第三章 capter-2 「クイック・ライダー」(3)
「ジェットウインチは射程外、パイルブレイカーも射程外、ドリルビットは速さが足りん……思いもよらぬところで射程の穴が出たか。こんなところで武器召喚の技術を晒す訳にもいかないし、せめてあれが完成していれば……」
上空のアロンソを見据え、順が舌打ちをする。
「おぉ? 遠距離魔法くらい持ってるだろうにどうした? 爆裂光槍あんだろ、あれがよ!」
「……お前相手には弾速が足りない事くらい分かっている、避け方のコツも知っているしな」
遥か下から順が不満げに呻き、それから足に力を入れる。
「その鎧は重そうだからな、流石にこっちまではこれないだろうよ。それに……こっちはこっちで遠距離武器もあるしなぁ! 飛べや斬撃! 《空斬波》ッ!」
アロンソは見栄を切ると、槍を空中で薙いで放射状の魔力の塊を飛ばす。
「フン! そんな物など!」
順はそれを避けるが、避けた地面には大きな斬り跡が残った。
『ソニックブームの一種と断定』
篝火が分析し、瞬時に須賀谷に伝えた。
「……だが、順はどうするつもりなんだ。このままアウトレンジで粘られたらきついぞ?」
須賀谷は順が攻撃を避けたことに安心しつつも、アロンソの技量に唸る。
観戦していてわかる、彼はヒオウに来たら余裕で特進Aの生徒だ。
「彼女も考えていますよ、アウトレンジ対策はね」
篝火が返事をするのとほぼ同時に、順が一目散にアロンソ目掛け地を蹴り飛び上がった。
「装甲強度は問題ない……仕留める……!」
「真正面から突っ込んでくる気かよ! 空中制御も聞かない状態で!」
アロンソは口元に笑みを浮かべ、狙いを定めて斬撃を飛ばす。
その斬撃が今にも順に当たるかといった時、順が不敵に笑った。
「考えなしに私が突っ込むと思うか!? 生憎だが私は、魔法障壁を生成できる。だから……こういった芸当が出来る!」
順はそのまま言い終えると同時に、空中に半透明の壁を生成し瞬時にそれを蹴って跳躍の軌道を変えた。
「三角飛びだと!? そんな非常識な!?」
「違うな、五角飛びだ!」
アロンソが驚くのもつかの間、さらに順はフェイントも含めて多数の壁を身の回りに生成し、それらを踏み台にして接近し右正拳でアロンソを捉える。
「そんな馬鹿な!?」
「落ちろぉッ!」
「ごふっ!? ……おぇっふ! っぐはっ!」
アロンソは避けようとするが、フック気味に入れた一撃が腹に入った。
「っつー……。畜生……やりやがったな……!」
アロンソは慣性で吹っ飛びながらも苦しげな顔をしつつも失速し、フィールドに着地する。
一方の順もズシンと重い足音を立てながら、体制を崩し気味に着地した。
「ぐっ……一瞬呼吸が止まっちまったぜ。咄嗟に防御してなければ墜落するところだった……まぁさか、あんな方法で喰らいついてくるとはな……! 流石……だといっておくぜ」
アロンソは軽く息切れしつつも、肩で呼吸してくる。
その顔には、冷や汗が浮かんでいるのが見え見えだ。
「地に足がついていなかったとはいえあのパンチを受けて立ち直るとは……お前こそ大したタフネスだよ」
一方の順もアーマー展開中に魔法を使ったためか、少し疲労の色が見える。
「しかしあそこまで順、お前がくるとは思ってなかった。制空権を完全にとって安心していたが……そういう訳にはいかんらしい」
言いながらアロンソは、右手を地面に付ける。
「……何をするつもりだ?」
「前の試合を見てりゃ分かるだろ? プライドが邪魔するが、このままじゃ勝てないから俺も使わせて貰うぜ……《ride》!」
アロンソがそう叫ぶと、スコーピオンとはまた別の機械が地面から浮き出てきて、召喚させられた。
オープンタイプの機体であり二脚ではあるがスコーピオンよりはやや細身で、シャープな印象を受ける。
須賀谷の位置から見れば背部には、噴射口のようなものと鳥のような翼が付いていた。
「その体格で空を飛ぶのか!?」
順が予想外のものを見たという様子で驚く。
「ご名答だ! ティソーナ稼働……行くぜ! さらなる速さを見せてやる!」
するとアロンソは至極当然だという顔をして、マシンを浮かせつつ手元のレバーを引いた。
「吹っ飛ばしてやるぜ!《ケライノウィング》!」




