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幽霊の歩く道  作者: sacon
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幽霊の暇つぶしー八

 昔語りねえ、改めて聞かれると、どっから話したものかな。

 ……そうだな、昔から本は好きだった、気に入った作者の本とかは徹底的に集めて、それ以外は散読、見たいな。そのせいで本棚はかなり混沌としてたな。あんまり整理する性質じゃないから、ライトノベルと哲学書が横並びになってたりしてるんだ。これが。

 って、こんなこと話しても仕方ないよな。うん。 

 へ?運動?そこまで苦手じゃなかったよ、何でまた藪から棒に。

 じゃあ、まあ、家族関係の話にしとくか、多分、俺の生前で変わったところがあるとしたらこの辺りだし。と言ってもなんだかはっきりしないんだがな。

 変わってるって言っても、親が資産家だったとか、そういうことじゃない。妹が病気がちで、結構家に居ることが多かったとか、そんなのなんだ。なんていったかな、結構複雑な病名……まあ、いいか。

 とにかく、外に出ることが少なかったんだ。

 でもって、俺の方は、と言うと何か事あるごとに連れ出そうとしてた。まだ小さいころは親に言い含められてたからあんまりあいつも出て行こうとしなかったんだが。小学校に上がるころには結構出かけたりしてた。なんか色んなところ回ったりして、冒険紛いのこと見たいでなんかすげえ楽しかったな。

 帰ってくるたび叱られてたんだけど。

 まあそんなことも長くは続かなくてな、妹の病気のほうが悪化したんだ。

 そっからが長かったなあ。家族全体の雰囲気が重苦しくて、家に居たくは無かった。それで……まあ、どっかしら適当にふらついてたと思う。元々集めてたけど、本とかを異様に集めるのもこのころだったし、何かしら現実逃避したかったのかな、って今は思う。

 それからどうなったのか?何とかな、乗り切ったんだよ。何とか収まりました、見たいな事を医者に言われたのは覚えてて、退院したんだ。

 退院して間もないうちにさ、妹のほうからまた出かけようって言われてさ。年甲斐なく嬉しくなって。

 舞い上がりすぎたんだろうな。

 事故に運悪く巻き込まれて、俺は死んだんだよ。

 ……未練はそれじゃないのかだって?いや、それは無い。だって俺は事故起こしただけだし。その程度で幽霊になるならもっと幽霊とか居るだろ……多分。もし妹のことが俺のせいで死んだとかなまだしも、俺が勝手に死んだだけだからさ。

 もうひとつ質問?いいぞ。

 考え事するとき耳の後ろに手を置く?……言われて見れば、確かに。

 それがどうかしたのか?

 

 さて、それじゃあ、始めましょうか、とりあえず、そうね。昔から病弱ってのは言ったわね。持病みたいもので、そのせいで学校なんかも長く休みがちだったんだけど。

 ここで登場するのが、あたしの兄貴ね、典型的なアウトドア派というか、なんと言うか、さっきの部屋みたいに半の溜まり場を作る人じゃないわね。

 その兄貴が私をしょっちゅう連れ出そうとするもので、悔しいこと連れ出す先は面白くて、一種の冒険だったわ。親も黙認してくれてたし、あの頃は楽しかったなあ。

 とと、まだ終わらないわよ。

 小学校の中ごろ辺りかな?丁度君と同じくらいの年の時ね、病気が急に悪化して、入院させられることになったわ。

 流石の兄貴も、入院中に連れ出すのは無理だったみたい。

 それどころか、見舞いに来るたびにげっそりしていくし、それでいてなんでもないように振舞うから、逆に辛かったわ。

 でもさ、私は運が良かったのかな。時間は掛かったけど、何とか治ったの。丁度中学にあがったばかりの頃だったと思う。

 で、治った私は、また兄貴と散歩に行ったのよ。

 その時だったな、さっきも少し言ったんだけどさ。暴走車に巻き込まれてさ、兄貴が死んじゃったのよ。

 そのことで精神的に参っちゃってね。病気が再発しちゃったさ。

 え?随分あっさりしてるって?

 そりゃ、ここを詳しくしたら飛んでくるのは恨みと無念だけだからね。

 結果、私もそう長くないうちに死んじゃって、こうなった、って訳さ。

 未練はまあ、その時、単純にもう少し生きていたい、って思っちゃったことなんだけどさ。


 ……話を止める。

 本当はもう一つ理由があるのだが、些か情けないのでこちらは胸のうちにしまっておこうと思う。

 まさか死に際に兄貴の声が聞こえた気がして、幽霊になれば再会できるのか、なんて思ったからとはいえないのだ。



 

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