171.穏やかな幸せ
色々なことがあって、それでも――私たちは、無事に王都へ帰ってくることができた。
寝支度を整え、明かりを落とした寝室で、レオさんと並んでベッドに入る。
やわらかなシーツの感触と、慣れ親しんだ部屋の空気に、私はようやく肩の力が抜けた。
「……ふぅ」
「お疲れ様、シベルちゃん」
すぐ隣から、低くて優しい声が聞こえる。
「あ……すみません、レオさんもお疲れなのに」
ヴァグナー様の転移魔法のおかげで移動自体は楽だったけれど、雪山の調査に、男爵領での騒動に、気を張ることばかりで――正直、ほんの少し疲れていた。
「いや、シベルちゃんが一番大変だったからね」
「レオさん……」
その言い方があまりにも自然で、胸がじんわりとあたたかくなる。
やっぱり私は、レオさんとこうしてゆっくり過ごす時間が一番好き。
「ずっと慌ただしかったけれど……落ち着いたら、新婚旅行も行こうね」
「はい、ぜひ!」
ぱっと顔を上げると、レオさんが楽しそうに微笑んだ。
「どこか行きたいところはある?」
「そうですね……もう一度、隣国バーハンドに行きたいです。今度はゆっくり」
「それはいいね」
ヴァグナー様にもお礼を言いたいし、できれば魔法について教えていただけたら嬉しい。あと、ぜひまた海にも行きたい……。
「とりあえず今夜は、ゆっくり休もうか」
「は、はい!」
危ないわ。妄想が膨らむところだった。
でも、いつも私の気持ちを一番に考えてくださる……レオさんは本当に優しい方だわ。
「……」
「ん? どうしたの?」
気づけば、私はじっとレオさんを見つめていたらしい。その視線に気づいて、レオさんは少し不思議そうに、それからやわらかく微笑んだ。
「今回も、一緒に来てくださってありがとうございました」
「当然じゃないか」
当たり前のように、迷いなく言ってくれる。でもそれは、決して当たり前なんかじゃない。
レオさんには忙しい王太子としての立場があって、本来なら聖女と護衛だけで済む旅だった。
マルクス様だったらきっと、一緒に来てくれていないだろう。
たぶん、明日からは溜まった書類仕事に追われるんだわ。
そう思うと、胸がきゅっとする。
「……シベルちゃん」
その瞬間、気づいたら私は、自然とレオさんに身体を寄せていた。
たくましい胸に額を預け、そのままぎゅっと抱きつく。
「ありがとうございます。シベルはレオさんがいてくださるおかげで、強くなれます」
「……俺もだよ」
低く囁くような声。
そっと頭を撫でられて顔を上げると、目の前にはレオさんの美しい胸筋。
でも次の瞬間、視界が影になって――レオさんの唇が降りてきた。
「好きだよ、シベルちゃん」
「……私も、大好きです」
これからも、レオさんが一緒にいてくれるなら。
私はきっと、どんなことだって乗り越えられる。
あたたかくて、大きなレオさんに優しく抱きしめられて。
そのたくましい腕の中で一層の幸せを感じながら。
私たちは、夜が明けるまでの永遠を願うように、穏やかな幸せへと落ちていった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!!
ミルコさん編となった第四章は、これにて完結です。
シベルとレオの関係も書きつつ、他キャラのことも掘り下げて書くのは、私自身とても楽しいです(*^^*)
特にミルコさんは、他にもレオとの馴れ初め等、もっと書きたいことがあるので、いつかどこかで書きたいと思っています。
その他にも『騎士好き聖女』ではまだ書きたいことが残っているので(魔王とか)、連載再開した際にはお付き合いいただけると本当に嬉しいです!!
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発売したばかりの文庫小説3巻も、ぜひよろしくお願いいたします\(^o^)/





