第1話 渡り姫
もう何も信じられない。
大好きな彼が今回は特別だよって言って誘ってくれて。
夜の秘密のお店って言うから、
ちょっとわくわく期待して行ったら変なクラブ。
結局、身体だけが目的じゃない。
頭に来て絶交して別れて夜の街を猛ダッシュ。
頭きたし訳わかんないし泣きながらダッシュして走ったら、
全然知らないところに来ちゃった。
人っこ一人いない。誰もいない。いやだな。迷子なっちゃったかな。
ふと思い出す。
そういや私、よく子供の頃全然知らない場所に行ってなかった?
変な人?たちに出会ったことがある。
変な人たちがいっぱいいる変な場所な感じだった。
でもそこで自分の身体をイタズラされたとかはなかった。
変な人たちが私に触ろうとしても、自分が声を上げればみんな消えていった。
てか何それ? ちょっとそれ、どう言うこと?
あれ? ちょっと待って。
今のここ、そんな感じ。
今の場所、そこと同じ。
やだな、駅はどこかな? コンビニはどこ?
スマホ見てもなぜか圏外。
やだやだやだ。
なんかそれはとってもやな感じ。
って思ってたら、出たの。
子供の頃、何度か見た光景。
でもそれは子供の頃だからわからなかったけど、これってあれ。
今ならわかる、それなんなのか。
たぶんこれ、真夜中に行われる『百鬼夜行』。間違いないわ。
* * * * * * * *
まいった。
まいったな。
新月の夜。
とっても晴れた快晴の新月の夜。
それはもちろん丑三つ時。
開くんだ、邪悪なゲートが。
ゲートはもちろん、あの世とつながる秘密のゲート。
でもそれはいつも同じ場所じゃない。
日によって、時期によって、あっちこっち。
大きさも不定形で、あっちこっちフラフラと。
でも出るんだ、丑三つ時に。
彼岸世界とつながったゲートから、魑魅魍魎の百鬼夜行がゾロゾロと。
でも大丈夫。結界エリア封印と言う方法がある。
ゲートが開きそうなエリアを予測し、事前にあっちこっちにお札を貼っておく。
そうすれば中間ゾーンが形成できて、魑魅魍魎の百鬼夜行は
俺たちの世界へと渡ることはできない。
だが今日はちょっとまずい。なぜいるんだ一般人が。
なぜか俺の目の前に普通の女の子。
だがしかし、ここは結界の中間ゾーン。
なんで迷子の一般人の女の子がいるんだよ。




