↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盲目の勇者  作者: 岡エシ
第4章
52/66

49話 血塗れの聖騎士

 強く、気高く、清廉潔白。

 騎士らしくありなさい。

 敬虔な神の信徒として。

 神に仇なす愚か者に剣を払う。

 それが私の役目だった……はず。

 今の私は何なんだろう。

 魔に堕ちた私は何を信じれば良いのだろう。

 もう分からなくなってしまった。

 何のために剣を払うのか。

 私は何のために……。


〜〜〜〜〜


「ふふふ……あらあら、可愛い子が来たわねぇ。私は七魔将、色欲のランエル。 よろしくね」

「七魔将……そうか、私の意味を見出すに値するか……」


 ミンディはゆっくりと剣を抜く。


「私は聖騎士、ミンディ・レイス。 魔を断つ剣なり」

「魔を断つ? 何を言ってるの、あなた。 あなた半魔でしょう、矛盾してるわよ」

「分かっている。 いや、自分でも分かっていないのかもしれないな。 あぁ……そうだ、私はいつだって中途半端だ」


 苦い笑みを浮かべながら、自嘲を溢すミンディ。


「私は臆病者だから……今まで戦ってきた意味が、誓いが崩れてしまうのが怖くて、怖くて仕方ない。 だから、頼む。 私のために死んでくれ」

「ふ……ふふふ、あははははは!! 何それ、随分と歪んでるわね。 本当に傲慢な……っ! あなた、まさか」


 何か可能性に思い至ったランエルに急迫したミンディの剣が横薙ぎに払われる。仰反ることで回避し、飛び退く。


「ーーー血染刻印(ブラッドカース)」


 ミンディの右眼が赤く染まり、自ら左手の爪で右手首を裂く。滴る血が剣の刀身を濡らす。


「血……? 初めて見る魔法ね。 ーーー大罪弓(アスモデウス)」


 空間がひび割れ、禍々しい弓が出現したと同時に降り注ぐ威圧感。

 霞むような速度で放たれた矢を刀身で受け流す。

 続け様に上空へと放たれた矢が破裂し、無数の雨となり降り注ぐ。


「ーーー血染方陣(ブラッドワークス)」


 その場で剣を払い、撒き散らされた血が魔法陣を描く。

 紅く輝き、血の剣や槍が顕現する。

 ミンディが手を振り下ろすと同時に無数の武器が射出され、矢を穿つ。


「無茶苦茶な……」


 先程までの無色の矢とは違い、赤い矢が放たれる。

 再度、受け流そうと剣が触れた瞬間、爆発した。


「ぐ……」


 追い討ちの矢が降り注ぐが、傷だらけになりがらも回避しつづけるミンディ。

 そこへ今までで最も速い矢が迫る。


「この程度で……!」


 紙一重で回避したが、軌道を変えて追ってくる。

 ミンディは驚きながらも迎撃を試みた剣ごと、撃ち抜かれた。


「ぐっ……」

「もう終わりね、その傷じゃ、ろくに動けないでしょう。 とどめを刺してあげる」

「死んでしまったら、答えが得られないだろう。 私は死ぬわけにはいかないんだ。 ーーー血染治癒(ブラッドヒール)」


 撒き散らされている血が蒸発し、霧が発生する。

 血の霧がミンディに収束していく。


「なっ、傷が……」


 霧が晴れると無傷のミンディが立っていた。


「私を殺したいなら、一撃で殺してみせろ」

「厄介……だけど、魔力がいつまで保つかしら。 あなたは私に傷を負わせることすら出来ていないわ。 時間の問題じゃない?」

「そうだな、あぁ、その通りだ。 しかし、都合の良い結果を引き寄せるのが、傲慢なやり方というものだろう? ーーー大罪斧(ルシフェル)」

「……っ!」


 空間がひび割れ、禍々しい戦斧が出現する。

 折れた騎士剣を投げ捨て、戦斧を手にして滑り込むように間合いをゼロにする。

 

「ぐぁ……!!」


 ランエルの左腕が宙を舞う。

 真っ二つにしようと振り下ろされる戦斧を紙一重で避け、ミンディの腹を蹴り抜き距離を取る。


「片腕では矢は引けぬだろう。 諦めて首を差し出せ、楽にさせてやろう」

「はぁ……はぁ……ふふふ、舐めないで、私はまだ戦える!!」


 弓が禍々しい闇に包まれる。


「それは……」


 ランエルの右手に装着された小型のクロスボウが現れる。

 ズドドドドトドドッッと先程とは比較にならない速度で放たれる連射。

 最小限の足運びで避け続けるが、全てを避けきることは出来ず、生傷が増えていく。


「ーーー血染壁(ブラッドウォール)!」


 血染治癒(ブラッドヒール)で血が蒸発してしまったため、飛び散っている血が少ない。生成した血の壁は薄く脆い、拮抗は刹那。

 稼いだ瞬きの如く一瞬で、戦斧に魔力を収束させる。


「はぁぁぁあ! ーーー血染月穿(ブラッドルーン)!!」


 真紅の斬撃が無数の矢を呑み込み、ランエルに迫る。


「いやぁぁぁぁあ……ぁぁ……!!」


 逃れられぬ死の気配。ランエルは己が発した絶叫と共に、傲慢な真紅の輝きを前に、なす術もなく呑み込まれていった。


 血塗れの背信者、ミンディ・レイス。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。