42話 錬金術
「はぁ……はぁ……!」
森の中を駆け抜けていく。
途中、ゴブリンやコボルトといった下級魔物達が現れるが居合で斬り捨てるか、避けて行く。
ーーーギャアッギャア!
ワイバーンの群れが現れた時は逃げられないため戦闘となった。隠形全開で一太刀で斬り伏せていく。
流石に、夜間強行突破は危険だと判断して野営。
出発して2日後には最奥へと到着した。
「おかしい……あの医者が言うには、Sランクですら大変だと聞いていたんだが、そんな強敵はいなかった。 偶然か?」
「おや? これはこれは……こんな所に人が来るとは」
「……! 誰だ」
「それはこっちのセリフだよ、それに人に名を聞くなら自分から名乗るのが筋じゃないのかい?」
「……Aランク冒険者のナツキだ」
「Aランク! 素晴らしい! 僕の名前はルドリエ・パピルス。 一応、Sランク冒険者をやっているよ。 それで君は何しにここへ?」
Sランク!?なぜ、そんな存在がここに……。
「……俺は解毒茸を採取に来たんだ」
「ほう……解毒茸? 毒に侵されているのか?」
「スピューとかいう魔物の毒に侵されたやつを助けるためにだ、てか、なんでお前にそんなこと言わなきゃいけないんだよ、俺は急いでるんだ」
「スピューか、なるほど、確かに最上級でなければ効果がない。 それにしても、助けるためにね……。 なぜ言わなきゃいけないかって? 国の命令で僕はここを管轄している。 最上級の解毒茸は調合次第で劇薬に変わる危険な物だ、悪しき者に渡すわけにはいかないんだよ。 だから、君には渡せない」
「は? なんでだよ! 急いでるって言ったろ!?」
「助けを待つ者がいる……上等な理由だけど、証拠が無い。 君に渡すことで多くの人が死ぬかもしれない。 それを見過ごすわけにはいかない」
「……訳の分かんねぇこと言ってんじゃねぇよ! そんなに心配なら付いて来りゃいいだろ!?」
「僕が離れている間に悪しき者が来たらどうする?」
「くそ……融通が効かねぇなぁ!」
「おやおや、言う事聞かなければ暴力に訴えるのかい? そうか……それなら僕も精一杯抵抗しなきゃいけないね」
「ぐ、いや、そういうつもりじゃ……っ!!」
ルドリエの前に魔力の塊がせり出る。
この形状は……人?いや、違う。
「ゴーレムを見るのは初めてかい? 僕の錬金術で生み出した存在だ。 なかなか強力なものだ、ぜひ楽しんでくれ」
ズドンッと振り下ろされた一撃が地面を砕く。
繰り返される殴打を的確に避けていく夏樹。
スッと気配の消えた夏樹が背後からルドリエに斬りかかる。
「おっと、危ないね。 君は随分とあべこべな存在だ。 ステータスが低いにも関わらず、技量は超一流……師は誰だい?」
この質問、グリードと同じだな。
「フェイ・クルースだ」
「ほう! あの剣聖フェイ・クルースか! なるほど、技量の高さに得心がいく」
「剣聖?」
「なんだ、知らないのかい? フェイ・クルースは一般兵にすら劣るほどのステータスでありながら、Sランク冒険者すら一刀に斬り伏せるような正真正銘の化物だよ。 彼女は世界最高の剣士と称され、剣聖の称号が与えられている」
「だから、グリードが反応したのか」
「グリード? あぁ、なるほど、君が……。 僕も少し本気で行こう」
ルドリエがゴクッと何かを飲み干した直後、夏樹は殴り飛ばされていた。
「ぐはっ!! なにが起きた……」
「ははははっ、錬金術師に接近戦は出来ないと思っていたかい? その通りさ、でもね、接近戦が出来る体に造り変えればいいだけなんだよ」
凄まじい速度でルドリエの攻撃が繰り出される。避けた瞬間の隙に、ゴーレムが躍り出てくる。息を吐く暇すら与えず、1人と1体による連携は夏樹を蝕む。
「はぁ……はぁ……やるしかない。 三の太刀・蒼穹」
開眼した直後、神速の突きがルドリエの腹を穿つ。
「ぐぅ……! なんだ、それは……面白い、君がその気なら乗ってあげないとね」
ルドリエの周囲に複数のゴーレムがせり出る。
さらに、小さな赤いゴーレムが出現し、一瞬で肥大する。
「なっ……!」
爆発し、赤い煙に飲み込まれる。咄嗟に口元を抑える。
ゴーレムの目が赤く輝き揺らめく。
先程とは比べものにならないスピードでゴーレムが襲い掛かる。
「ちっ、無茶苦茶だ……」
悪態を吐きながら、夏樹は剣を納めて大きく跳躍。
「ーーー氷冠」
ピキピキッと冷気が手元に収束し氷の槍を形成する。
「ーーー大氾濫 ーーー氷風」
叩きつけられた大水にゴーレム達が飲まれる。
後を追う様に吹いた冷たい風に凍りつく。
「後はお前だけだ。 一の太刀・静山」
冷気に当てられ、動きの鈍ったルドリエの首を跳ねる。
「ふぅ……終わった。 くそ、無駄な時間使った……急がねぇと!」
パチパチと拍手が聞こえる。倒れたルドリエと反対の方向から。
「素晴らしい、合格だよ。 まさかアレン・リードの剣術にギルバード・イルシールの魔法を真似ることが出来るとは、驚かされたよ」
「なんで……そこに死体があるだろ!? なんで生きてんだよ!」
「君が強いのは認めよう。 だがね、Sランク冒険者たる僕が、そんな容易く殺されるわけないだろう。 君が殺したそれは、僕の体から造ったホムンクルス。 言わば僕の劣化版だ」
「劣化版だと……くそっ!」
「おいおい、そんな殺気立たないでくれ、殺したくなる。 それにさっき、合格だと言ったろう? もう君と戦う気はない。 これは君への詫びだ、受け取れ」
ルドリエの投げた小瓶を受け取る。
「それは解毒剤だ」
「解毒剤!? なんでそれを」
「目の見えない君が、今から解毒茸を探して町に持ち帰り、調合する……そんな時間があるのかい?」
「誰のせいで……! いや、今はいい。 いつか必ずぶん殴ってやるからな!」
小瓶を握り締め、夏樹は帰路を駆ける。




