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ヤクザと召喚師  作者: 緑一色
片桐組誕生編
20/38

VSジン~その後~

30分ほど待ったがゼブラスの容体は良くなる気配が無いので狂助達はゼブラスを病院まで背負っていくことにした。


狂助が寝ているゼブラスを背負い直し、聞いた。



「病院ってよ、やっぱナースみたいなのがいるのか?」

「残念でした。回復魔法が使える魔法使いは皆私服ですよ」


「ばっ、別に残念じゃね・・・・・・れ?」



狂助は前のめりに倒れ込んだ。


すぐに前を歩いていたエレナとネイクが駆け寄ってくるが心配など微塵も感じられない。


「大丈夫か?狂助殿」


と、ありきたりな言葉をかける。

しかし、当の狂助は体に違和感を感じていた。

「あえ・・・・・・?何か・・・・・・体が」

狂助は呂律が上手く回らないのか言葉が上手く出ていないようだった。



と、同時に狂助の手足が陸に上がった魚のように痙攣し始めた。


ようやく2人も狂助を心配し始めてきたようだ。

「これ何かの病気なんじゃ・・・・・・」

「は?病気なんて一体どこえ・・・・・・あ」



狂助の脳裏に大量の蝙蝠がフラッシュバックする。


「毒蝙蝠に噛まれた」

「一大事じゃないですか!!」

「しかし、何故こんなに時間が経ってから毒が回り始めたのだ?」

「いや、頭痛とか吐き気とかは我慢ひてたんだよ。40分くらい前から」

「何で我慢した!?」



しかし、エレナはそこで初心に帰って考えてみた。


「でも、完全回復だから死なないんじゃないんですか?」









ネイク、狂助共に言葉を失い、しばしの沈黙が訪れた。



やがてネイクが無言でゼブラスを背負い、歩き出そうとし始めた。


「えっ?ちょぅ、嘘だろ?いや、確かに死なないけどよ。君たちは苦しんえいる大人を放って先を急ぐつもりなのかえ?」



ネイクは鬱陶しそうに狂助を見つめている。


エレナに至ってはもう狂助に視線すら向けていない。


「ちょっと待て!!何、置いてこうといてんだ!!組長命令だぞ!!」



もはや毒の影響なんて無いんじゃないかと思うくらいの大声で狂助は叫ぶも現実は厳しい。


「狂助殿よりゼブラスの方が心配だ」

「大丈夫ですよ、あと300mくらいですから」


「いや、置いてかな・・・・・・オボロロロロ!!」



狂助は何の前触れもなく吐いた。


警戒を解いていたエレナとネイクの服に吐瀉物がかかる。



エレナとネイクの悲鳴が広場中に響き渡る。


しかし狂助の耳には届かない。



それもそのはず、狂助はとっくに白目を剥いて意識を失っているのである。










ちなみに、その後エレナとネイクのお気に入りだったはずの服は二度と着られることはなくなり、少しだけ2人は仲が良くなった。















満月の明かりによってゼブラスは目を覚ました。


視界に写る物は白っぽい天井のみである。



「よう、起きたか」

そう声をかけるのは和服から病院の患者用の服に着替えた狂助だった。


「・・・・・・病院か?」

「大正解だ。ハワイ旅行なんて大層なものは無いがな」



狂助は病院内に響く位の大声で笑った。


ゼブラスはハワイの意味が分からないので頭に疑問符を浮かべたままやり過ごした。


「で、何でバカ大人までそんな恰好でいるんだ?」

「ああ、お前はあの後のこと知らないのか。全く毒蝙蝠には噛まれるわ吐くわ殴られるわで散々だったんだぞ、さっきまで。まあ、毒の方は血清さえ打てば文字通り完全回復したがな」


「待った。毒蝙蝠と吐くは繋がるが殴られるって何だ?」

「大人には色々あるんだよ」



狂助があまりにも悲しそうな顔をしているのでゼブラスは珍しく憐れみを感じてそれ以上追及するのをやめた。


だが、その所為で会話が途切れ気まずい空気が流れてしまった。



そして、ゼブラスがその空気を壊した。



「昔話を思い出しちまった・・・・・・聞いてくれるか?」

「昔話ってお前何歳だよ」

「14だが?」

「・・・・・・まあいい。話してみろ」



ゼブラスは一呼吸置くと話し始めた。


「俺には母がいた。父親は知らない。母は誰にでも分け隔てなく優しくて俺の住んでいた村でもちょっとした有名人だった。このまま俺はこの人に育てられて幸せな人生を歩むんだろうと思っていた。あの時までは・・・・・・」


「・・・・・・続きを頼む」

「ある時、村で猟奇殺人が起きた。犠牲者数は2桁にまで登った。で、その事件の容疑者に何故か母が疑われた。村の方もとっとと事件を終わらしたかったんだろうな。母は死刑を宣告された。

もちろん、俺だって黙って見てたくは無かった。母のことを殺人鬼と疑う人がいるはずがない。そう思って村中の大人に呼び掛けたさ。そしたらそいつら口を揃えてこう言うんだ・・・・・・

人殺しの息子の言う事なんて信じられない。

ってよ。・・・・・・それから2年後に刑は執行され、俺は師匠に拾われた」



ゼブラスはそこまで語り終えると狂助から目を背けた。



何故こんなことを普段からバカ大人と呼ぶような人物に話してしまったのか?


ゼブラスは後悔と恥辱と悲しみから顔を紅潮させて涙を流した。

しかし、そんな姿を見せたくないがため布団をすっぽりと被って目を閉じた。



狂助はいつもとは違った暗い声でゼブラスに声をかけた。




「お前、母さんの気持ちはきちんと伝わったのか?」



狂助の言葉に一瞬戸惑ったが、しっかりとした声でゼブラスは返した。


「幸せに生きて欲しかったんだろうな」


ゼブラスがそう言い終えると狂助のため息が聞こえた。



「お前はお袋さんの気持ちを全く分かってないな」


その言葉によってゼブラスの今まで心の奥底に閉まってあった様々な感情が爆発した。


「お前みたいな・・・・・・大人に何が分かるって言うんだ!!」



もう泣き顔を見られることに抵抗は無かった。


「分かるぜ、大人にだってよ。

多分だが・・・・・・お袋さんは捕まってからお前と会ってないんじゃないか?」

「ああ、そうだ」


「それは何でかって言うとよ、お前に復讐することを覚えさせる為だ」





一瞬、ゼブラスの目の前が真っ白になった。


すぐに視界は回復したものの心に何かが入る余裕などもう無いだろう。



「もし本当にお前に幸せに生きて欲しかったならきっとお前に会いに来てくれただろう。それこそ脱獄してでもよ。それが無かったってことは考えられる可能性は2つ。

その1、本当にお袋さんが犯人で自分の汚い姿を息子に見せたくなかった」


「そんなわけない!!」



「ならその2だ。お袋さんはお前にその手で真犯人を地獄に突き落としてほしいと切に願っていた」

「う・・・・・・嘘だ」


「だが、お前の真犯人への復讐心は揺らいだことが無いんじゃないのか?お前には刑務所に入れられ、人間の欲望丸出しの、死にたくないと切に願っていたりする母の記憶は無く、優しくて人望も厚い都合のいい母の記憶だけが残っている。

それでお前は自分の幸せを奪った真犯人と大人が憎くて憎くて堪らない。

もし刑務所での姿を見たなら多分そこまでの憎しみは沸かないはずだ。軽蔑したかもしれない。

だが、それをお袋さんは意図的に見せなかったとも考えられないか?」



ゼブラスは真っ白に染まった心を必死に立て直そうと必死に足掻いているため狂助の言葉の意味を深く考えている暇などなかった。


茫然としているゼブラスに狂助は静かに言い放つ。

「まあ、どちらを信じるのもお前次第だ。

それこそ今の仮説は大人の穿った考えなのかもしれないし」



隣のベッドへと寝転がった狂助にゼブラスは答えた。



「俺は母の意思を尊重する」


「・・・・・・そうかい。じゃあ、おやすみバカ子供」

「おやすみバカ大人」

と、まあ狂助のダークな部分たっぷりの話となりました。

しかし、彼自身不幸せな人生を送っているのでこういうひねた考えしか出来ないんです。

そして、その2を選んでしまうゼブラスの人生も恐らく充実したものとは言えないのです。


まあ、いずれ狂助の心の闇は明らかにしていきたいと思います。



ああ、それと久しぶりに書きますが

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