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将棋用語の使い納め

 将棋用語の使い納め


「魔王は王だから、玉だろう」


 盤面の向こうで魔王が飛車先の歩を突いた。

 俺は角道を開ける。


「何が言いたい」

「俺が駒なら、なんなんだろうなと思って」

「少なくとも角ではないな」


 戦型は角換わりの出だし。


「角はもともと偉い僧侶だ。お前と真逆の人間だ」

「成れば馬だしな」

「それも竜馬だ。お前はそんな器ではない」


 駒組みがノータイムで進んでいく。

 お互い飛車が最下段に引かれた。


「それなら飛車かな?」


 魔王は呆れた顔をした。


「どっちかといえば香車ではないか」


 端の歩を突いた魔王に、俺も応じて端を突く。


「前に進むことしかできない向こうみず。実にお前らしいではないか」


 魔王が香車を裏返した。


「ほれ、金に『成ろう』系」


 穴熊の中に引きこもった俺の王が魔王の攻撃に丸裸にされていく。


「なんだ、なんだ今日は作戦負けか?」

「王を守るというのが気に入らないんだ。勇者が救うのは金髪の王女様だろう」


 手をこまねいているわけにはいかない。

 そろそろ反撃の時間だ。


 俺は右手で桂馬を魔王の歩頭に打ち付けた。

 同時に、左手で自分の歩を進めて『と金』を作る。


 魔王の指の動きが止まった。


「なんだそれは……」

「二回攻撃だ」

「チートではないか」

「成ろう系勇者がチーターなのは常識だろう」

「卑怯だぞ勇者」

「だがリーチだ、魔王!」

「お前がその気なら」


 魔王は手駒の飛車を裏返した。

 龍王が俺の陣地に打ち込まれる。


「ドラゴンブレス」


 言うや、龍の周り駒を全部回収してしまった。

 敵、味方の区別など関係なしだ。


「はあ、ずるだろ」

「何をいうか。お前が始めた物語だろう」


 その後はもうめちゃくちゃ。


 桂馬は戦場を縦横無尽に駆け回る。

 香車からはレーザービームが発射されて前方の駒を薙ぎ払った。

 銀将が課金で強化されてSSRなパラジウム将に昇進する頃には収集がつかなくなってきた。


「いい加減にしろ!」


 魔王が天王山(盤の中央)に『角』爆弾を打ち込んだ。


 激しい閃光が迸る。

 それが収まると、盤面の駒は全て消し飛び、後には裏返って動けなくなった魔王の玉が残された。


「儂の勝ちじゃな」


 もう何も手が無い。

 攻防共に見込みなく、投了は止む無しか。

 うなだれる俺は、駒台の下に最後の希望を見つけた。


 それを取り上げて強く握りしめる。


「それはどうかな、魔王!」


 俺は玉頭に歩を全力で打ち付けた。


「チェックメイトだ!」


 魔王の玉はもはや動けない。

 詰みだ。

 おれは勝ちを確信した。


 魔王が顔を上げる。


「打ち歩詰めは反則負けだ」 

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