人間であれば誰しもが恐れるものである。それを相手に感じさせられるのだから、魔眼の中でも最上位に位置する魔眼である。

ここで重要なのが、死を感じさせるだけであって、実際に殺している訳では無い。

万死の魔眼は、基本的には相手の戦意を精神的に消すための能力であると言っても過言ではない。もしも戦意を消せなくても、どんな歴戦の戦士であれ、死を見れば腕は鈍り、恐怖を抱くであろう。

正直な話、最強の戦闘スキルと言っても過言ではないくらいのである。

ならば、だ。当然、そんな最凶能力(チートスキル)を手に入れれるのだから、代償(リスク)も当然重くなる。

万死の魔眼を使える人間は、いない。

少ないや、多くないなどではなく、零。存在しないのだ。

理論上は存在している。異能の一覧に出ている人もいる。しかし、それを使う代償であるたった一つの試練が、使用者全員を殺すのだ。

比喩でも冗談でもなく、本当の意味での死を、本人に与えうる。そんな試練が、万死の魔眼の初行使時に襲う。

試練の内容はお察しの通り、親しき友人の死や、己の死、そして世界の破滅。ありとあらゆるこの世の死という概念を見せつけられ、誰もが心を壊す。

愛歌が発狂したのもそのせいである。

現在、愛歌は宿の自室のベッドで寝ている。

否、うなされている。夢でも襲い来る死の試練が愛歌の心を壊そうと猛威をふるい続ける。

その試練に勝てるかは、まだ、誰も知らない……。




「いつになったら、目覚めてくれるんでしょうか……。」


「……俺が聞きたいよ……。」


そういって宿の食堂で暗い雰囲気を放ち続ける勇者達。

愛歌が倒れてから4時間。未だに愛歌は目覚めない。




寝ている愛歌の部屋に、コンコンと律儀にノックをしつつ入ってくる人物がいた。

その人物は、いまだうなされ続けている愛歌の手を握り、つぶやく。


「お前が喋らないと静かでつまらん……。早く目覚めろバカ。」


そう言って、愛歌の手を握ってやる真人。

心なしか、愛歌の頬が緩んだ気がした。




愛歌は、真っ暗な闇の中で、走っていた。

この世界のありとあらゆる死を見て、耐えられなくなりそうになりながらも、ずっと耐えていられたのは、彼女の心の強さゆえであろう。

それでも、辛くて苦しくて、いまだにもがき続ける彼女。

ただひたすらに、光を求め続けさまよう少女は、突如として見えた光に向かって、もがき、あえぎ、それでも走り続け……。


そして、目覚める。




愛歌が目を覚ますと、真人が愛歌の手を握りながら眠っていた。

真人の憔悴しきった顔は、何故か泣きつかれた子供のようで、無意識に愛おしく思った愛歌。

握られている手を外し、寝ている真人の頭を撫でる愛歌。

その顔は、疲れきった顔をしているのにも関わらず、とても穏やかで優しい、母親のような顔をしていた。

夜空にはまだ満月とは言い難い少しだけ欠けた月。

窓から入るその優しい光は、愛歌の綺麗な横顔を照らすのであった……。

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