第13話 盗掘屋たちの夜襲
旧書庫から戻った夜、倉庫裏にいるのは俺たちだけじゃなかった。
最初に気づいたのは索敵だった。
屋根の上に二人。裏路地の角に一人。入口付近に二人。
「起きろ」
俺が小声で言うと、セリアは一瞬で目を開けた。
「何人」
「五」
「銀翼の牙?」
「違う。足が軽い」
盗掘屋だ。
迷宮で遺品や鉱石を横取りして売る連中。腕はまちまちだが、こういう汚れ仕事は得意としている。
「来るわよ」
窓が割れた。
飛び込んできた短剣持ちを、セリアが寝台ごと蹴り飛ばす。俺は横から入った二人目の腕を叩き落とし、喉元へ短剣を当てた。
「誰に頼まれた」
男は舌打ちし、懐から粉袋を投げつけてきた。
視界を潰す目潰しだ。
だが、索敵が生きている。音と気配で位置は読める。
俺は半歩ずらし、足首を払った。男が転ぶ。
外ではミーナの悲鳴がした。
「ミーナ!」
飛び出すと、裏口から逃げようとしていた彼女が、盗掘屋に腕を掴まれていた。
セリアが迷わず間に入る。
剣閃一発で相手の短剣が弾き飛んだ。
残った連中は、それ以上深追いしてこなかった。目的が殺しではなく“回収”だったのだろう。
散らばった荷を確認すると、旧書庫で拾った封書だけが狙われていた。
「やっぱりね」
息を整えながらミーナが言う。
「記録筒だけじゃなくて、英雄関係の文書全部を回収したいのよ」
「誰が」
「銀翼の牙か、その後ろ」
盗掘屋の一人は気絶する直前、こう吐いた。
“上の倉番は、紙一枚で大騒ぎする”
倉番。
ギルド倉庫を管理する上役だ。
つまり銀翼の牙だけじゃない。内部で保管記録を管理する人間まで繋がっている。
セリアが剣を拭きながら言った。
「第五横穴に入る前に、もうひとつだけはっきりしたわね」
「何が」
「私たち、想像よりずっと面倒なものを掘り当ててる」




