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第二章 capter-3   「血と心」(7)

「ひとまずこのフロアをチェックしたが……怪しいところは無いようだったぞ」

 40分後。階段からあがってきたイフット相手にそう話し掛ける。

 実際問題かなり歩き回ったのだが、子供の声やら妙な匂いなどは全く知覚できなかったのだ。

 魔力の不自然な漏れも感知できず、怪しいところは無いといってさえもいい。

「士亜。こっちも収穫自体は無いかなぁ」

 イフットも残念そうに自分の髪を結びながら成果無しをアピールしてくる。

「……流石にここまで成果無しだと、あの不良が出任せに言ったのではないかとも思えてくるな」

 聊か軽率だと思うが、そうとさえも思えてきた。

「明日の試合が本格的な任務でしょ。今そんなつもりだと困るわよ、緊張感をもっと持ちなって」

「いや、そう言われてもな。もう結構時間も経ってきたし腹も減ったしでさ」

「全く、本当に能天気なんだから。……夜食にでもいく?」

「そうだな。戦闘中に魔力切れになったらとりあえず手当たり次第に飴でもおにぎりでも咀嚼しないと魔法が打てなくなるし。お前もそういうことあるだろ?」

 同意しながらも歩き出し、食堂へ向かう。朝霞にはどんなメニューがあるのか楽しみだ。

「うーん。でも残念だけど私は魔力切れって状況になった事がないのよ」

「……マジか? スタミナが枯渇しねぇのはずるいよなぁ。殆ど魔法が打ち放題ってのはせこい」

「血って奴だから望まなくてもそうなってるものはしょうがないよ、俗に言う先天技能なんだから」

「俺もそういうのを手に入れて生まれたかったよ全く。世の中イージーに思えるしなぁ」

「でもあなた私の血を使って下駄散々履いても、やっと異界の子供に傷を与えた程度じゃない。私だってあの子には勝てないだろうし向こうから見れば所詮どんぐりで似たようなもんでしょ。そう考えたら世の中がイージーなんてとても思えないって」

 言われて少しセンチメンタルな気分になる。

 過去は変えられない。敵に勝てなかったあの結果は……変えられないものだ。

「それは分かってるよ。順で無理なものが俺にできる訳無いしな。……あぁ、さっさと成長したいものだな、お互いによ」

 溜息気味に願望を吐き出すと

「そうだねぇ……私も召還術とかもっと使えるようにならなきゃ駄目だね」

 とイフットも言ってくれる。

「それ以前に俺はお前のレベルにまで追いつきたいよ、最近本当に肩身が狭いから」

「って事は篝火ちゃんになんか言われたの?」

「そういう訳じゃないが……、やっぱり俺は並の人間だから劣等感ってのがあるのさ」

「駄目だよ、そんな事思っちゃ。落ち込むと気力も下がっちゃうよ?」

「……あぁ」

 肩を叩かれて若干気を取り直す。まだ俺は伸びしろが……あるはずだ。

「イジイジしてたら嫌われちまうもんな。……よし、頑張るよ」

「そうそう、その意気!」

 定期的にこうされないと、俺は駄目だな。こうして貰えるのが一番、いい。

 ああ全く、自分でも甘えん坊だと思うよ。

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