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君をつなぐアンテナ

『有美ちゃんへ

無事に帰られたようでよかったです。

ずっと目を覚まさないんじゃいかって心配してました。

僕のことは大丈夫。こっちでもちゃんとやってます。

こっちというのは、サーバー世界のことです。

有美ちゃんと荒木さんは、実は元の体をサルヴェ・レジーナに奪われてしまって、一時的にサーバー側に魂だけを囚われてしまったんです。

でもそれだと不安定な存在は世界にうまく適合できるか分からないし、第一、二人は現実世界に帰らないといけない。

だから、僕とアイリで二人を元の世界に戻しました。

前の体は残念ながら戻すことができなかったので、アイリが別で用意していた体に魂を入れました。

有美ちゃんは気づいているかもしれないけれど、その体はアイリのものです。

双子の二人なら、適合は問題ないと思います。

可南子と有美ちゃんのお姉さんも無事であることをこちらの世界から確認しました。

こちらの世界はなにかを知ることにおいては、とても便利です。

手を伸ばせば欲しい情報がすぐ脇にある感覚です。

でもそれは諸刃の剣で、誰かがこの情報の世界を征服してしまったら、世界は滅んでしまう。

だから、僕は僕なりにがんばることにしました。

大切なひとの大切なひとを守りたい。

ここなら、僕の夢が初めて叶えられそうな気がします。

僕は有美ちゃんのその強さや気高さや可憐なところを、僕が守れた良いななんて、勝手なことを思っていた時期がありました。

でも、幸いにして一人ではないので、なんとか何百年も続く毎日でもやっていけそうです。

でも、やっぱり有美ちゃんたちには迷惑を掛けたくないので、アイリと決めて、このメッセージを最後に旅に出ようと思っています。

旅って言ってもこのサーバー世界の中なんだけど、もしも僕に力があるなら、神様にもなっていいと思っています。

もしかしたら、世界的なサイバーテロにも勝てるかも、、、勝てたら良いなぁ。

そんな呑気なことも考えてます。

このメッセージを有美ちゃんが読んでいる頃には、僕らは旅をしている頃でしょう。

だから、探さないでください。

有美ちゃんは、有美ちゃんだから。

自分の人生を、生きて欲しい。

幸せになってください。

ありがとう。』


メッセージは、その後に長い改行を残して終わっていた。

ヨージくんの人柄のよさがにじみ出ていると思った。

あなたはそう言うけれど、わたしがそのままその言葉を受け入れると思っているのだろうか。

まさか、と心の中で笑った。

「ヨージくん、待っててね」

わたしは再びメッセージに戻った。

長い、とても長い改行をスクロールした後で、再び文字が浮かび上がる。

「最後に一言だけ言わせてください。

人間だったころの僕は、あなたが好きでした。

それは今もだけど、、、

僕の初めての告白です。

迷惑なのはわかっているけれど、最後に言わせてほしかったです。

ありがとう」

最後にメッセージの“END”が記され、ヨージくんのメールは本当に終わった。

「わたしも、好きだったのにな」

涙が自然と溢れ出す。

熱い涙が後から後から溢れては頬を流れ、そして携帯電話の画面に落ちていく。

でも、いまは泣いている場合じゃない。

荒木さんに連絡しよう。

そして二人を取り戻す方法を探し出すのだ。

必ず、また会う。

告白の返事もしないといけない。

それにアイリに独り占めされるのが何よりもいやだ。

サーバーと携帯電話を繋ぐ電波マークは、良好だった。

あなたをつなぐこのアンテナ。

わたしとあなたをつなぐ。

きっと荒木さんも、アイリを探しだすはずだ。

彼だって、ヨージくんにアイリを奪われたくないだろう。

わたしも旅に出る。

大切なひとの大切なひとをつなぐための。

わたしは荒木さんに電話を掛けるために、再び画面を見つめた。

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