婿入り
王様は姫に最強の婿をとらせたいと考える。
緊急会議が招集されて、大臣たちが議論を始めた。
「なんと言っても太陽だろう」
屈強な戦士上がりの将軍は炎属性。
姫と息子を結婚させて政治に介入する魂胆。
自分が姫と結婚する可能性もワンチャン捨ててない。
「太陽がなければ我々は生きていけない」
「太陽とどうやって結婚するというのかね」
反論するのは北方魔法部隊の長官。
「雲は太陽を覆う。雲は水滴なのだから、水魔法使いが最強であろう」
彼は呪文を唱え、将軍の頭の上に雲を作り、雨を降らせる。
頭を冷やせといわんばかりに。
「いや、雲は風で吹き飛ばされる」
東方魔法師団長が、その雲を激しい風で吹き飛ばす。
机の上の書類が激しく舞い上がる。
「なにを言うか。風は土手で遮られるので、土魔法使いこそが最強である」
いつもは地味な後方支援部隊長が土塁を出現させた。
「土手はネズミに穴を開けられる。よって蟲使いがもっとも優秀である」
今度は異端の蟲使いが、大量のネズミを呼び出して、その土手に穴を開けた。
暴れまわるネズミに部屋中で悲鳴が上がる。
炎に水に風が入り乱れ、さながら暴風雨のよう。
「蟲は殺鼠剤で殺されるのだから、錬金術師が最強だろう」
ガスマスクをつけた錬金術師がボンベのコックを捻ると、緑色のガスが吹き出した。
ネズミはおろか、将軍や大臣たちが目から耳から鼻から血を吹き出して昏倒する。
「いい加減にせんか」
錬金術師は王様には逆らえず、衛兵に斬首された。
「お前たちに野心があるのがよく分かったわ」
王様が頭を抱えて、バルコニーに出ると、突然、巨大な龍が飛来した。
大きな口を開けて、その口から、灼熱のブレスが放たれんとする。
その刹那、異世界から出現した勇者が龍の逆鱗を打ちぬいて、見事これを退治した。
「うむ、やはり、定番がよいな」
ということで王様は、姫を勇者に嫁がせることにした。
勇者を従えて、姫の部屋を訪れる。
しかし、部屋はもぬけの殻。
どこを探しても姫がいない。
心配した王様が、お妃様に相談する。
「姫は村人Aと駆け落ちしましたよ」
お妃様には逆らえない王様は、ああ、この世で一番強いのは愛なのだなと、しみじみ思うのでした。
その後、粛清された大臣の子孫たちがクーデターを起こすわ、勇者が魔王と結託して世界を壊滅寸前に追い込むわ、無茶苦茶になるけれど、お姫様は一男一女をもうけて幸せに暮らしました。
めでたしでたし。




