婚約者より古文書
帝都オイレンベルクの空は季節の歩みとともに薄青く澄み渡り、初夏の気配が黒曜宮の重厚な石壁を心地よく温めていた。
アウグスタ大水門の復旧、そして神聖誓約碑文の原文復元を経て、帝室古文書顧問としての著書『ガルディニア帝国公用古代語正典・解題』が刊行されてから、しばらくが経過していた。
宮殿の東翼、帝室図書院に隣接する『帝室古文書顧問執務室』の南窓からは、涼やかな風が吹き込み、白麻のカーテンを静かに揺らしている。
天井まで届く頑丈な樫の書架には、数百年前から千年以上前におよぶ羊皮紙の巻物や石板の拓本が秩序正しく収められ、室内には古い紙と植物性インク特有の落ち着いた香りが満ちていた。
部屋の中央に置かれた長大な執務机に向かい、フィリア・ルベルは机上に広げられた資料の束へ熱心に身を乗り出している。
「……ふむ。やはり、この助詞の脱落は単純な筆写の誤りではありませんね。文脈上の主語が意図的に省かれています。この時代の公文書において、統治主体をあえて伏せる構文が存在したのでしょうか」
独り言を呟きながらフィリアは極細の羽ペンを滑らせ、卓上の仔羊皮紙に端正な文字で校訂註釈を書き留めていく。
かつてルベル王宮の旧離宮――「第一資料保管室」という名の暗く冷たい古紙置き場で、着古した麻のワンピースを着て、誰からも顧みられずに文字を拾い集めていた頃の面影は、今の彼女にはない。
肩のあたりで綺麗に梳き揃えられた髪には、控えめながら上質な銀のピンが留められている。
身に纏うのは帝室から支給された顧問の官服。
濃紺のきめ細やかなウール地に、袖口と襟元へ細やかな銀糸のステッチが施されたそれは、彼女の楚々とした立ち居振る舞いによく馴染んでいた。
そして何より左手の薬指には、黒鉄と清冽な白銀を鍛え合わせた細身の印章指輪が静かに輝いている。
数か月前、帝室大図書回廊の星明かりの下で、皇帝レオンハルト自らが彼女の指へ滑り込ませた、誓約の指輪であった。
――『私の妻として、ガルディニア帝国の皇后として、私の隣に立ってほしい』。
あの日交わした求婚の言葉を思い出すたび、フィリアの胸の奥は今でも甘く、熱い疼きを覚える。
自分のような日陰者を拾い上げ、その知性を対等に認め、愛してくれた人。
現在、フィリアはレオンハルトの正式な婚約者として帝国臣民に広く認知され、宮内府や法制局が婚礼に向けた実務的な調整を進めている最中であった。
将来の皇后としての責任や公務について学ぶ講義も増えてはいるが、求婚を受け入れたからといって婚姻が法的に成立したわけではない。
彼女の現在の公的な身分は、あくまで一人の研究職である「帝室古文書顧問」である。
レオンハルト自身が「そなたの研究こそが帝国の礎だ」と公言し、彼女の仕事を何よりも尊重してくれているからこそ、フィリアは今、この上ない幸福と誇りを感じながら日々の研究に打ち込めていた。
「フィリア様、午前中のお茶を淹れ直しました。少し根を詰めすぎではありませんか?」
ワゴンを押しながら穏やかに声をかけてきたのは、青い司書の長衣を纏った青年――助手のベルンハルトであった。
丸眼鏡の奥の理知的な瞳を和ませながら、彼は湯気の立つ白磁のカップを机の端、書類から十分に離れた安全な位置へと置く。
「ありがとうございます、ベルンハルトさん。でも、この『西方属領初期公約集』の写本、どうしても気になる箇所があって。第一王朝末期の定型句と、第二王朝初期の法令用語が同じ条文の中に混在しているのです。まるで、別々の時代の文書を後から無理やり継ぎ接ぎしたような……」
「それは興味深いですね。ですが、まずは一口お飲みください。陛下から『フィリアが時間を忘れて紙を凝視していたら、無理にでも茶を飲ませて息を抜かせろ』と厳命を受けておりますので」
「まあ……レオンハルト様ったら……」
フィリアは苦笑しつつカップを両手で包み込んだ。
柑橘に似た爽やかなハーブの香りが立ち上り、一口含むと、心地よい温もりが身体の強張りを解いていく。
机に向かって文字と向き合う時間は至福そのものだが、こうして気遣ってくれる人々がいることも、かつての孤独を思えば奇跡のように温かい。
その時、廊下の奥から規則正しく、重みのある足音が近づいてきた。
警備兵の慌ただしい靴音ではない。無駄がなく静かで、しかしその場にいる者すべてに自然と背筋を正させる独特の気配。
控えめな二度のノックに続き、重厚な樫の扉が静かに開かれた。
「邪魔をするぞ」
室内に足を踏み入れたのは、ガルディニア帝国現皇帝、レオンハルト・フォン・ガルディニアであった。軍務用の儀礼服ではなく、仕立ての良い濃紺の私服を纏っている。
刈り込まれた灰銀の髪の下、彫刻のように均整の取れた相貌には冷徹な威厳が漂っていたが、その透徹した黄金の瞳がフィリアを捉えた瞬間、氷が解けるような微かな柔らかさが宿った。
「陛下!」
フィリアが立ち上がりスカートの裾を正して会釈しようとすると、レオンハルトは片手を軽く上げてそれを制した。
「礼は不要だ。執務の合間に少し時間が空いたのでな。様子を見に来た」
「皇帝陛下、ご機嫌麗しゅう存じます」
ベルンハルトが深々と一礼し、手際よく机の上の私的な書類を端へ寄せ、会談のための空間を整える。
レオンハルトは長身を屈めるようにして机の脇へ歩み寄ると、フィリアの顔を静かに見下ろした。至近距離で見つめられると、婚約を交わして数か月が経つ今でも、フィリアの心臓はトクンと跳ねてしまう。
「顔が少し白いな。昨夜は何刻まで起きていた」
「あ……その、日付が変わる前には休むつもりだったのですが、第二王朝の徴税記録を照合していたら、数字の辻褄がどうしても合わなくて……気づいたら、少しだけ夜が明けておりました……」
叱られる子供のようにフィリアが視線を伏せると、レオンハルトは短く嘆息した。しかし、その瞳には怒りなど微塵もなく、呆れ混じりの深い慈愛が滲んでいる。
「文字は逃げんと、毎度言っているはずだがな。……まあよい。無茶をして倒れられては困るが、そなたのそのひたむきさを無理に取り上げるつもりもない」
そう言って、レオンハルトは上着の内ポケットから、手のひらに収まるほどの小箱を取り出した。濃紺のビロード張りの小箱である。金色の留め具が上品に光っている。
「そなたに渡そうと思ってな」
「私に……ですか?」
フィリアが目を丸くすると、レオンハルトは箱の蓋を押し開けた。
中に収められていたのは、見事な白銀の細工が施された、手のひらサイズの携帯用ルーペであった。レンズの縁には極小の目盛りが刻まれており、持ち手には握りやすいよう滑り止めの精緻な彫刻が施されている。
過度な宝石の飾り立てはなく、機能美と耐久性を極限まで高めた、極めて実用的な名品であった。
「ルーペの倍率が二段階に変えられるよう、帝室工芸院の技師に研磨させた。縁に刻んであるのは、古代帝国文字の基本尺だ。細かな拓本を読む際、文字の寸法や線の太さを比較するのに役立つだろう」
「……っ!」
フィリアの瞳が一瞬にして歓喜の輝きを帯びる。
「す、素晴らしいです……! このレンズ、周辺部に至るまでほとんど歪みが感じられません! それに枠に古代の標準尺が刻まれているなんて……これなら文字のおおよその寸法や、線幅の比較が、資料を傷つけることなくその場で行えます! 陛下、私のためにこのような特注品を?」
「そなたの手の大きさに合わせて柄の太さも調整させた。気に入ってくれたなら何よりだ」
レオンハルトの口元がわずかに緩んだ。
高価な宝石や豪奢なドレスを贈られるよりも、研究に必要な道具を丹念に整えられることこそが、フィリアにとって最大の喜びであると、彼は正確に理解している。
「ありがとうございます、レオンハルト様! 大切に生涯使わせていただきます!」
嬉しさのあまり両手で小箱を抱きしめ、頬を染めて満面の笑みを向けるフィリア。
その無邪気で眩い笑顔を前にして、レオンハルトの黄金の瞳に、ほんの少しだけ欲の混ざった光が差す。
彼にとってフィリアは守るべき至宝であり、敬愛する研究者であると同時に、心を通わせたい愛しい婚約者でもある。
「……うむ。喜んでもらえてよかった。ところで、フィリア」
「はい?」
「今宵の政務は予定より早く片付きそうだ。宮内府の者たちも、たまには二人でゆっくり食事をとるべきだと勧めてきてな。……東離宮の温室で静かに夕餉を共にしないか。そなたの好きな、南方の柑橘を使った料理を用意させよう」
皇帝からの控えめだが明確な逢瀬の誘い。
彼のような多忙を極める国家元首が、私的な夕餉のために公務の予定を前倒しするなど、並大抵の配慮ではない。
フィリアもまた彼の温かな気遣いに胸を打たれ、こくりと頷こうとした。
「はい、喜んで――」
その言葉が結ばれるより前に。慌ただしいノックの音に続き、息を切らした若い図書院の司書が、バタンと執務室の扉を開け放った。
「失礼いたします! ベルンハルト司書、フィリア顧問官! 帝国北方・黒曜山脈の旧鉱山管理区より、定期移送資料が到着いたしました!」
「北方の定期移送資料……?」
ベルンハルトが怪訝そうに眉をひそめる。
「北方の廃鉱山区から届く書類など、精々が前世紀の採掘台帳か、木材の搬入伝票程度のはずですが。なぜそんなに慌てているのです?」
「そ、それが! 崩落した古い備蓄庫の床下から、二重に封印された鉛の小箱が見つかったそうでして! 中から出てきたのは羊皮紙ではなく……青銅板と粘土板の混ざった、極めて古い文書の断片です! 図書院の受入窓口が確認したところ、通常の王朝史の枠組みに収まらない特徴がありまして……!」
「なんですって!?」
その瞬間、フィリアの身体が弾かれたように動いた。
「青銅板と粘土板の混在!? 北方の古い備蓄庫から!? ベルンハルトさん、受入担当と保存修復担当の方々に、大至急で現状記録と劣化防止の処置をお願いしてください! 状態確認が済み閲覧許可が下り次第、すぐに文字を確認します!」
「は、はい! すぐ手配いたします!」
フィリアは贈られたばかりのルーペを小箱ごと大切に胸に抱え込み、足早に出口へと駆け出しかけた。 その瞳は爛々と輝き、純粋な学究の熱に包まれている。
「あ、あの、フィリア?」
背後から、取り残されたレオンハルトの、戸惑いを含んだ低く掠れた声が響く。
ハッと足を止めたフィリアは、振り返って小箱を両手で抱えたまま頭を下げた。
「申し訳ございません、レオンハルト様! 北方の古い備蓄庫の床下から、青銅板と粘土板が封じられた箱が出土するなんて、極めて珍しい発見です! もしや……第三期の、あの極めて資料の少ない時代の記録かもしれません!」
「第三期……?」
「はい! ガルディニア帝国が建国される遥か以前、高度な石造建築や水路網を残した古代文明の後半期です。古代の第一王朝、第二王朝に続く時代を、史料上は『第三期』と呼んでいます。争乱や都市の放棄が起きたと推測されていますが、その規模や経緯には不明な点が多いのです! まとまった記録が極めて少なく、帝室図書院にも僅かな断片しか残されていないのです!」
早口で一気に捲し立てるフィリア。その熱弁に、レオンハルトは威厳を保ちながらも、わずかに眉根を寄せた。
「あ、ああ……そうか。歴史的に極めて稀少な発見であることは理解した。ところで、今夜の夕餉の話だが――」
「陛下! この機会を逃すわけにはまいりません!」
フィリアは駆け寄り、ルーペの箱を抱えたまま、レオンハルトの空いている手へ縋るように触れる。
「もし第三期に関連する記録であれば、これまで誰も解明できなかった文字の変遷や、歴史の空白を埋める手がかりが見つかるかもしれないのです! 陛下、受入検査室の様子を確認してまいりますね!」
「あ……いや、待て、フィリア――」
「ベルンハルトさん、急ぎましょう!」
「はい、承知いたしました!」
二人は風のように執務室を飛び出していった。
廊下にパタパタと小気味よい足音が遠ざかり、やがて完全な静寂が残される。
がらんとした執務室の中。
レオンハルトは差し出しかけた右手を空中に止めたまま、数秒間、彫像のように硬直していた。
(…………)
窓から差し込む初夏の光が、机の上に残された冷めかけの茶を照らしている。
レオンハルトはゆっくりと自らの右手を見下ろした。
先ほどまで、フィリアの小さく温かい手が触れていた感触だけが、掌に微かに残っている。
(……私は今夜の予定を空けるために、昨夜の閣議を二時間繰り上げ、今朝の軍務報告を歩きながら決裁したのだが……)
皇帝の胸中に言語化しがたい奇妙な空虚感と、かすかな脱力感が広がった。
フィリアが研究を愛していることは痛いほど知っている。
彼女が生き生きと文字に向き合う姿こそが、何よりも美しく、自分が守りたいと願った光そのものであることも。
だが。
(……私は古文書に負けたのか?)
いや、古文書だけではない。
以前も彼女は「第三期の珍しい接尾辞」について語り出すと、三日三晩そのことばかりを考え続け、差し入れの菓子を一口かじっては「この時代の筆記具は尖端が平らだったのでしょうか」と呟いていた。
彼女は自分を嫌っているわけではない。
むしろ求婚を受け入れ、心から慕ってくれている。しかし、珍しい文字が現れた瞬間、彼女の世界から自分という男の存在が一時的に完全に消え去ってしまうのだ。
(……いや、責める筋合いではない。彼女の職務に対する誠実さの表れだ。喜ぶべきことだ……)
レオンハルトは内心で自らに言い聞かせ、小さく首を振る。
しかし理屈では納得できても、喉の奥に引っかかった小さな小骨のような物足りなさは、どうしても消えてくれなかった。
◇
一方、帝室図書院の受入検査室。
厳重に遮光され、適切な湿度と温度が保たれた室内の中央。フェルトを敷いた専用の支持台の上に、問題の資料が安置されていた。
保存修復の専門技師二名が、すでに表面の異物や遊離した土砂の顕微鏡観察を終え、現状記録用の図面を作成したところだった。
「フィリア顧問官、お待ちしておりました」
白衣を着た保存担当の技師が、会釈しながら専用の作業灯を点灯させる。
「鉛の小箱内部は乾燥状態が保たれておりましたので、急速な崩壊の危険はありません。粘土板はひび割れの固定処置中ですが、こちらの青銅板については表面の錆の安定化を確認し、閲覧台越しでの視認検査許可を出しております。直接素手で触れず支持台の上から観察してください」
「ありがとうございます。迅速かつ適切なご処置に感謝いたします」
フィリアは深々と礼を述べると、大切に持参した小箱から、先ほどレオンハルトから贈られた特注ルーペを取り出した。レンズを構えて青銅板の表面へ視線を落とす。
レンズを通すと風化しかけた溝が驚くほど鮮明に拡大され、縁に刻まれた古代帝国文字の標準尺によって、一文字が約四ミリ四方の大きさで整然と並んでいることを確かめられた。
「ベルンハルトさん。このルーペ、本当に素晴らしいです。線の微細な太さの違いまで歪みなく識別できます」
「ええ、陛下のお心尽くしですね。……して、フィリア様。文字の書式はいかがでしょうか」
「はい。これは……既知の『第三期』の断片に見られる書式と、極めて強い共通点があります」
フィリアの声が学術的な興奮から、徐々に引き締まった緊張へと変わっていった。
青銅板の表面に刻まれていたのは儀礼用の神聖文字ではなかった。
無骨で角ばり、急ぎ足で鏨を打ち込んだような、荒々しい行政公用文の特徴を帯びている。
「……年号の表記が通常の王朝暦ではありません。『大動乱第七年』……あるいは『非常事態宣言第七周期』とも読める特異な接頭辞がついています。そして、この文面……暫定的な対訳を試みます」
フィリアは息を整え、手元の控え用紙へ慎重に鉛筆を走らせた。
『……北方第三工廠、ならびに付帯管理区の全記録保管官へ告ぐ。
戦時特例第十二条の発令に基づき、基幹技術台帳、および製造中枢に関わる一切の原典を速やかに供出せよ。各現場における現地保管はこれを禁ず。
すべての原典は指定運送隊の管理下において――』
そこで青銅板の端が激しい熱か物理的な衝撃によって引き千切られ、文章が途絶えていた。
「戦時特例……? 基幹技術台帳の供出……?」
背後で記録を覗き込んでいたベルンハルトが息を呑んだ。
「フィリア様。これは……単なる地方の行政記録ではありませんね。何らかの大規模な戦乱、あるいは戦時統制の布告下で、軍か統治主体によって出された、技術資料の強制的な移送命令と読めます」
「ええ。ただし、誰がこの命令を出したのか、どのような敵と戦っていたのかまでは、この断片だけでは断定できません。命令の発出主体も、争乱の規模も、現段階では仮説の域を出ません」
フィリアは自らを戒めるように冷静に告げ、さらにルーペを千切れた断面の傍らへ向けた。
「そして……最も不可解なのは、その下段に残された小さな走り書きです」
公用の整然とした刻字とは異なり、後から鋭利な器具で乱暴に追記されたような、数行の文字があった。
「ここです。正規の書式を外れ、保管官によるものかもしれない後筆の痕跡があります。……『王命に従い台帳は引き渡された。しかし心臓の記録だけは――』」
「心臓の記録……?」
「直訳すればそうなります。ですが、生体の心臓を指す単語ではありません。古代帝国文字の用法から推測すれば……巨大な構造物や魔導設備の『中枢機構』を指す比喩である可能性があります。あくまで言語上の仮説ですが」
フィリアはルーペを静かに支持台の脇へ引き、冷涼な空気の中で小さく息を吸い込む。
「第三期に争乱が存在したことは、歴史の断片から推測されていました。ですが、その時代に技術資料がどのように扱われ、なぜ現代にまとまった形で伝わっていないのか……その謎を解く、確かな糸口になるかもしれません」
戦時特例に基づく資料の移送命令。そして、何者かが書き残した「心臓の記録」という謎の言葉。
「ベルンハルトさん。この青銅板が出土した北方鉱山区の地誌と、第三期の地名対照表を集めましょう。明日から、研究班で徹底的に検証を進める必要があります」
窓の外では初夏の風が穏やかに木々を揺らしていた。
しかし、フィリアの眼前に置かれた冷たい青銅板は、数百年前に起きた争乱の影と失われた古代の謎を孕み、ただ静かに不穏な光を放っていた。




