5話 海だ!魔王だ!!何も無いよな・・・?
・・・始まりはいつだっただろうか
彼の中に、ヘルという存在が生まれた理由。
誰も知らない。彼も、ヘルも。
でも、間違いなく。
俺の人生は、その瞬間にねじ曲がってしまったのだろう。
とある少年の手記より抜粋
「これより、会議を始める」
誰もいない空間、そこに荘厳な声が響く。ここは天界。ミアの故郷でもある、天上の世界
「今回の議題として、魔界との平和協定について、クロノ・ロックスより意見を聞くということが一つ。そして、『魔王』の捜索の進展についてが一つ。計二つの事案がある。では、クロノ・ロックス、入るが良い」
「はい」
荘厳な声に名前を呼ばれ、私はその空間に足を踏み入れる
(相変わらず・・・そこにいないのにすごい重圧だな・・・)
「天界守護部隊、上聖勇者、クロノ・ロックス。僭越ながら意見を述べさせていただきます」
そう前置きしてから、今回の議題を述べる。
「いま、魔界と天界は硬直状態にあります。そこで、これを機に魔界と停戦協定を結んではどうかと、私は提案いたします。」
「ふむ、それに至った理由を、説明してもらおうか」
「はい、理由は二つ。一つ目は、双方に利益がないこと。二つ目は、間にある『人間界』の存在です」
「利益が無いとは??」
「はい、どちらの世界の空気も、お互いにとっては猛毒とも言えるべきものです。ということは、たとえ魔界を手に入れたとしても、利益となるものは何一つありません。あるのは大きな犠牲だけ・・・。ならばいっそ」
~口を慎め、勇者よ~
ふと、今までの重圧が嘘のように、さらに巨大で圧倒的な気配が辺りを包む。自然に背筋が伸び、金縛りにあったかのように動けない
(でたな・・・神!!)
そう。この世界の王である神。あらゆる生物の頂点に立ち、絶対的な力の持ち主
~この私がおるのだ、犠牲など出るはずがなかろう~
「ですが我が主よ、現に我が軍も半数になっています。犠牲が出ているのは・・・」
~黙れ勇者。天使などまた作ればよかろう、その程度のこと、この我にできんはずがなかろう~
私は、思わず絶句してしまう。前から思ってはいたがこの神とやら、私たちを道具くらいにしか思っていない。
「下がれ、クロノ。」
いつの間にか後ろにいた上司、アクル・アチナが私を下がらせる。彼女も私と同じく、停戦に肯定的な天使であり、今回の会議に議題を提出したのも彼女だ。
「ではもう一つの議案。『魔王』の捜索状況について。アルル・・・」
私は会議場を後にする。神への怒りもそうだが、自分の無力さの方が大きかった
「すまない、流君・・・」
人間界で出会った、不思議な少年を思い出す。彼は人でありながら、その体に魔王を宿し、しかもその魔王と共存している。それだけじゃない、彼は、どこか人ではない雰囲気も持ち合わせている。
そう、まるで・・・私たちと同じ、いや、それ以上の存在と同じような。
「クロノ、戻ろう。神は私たちのことなど気にも留めていない。私たちだけで進めるんだ」
「はい。アクルさん」
とりあえず、こちらはこちらで、出来ることをしよう。
「と、言う訳で、海にやってきました」
「何が「と、言う訳」なのよ。いきなり海だなんて」
太陽降り注ぐ灼熱の砂浜、そこに、俺達は立っていた。というのも
ヘル「流!!海ってなんじゃ???」
流「海ってのはでっかいプールみたいなもんだ。」
ミア「行ってみたい!!」
流「バカ、いきなり行けるわけないだろ」
へ・ミ「えー・・・」
流「ほれ、エアコンつけてれば涼しいだろ。」
ヘル「ふんっ」バキィッ!!
流「うおおおぉい!!!何エアコン壊してんの!?」
ヘル「これでは熱くて大変じゃな、よし、海へ行こう」
流「・・・仕方ない・・・」
なんてやり取りがあったのだ。勿論ヘルには優先生のありがたーいお説教があったわけだが
「広いぞ!!」
「そりゃな。なんたって地球の七割が海だから」
「なんかいる!!」
「ナマコだな。ってキモっ!!」
・・・お説教の効果はあまりなかったようで、水着(こうなることを見越してたらしい)を着て大はしゃぎ。おそらく三日は寝ないとダメだな
「・・・流。こんなに肌を露出しなきゃいけないの??」
俺の後ろでは、同じく海初体験のミアが俺のパーカーを着て唖然としていた。
「・・・無理は、しなくていいんだぞ??」
身長差のせいか、腿辺りまで隠れているミア。それもそれで可愛いのだが。
「・・・ううん、頑張る!!」
よし。と小さな声で気合いを入れて・・・
「えいっ!!」
俺のパーカーを脱ぎ捨てたミアは・・・
「ミア、それはアウト」
「えぇ!?グレアに選んでもらったのに・・・」
・・・グレアめ、後でゆっくり話さないといけないようだな。なんだよ紐ビキニって。ミアじゃ引っかかるところがないから・・・「流??なんか失礼なこと考えてる??」・・・とりあえず、ヘルのもう一つの水着を着せるか。
「ミア、こっちに着替えて来い」
「・・・はーい」
水着の入った袋を抱えてとてとて走っていく。
「おや流。お気に召しませんでしたか??」
そして、いつの間にか後ろにいるグレア。
「お気に召すとか以前の問題だ。ずれたらどうする」
「・・・まぁ、引っかかるところがありませんものね」
「・・・これからに期待だな」
夜中にひっそりバストアップ体操をやっていることを、俺達は知っているのだ。がんばれ、ミア
「それで、引っかかる所のある私はこんな水着を選んでみました」
そう言って俺の前に来る。うわ、すげぇ
「・・・めちゃくちゃ似合ってんじゃねぇか。」
思わず素でほめてしまった。水着自体はシンプルな黒ビキニなのだが、スタイルの良いグレアはそれをしっかり着こなしている。
「・・・まじまじ見ないでください、不愉快です」
「じゃあ目の前に立つなよ・・・」
じっと見つめすぎたせいか、グレアは居心地が悪そうに手で体を隠そうとする。
「流ー!!わたしをわすれるなー!!」
そんな叫びとともにはしってきたのは、優先生こと優だった。
「おお優、・・・」
「何よ??」
「お前、それは・・・」
なぜかスクール水着。しかも「かみやゆう」ってひらがなで書いてある
「スキでしょ??こういうの」
「・・・いや、別に」
小学生にしか見えない。犯罪性が増したぞ
「ちぇー。流の好みに合わせてきたのにー」
「おい、それはどこ情報だよ」
「流のベッドの下」
「そこにゃ何もねぇよ。」
うん、ないよ?嘘じゃないよ?
「まぁいいか、冗談だし」
冗談かよ・・・
「なに?残念そうな顔ね」
「んな顔してねぇよ」
「そう、まぁいいわ、こらヘル!ミアの水着を引っ張らないの!!」
・・・お母さんも大変だなぁ・・・
「ちょっとそこの君、良いかな?」
・・・俺の方も、ちょっと大変なことになりそうだ




