第三章 capter-1 「アメイジング・ライダー」(4)
『さぁ、見事第一戦を制したイフット選手! 次は 先鋒 イフット・イフリータ・イフリート 対 中堅、天月院・トリストリアム朱音のカードとなります!』
会場のアナウンスが流れる。こんな流され方をしたら先鋒の負けたやつも居心地が悪いだろうに。
「士亜に付こうとする悪い虫は……貴女ね?」
イフットが向かってきた女に対し、ぎっと杖を握りながら仁王立ちをする。
「へぇ、士亜って言うの。あの男」
40m程離れた位置から天月院という女は意地の悪そうな顔で返す。
女同士の何だかわからん怒りの激突が、見て取れる。
イフットが負けるとは思えないが……緊張感は、ある。
「掛かってきなさいよ」
天月院が煽る。
「私は大抵の事じゃ怒らないけど……本当の悪気のある悪戯は嫌いなの。特に……泥棒猫とか」
その様子にイフットは神経を強張らせ、杖を握る手にさらに力を入れてみせた。
「へぇ。やってみなさいよ」
「……なら、少し脅かしてあげるわ」
「……まずいな」
その様子を見ていた須賀谷は、危険を感知し呟いた。
「何だ?」
順が尋ねてくる。
「イフットは高等魔法を使うつもりだ……」
それに対してそう、返す。
あの眼は本気でやる時の顔だ。
『本気で行くわよ……ウェーブ……イラプション!』
そしてそういい終わらないうちにイフットは杖を地面に突き立て、大声で詠唱する。
次の瞬間、イフットの目の前で指向性のある大爆発が起きた。
「っ!? 順、篝火! 伏せろ!」
慌てて指輪を取り出して構え、二人の前に躍り出る、が。
「発火感知、退避行動」
『流石に二人は無理だ……こっちのほうがいい、サモンタワーシールド!』
順がこちらの正面に大型盾を召喚し、その陰に身を隠すように防御の姿勢をとった。
須賀谷と篝火は便乗しその裏に隠れる。
「ぐぅぅっ」
熱気がすぐに伝わってくる。こちらが防ぐと信じての大火力魔法だったろうが、いきなりぶっぱはやり過ぎだ。
「なんて魔力だ……この距離じゃこっちも流れ火で火傷を免れんぞっ……こちらが風下だというのに!」
間一髪熱は防ぐが相当な振動を感じる。土くれが跳ねて盾にあたったのだろう。恐る恐る見るとイフットの杖からさらに連続する爆風が出て地面をピラー型に抉り、波状に天月院に迫っていく……。
「全く、無茶苦茶をする。指輪を持っている士亜はともかく私と篝火は普通に火炎を食らうんだぞ」
順が半ばあきれた様子で声を出す。だが、その眼はフィールドに注がれている。
「しかしあの天月院とかいう女……動く気配がないです」
篝火の言うとおり天月院は迫る炎に対し不敵にさえ笑って見せている。
そしてついに炎が襲いかかろうとした刹那、
『ride』(ライド)
そう天月院が口の動きをさせたのが、須賀谷の目に見えた。




