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不確信な確信、海のような睡魔で

日曜日の午後、僕とアイリはアレキという人物が今回の事件に何かしからの関連性があるだろうという仮説までたどり着きいたものの、そこからは何の手がかりも拾うことができなかった。

アイリは尽力を尽くして情報の海で戦ってくれたものの、アレキについての砂粒ほどの情報すら摘まむことができなかった。

アレキという人物は必ず存在している。

だが、その存在の仕方は様々である可能性がある。

もしかすると、ひとりの生身の人間であるかもしれないし、もしかすると、複数の人間が集まってアレキという集団として存在をしているかもしれない。

はたまた、アイリのような人工知能としてネットワーク世界に存在をしており、吉岡家への接触はすべてネットワークを通してのみ行われていたというのも考えられる。

アレキ自身も相当の情報使いであり、いまもこうしてアイリがアレキに接触を試みようとしているのもある意味では危険であるとアレキを調査する前にアイリはぼそりと言った。

もしかしたら、わたし消されちゃうかもね、とまるで人間が舌をぺろっと出してお茶目さを表すかのように言っていたのが、なんだか切なかった。

僕の興味本意でアイリという存在を消滅させてしまうのは、本当に替えがたい。

僕の恣意で誰かが悲しむのはいやだ。

だけれども、気になってしまうのだ。

僕の本能が、この事件の解決を求めている。

人間の三大欲求のひとつに組み込まれたかのように、僕は事件を欲せざるを負えなくなっていた。

気になる。

一般市民の僕がどう足掻いたって事件なんて解決できるはずもないのは初めから分かっている。

だが、止められないのだ。

自分でも不思議でならなかった。

この僕のどこにそんな探求心と貪欲さがあったのだろうか。

ただ、神様がこの事件の真相を突き止めるように僕とアイリを出会わせ、運命のネジを回したような気がする。


夕方になっても特に調査に進展はなかった。

アイリは調査を必死で行っていたのもあって、充電がほとんど底をつきかけていたので、携帯用の充電パックを接続した。


明日は月曜日だ。

きっと有美ちゃんは療養でしばらくは来ないだろう。

アレキの情報を得るのにいちばんの近道は本人に直接聞くことだとはアイリも僕もよく分かってる。

それができるなら、アイリを危険にさらして調査をさせないし、僕も自分の足で情報をかき集める。

それが叶わない今、アイリに頼るしかないのだ。

一瞬、吉岡家を張ってアレキを待ち伏せする案も考えた。

だが、アレキが実態を持たない存在であることも考えられることから、結局無能な僕はどの案が一番いいのか分からないでいた。

アイリは「アレキにケーブルを繋ぐことができたら、わたしが脳の信号を解読して情報を全部取り出すのに」とまた超人的な発言をしていたが、それが可能ならぜひお願いしたい。


僕も慣れない調査で、足りない頭を何時間もフル回転させた続けたので、ほとほと疲れて家帰り、ぐったりとベッドで横になった。


寝る前にふと思い付いた仮説があったのだが、必ず違うと固く信じたいが、吉岡家がクロである説はどうだろうか?

吉岡家が何かしらの事件に関与しており、悪人のサイドであり、アレキはその吉岡家が犯した事件への弁解を求めているというのはどうだろうか?

アレキが何かを知っているのは確かだ。

吉岡家には何があるんだ?

確かに普通の家庭とは少し違う。

母さんが失踪していたり、妹が若い頃になくなっていたりはするが、それはどこの家庭でもありえそうな話ではある。

吉岡家に秘密があるのか?

僕は寝る前に有美ちゃんの写真を人目だけ見てみた。

いつもは自分の画像フォルダから自分の手で画像を見るのだが、今日はなんとなくアイリにお願いをしてみた。

アイリは僕が日々彼女の写真を見ていることに気づいていたので、特に最近だとこのことについてなにも言わなかった。

ただ、僕がアイリにお願いをするとやっぱり少しビックリしたようで、「驚いた。いままで自分で見てたのに、どうしたの?」と言ったがすぐに僕が見ている唯一の彼女の写真を画面に表示してくれた。

ベッドに横になって画面を見つめていた。

画面の中の彼女は、今無事に帰還をした。

タケシが撮った写真。

斜め後ろからの彼女の横顔と肩に豊かに流れる黒い健康的な髪。

黒く深い色の瞳。

僕が恋に落ちた瞳。

整った横顔は、あまりにも整いすぎて、加工写真か創られた人形のようにも思えた。

教室でタケシが撮ったその写真は、窓から入る光が幻想さを増していて、まるで輪郭からぼんやりと優しく光を放っているようだった。

まるで、自分がいままで知っている彼女ではないような気さえした。


早く寝ないと、明日は学校だ。

そう思いながら、僕は睡魔に吸い込まれるように眠りに落ちた。

ぐっすりとした睡眠だった。

まるで底がない海にゆっくりと、ゆっくりと落ちていく、そんな深くて長い睡眠だった。

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