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第23話 回収屋は通行税を払わない

北壁仮泊所は、閉鎖された宿舎の顔をしていた。


 板で打ち付けられた窓、崩れた看板、人気のない荷捌き場。だが裏手へ回ると、帳場だけが妙に新しい。


 その帳場に座っていた男は、役人の腕章をつけていた。


「旧搬送路への立ち入りは有料だ」


 差し出された紙には、通行税金貨三枚と書かれている。


「いつからだ」


 俺が訊くと、男は鼻で笑った。


「今だよ、回収屋」


 紙を受け取ってすぐ分かった。印章が浅い。朱肉の質も市庁舎のものと違う。


 ミーナが俺の肩越しに覗き込む。


「綴りもおかしい。『搬送路管理局』なんて部署、去年の統廃合で消えたわ」


 男の目つきが変わった。


「払わないなら帰れ」


「いや、払わない」


 俺は紙を折って返した。


「これは通行税じゃない。口止め料だ」


 椅子が鳴る。男の後ろから、武装した連中が三人出てきた。役人じゃない。雇われの用心棒だ。


 その先頭にいる三十二歳くらいの槍使いを見た瞬間、セリアの肩が固くなった。


「……バルド」


 男が口角を吊り上げる。


「久しぶりだな、セリア。まだ生き延びてたか」


 どうやら旧知らしい。けれど懐かしさはゼロだ。


 俺は半歩前へ出た。


「偽の税で遺品回収を止めてるのは、バレスタ家の差し金か」


 バルドは答えなかった。代わりに槍を軽く回す。


「ここから先は上の方の持ち物だ。底辺の回収屋が踏み込む場所じゃない」


 その瞬間、ダリオが帳場を蹴り飛ばした。


「死んだ人間の荷に上も下もあるか」


 帳簿が宙へ舞い、ミーナがそのうち一冊を素早くさらう。セリアの剣が抜かれるより先に、用心棒たちは後ろへ下がった。


 真正面からやる気はないらしい。


 俺は散った紙を拾い集めた。


 通行税。許可証。押収品一覧。


 名前のない死者たちの荷が、金貨何枚かで値札をつけられている。


 回収屋は通行税なんか払わない。


 払うべきなのは、返すべき相手にちゃんと返す手間の方だ。


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