決戦前夜…暗夜の航海
波のうねりは穏やかであった。
艦に乗れば、いつもこのうねりが私に生きた心地を感じさせてくれる。
波に揺られて吐き気を催すなど、全くけしからん話だ。
男はそう思いながら艦橋の外の景色を眺めていた。
何が見えるかといえば何も見えない。
真っ暗な空間の上側に、細やかに煌めく幾千の星々があるだけである。
『ニイタカヤマノボレ一ニ〇八』の打電を大本営より受け、艦隊はひたすらアメリカ太平洋艦隊の停泊地、ハワイオアフ島へと向かっている。
「成功すると思うかね?」
男は口を開いた。
誰とは言わなかったが、それに呼応しある士官が答えた。
「成功させねばなりません。我らが日本国の命運がかかっているのですから。恐れながら、南雲提督自らがそのような事を口にしては、兵の士気に影響します。場合によっては…」
「分かっている。そうかっかするな宇垣。お前は頭が固くて困る。」
この艦隊の指揮官である南雲忠一中将は笑いながらこう言った。
指摘をした宇垣纏少将は渋い顔をしている。
序列の厳しい軍隊において、こんな会話など普通は到底出来なかった。
これが成り立つのも南雲の駆逐艦生活が長かったからだろう。
駆逐艦では、士官、兵士問わず、和気あいあいとやっている。
甲板で敬礼をすればそれこそ笑いの的であるのだ。
そのことが彼の価値観に影響を与えている。
一方、ムスッと海図を眺めている参謀長の宇垣は、海軍兵学校を好成績で卒業し、彼の気性も相成って文字通りの理論家であった。
宇垣にしてみれば、南雲の考えが理解出来なかった。
上官とは厳格であり、至高の存在であるという認識があったからである。
しかし、不仲という訳ではなかった。
寧ろ宇垣は南雲を好いていた。
「オアフ島までは?」
南雲が再び口を開いた。
「はっ!現行速度で約5時間後であります。到達時刻はハワイ時間、○七○八!」
決戦の時刻は刻一刻と迫っていた。
はじめまして天照アマテラスと言います。
以後お見知りおきくださいませ。
さて、初投稿の処女作です。
まあ、このあとどうなるのかさっぱりわからないのですが、応援して頂けると嬉しいです。
アドバイスして頂けるともっと嬉しいです。
あらすじでわかってますが、戦艦による奇襲ですね。
詳しい方は不可能であるというかも知れませんが、大丈夫です。
まあ、楽しみにしてください。
※学生なもので、更新の遅延は勘弁ください。