王女との出会い
春輝は、クラスメイト達と分かれた後、第3執務室へと来ていた。
そこで、春輝は思わず目を見開いた。
あまりに部屋全体が綺麗だったからだ。本当に埃一つなく、アニメだとキラキラと光のエフェクトが入るほど綺麗であった。
「ここに始めていらっしゃったお客様は、ほとんどの方がそんな顔をします。」
ジルが微笑みながら喋りかけてくる。
「ここの部屋の掃除は、お嬢様の唯一のメイドであるミーシャがしているのですが、どうにも彼女は重度の綺麗好きなようで、彼女の掃除する部屋はほとんどこうなってしまうのですよ。私としては、もう少し汚れていた方が気兼ねなく使えるのですがね……」
「そうだったんですか……。ん?たった1人?王女様なのに?」
「お嬢様は少し気難しいお方でしてね……。気に入らない方はすぐに解雇されるのですよ。そのせいで、私とミーシャは、いつも新しい従者がいつ解雇されるのか賭けをしたりしています。」
「それって、俺も例外じゃないですよね?」
「えぇ。もちろんですとも。今回の報酬は夕食のプリンです。私はハルキ殿が解雇されない方にかけておりますが、彼女は3日で解雇される方にかけております。」
「聞きたくない話を聞いてしまった……。ちなみに、そのメイドさんは?」
「彼女はお嬢様の朝食の準備をしております。私の役目は、ハルキ殿のお迎えと、お嬢様を起こすことです。」
「ということはいまからお嬢様の部屋に行くってことですか?」
「ええ。さしあたって、少し注意をするべきことがあります。」
「何でしょう?」
「一人称は極力「私」、できるだけ敬語を使った方がよろしいです。そして、これはあまり言いたくはないのですが……
お嬢様は、5歳の頃に森の魔女に呪いをかけられてから、とても醜い顔と言われるようになりました。本人もそれを気にされているので、くれぐれも顔関連の話はされないようにお願いします。」
「……はい。わかりました。」
「では、行きましょうか。」
そう言って、ジルは第3執務室を出た。それに春輝はついていきながら、これから主になるお嬢様のことを考えていた。
第3執務室のすぐ近くに、王女様の部屋があった。
ジルは、ドアをノックすると、
「失礼いたしますお嬢様。」
と言って、返事を待たずにドアを開けた。
そこには、すぅすぅと寝息を立てる、美しい金色の髪の少女の姿があった。
しかし、そこで春輝は首をかしげた。
王女様の顔は、とても美しかったのだ。嫌味などではなく、まるで芸術品のように綺麗な顔であった。
「おはようございます、お嬢様。朝です。起きてください。」
春輝がその顔に見蕩れていると、ジルが王女様に声をかけた。
王女様はその声に反応し、起き上がりながら寝ぼけ眼を擦った後、「んっ……!」と伸びをし、ようやく目が覚めたのか、
「おはよう、爺や。……そいつは?」
と言った。
春輝はハッとして、胸に手を当て頭を下げ、
「おはようございます。そして初めまして、お嬢様。私の名は東雲春輝と言います。本日より、お嬢様の執事見習いをさせていただくことになりました。よろしくお願いします。」
と、挨拶をした。それを聞いた王女は、少し面倒くさそうに頭を掻きながら、
「これはご丁寧にどうも。一応第三王女をやっているリオネス=リーデルだ。せいぜいクビになりたくなければ適当にやってくれ。」
と、少し偉そうに話した。そして少し不思議そうな顔をして、
言葉を続ける。
「それはそうと、先程から私の顔を見つめているが、どうしたのだ?普通は私の顔を見ると皆顔をそらすのだがな。」
「呪い……ですか?」
「あぁ。だから貴様のようにずっと見ているのは珍しい。私の顔は醜悪らしいのでな。」
「冗談は辞めてください。私には、とても美しい顔に見えます。」
「媚をうっているのか?そんなもので私は貴様を評価したりせんぞ。」
「いえ。嘘偽りのない真実です。美しすぎて挨拶をするのも忘れて見蕩れていましたから。」
「……妙なことを言うやつだな。醜悪な方がいいとかそういう趣味か?」
そう言って顔を背けたが、美しい金色の髪にぴょんと立ったアホ毛のような物が嬉しそうに動いていた。
春輝がそれを見て、嬉しいのかな?とおもっていると、ジルが、
「今、お嬢様は大変気分がいいと思われます。」
と、耳打ちをしてきた。そして、ジルは王女に、
「お嬢様、ハルキ殿の言っていることは真実だと思われます。恐らく、彼の持つ看破の魔眼が呪いを打ち破ったのでしょう。」
と、言葉を投げかけた。リオネスは振り向き、春輝をじっと見つめ始めた。
「……あの?どうかされましたか?」
「いや、看破の魔眼と言ったので、今私の考えていることが分かるのかな……と思ってな。」
「ええっと……お腹空いた。ですか?」
そういうと、リオネスはとても可愛い笑顔になって、
「うむ!看破の魔眼というのは凄いのだな!」
と言った。
……とてもじゃないが、朝食を食べてないからとは言えない春輝であった。




